はぁ...母さん?
サニス達とのゴブリン狩りのクエストを終えたその晩、俺は昨日と比べれば天と地程の差があるまともな宿屋の一室で横になって天井を眺めていた。
(うん―――俺弱くないな。いや、なんなら強いまである)
やはりあの猪型の化け物はイレギュラーな存在だったとみて間違いないだろう。
例えば今日ゴブリンの巣穴に行く道中に、俺を含まないあの3人があの化け物と遭遇したとしよう。そうしたならその結果は十中八九全滅。
だとしたらあいつは一体なんだったんだ?仲間を連れていた様子も無かったし本当にあそこに突然生まれ落ちたかの様だった。
(んー…まぁ考えても無駄か)
まだこの世界に来たばかりの俺にはわからない事だらけなのが当たり前。過ぎた事は一旦置いといてこれからの事を考える事にした。
とりあえず自分が程々に強い事がわかった以上、これ以上薬草採取やゴブリン狩りなんてしているのは正直時間の無駄以外の何物でもない。
だがギルドの決まりでは最高でも自分の1つ上のランクまでのクエストしか受けることが出来ない。Gランクの俺の場合1個上なんて言っても所詮はFランク。
となると
「ちょっと放浪でもしてみるか」
問題はどこに行くかだ。そこで俺は道中の会話を思い出していた。
サニスの口ぶりでは帝国の方に強い奴が多そうな感じがした。アスロやリーナの反応からクレナディア帝国という場所は色々と事情がありそうではあったが、この際背に腹は代えられない。
「とりあえず帝国の方に向かって進んでみるか。となると…近いうちに食料の買い溜めでもしに行かなきゃな」
さすがに死因が餓死なんてダサすぎるしな
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翌々日――とりあえず大きめのカバンを買った俺は、城を出た初日にギルドの場所を教えてくれた気のいいおばちゃんの所へ来ていた。
「こんにちはー。これからちょっと軽く旅に出ようと思ってるんだけどさ、なんか保存がきいて安い食料とか置いて無いかな」
「旅かい? やる事だけは一端の冒険者って感じだね。だったらこのワイルドウルフの干し肉なんかいいんじゃないかい?安いし一月ぐらいはもつはずだよ!
まぁその代わり味はそこまで美味しくはないけどね」
どうやらこのおばちゃんはまだ俺の事を舐めているらしい。
まぁ実際にランクは未だGのままだし変わった事なんて何も無いのだから当然と言えば当然なのだが。
「じゃあそれください。とりあえずこれで買えるだけ」
そういって銀貨2枚を渡す。何故俺がこんなにお金を持っているのかと言うと、実は今日の為に昨日1日中1人で狩りをしていたのだ。
「おーっ!なんだい本当にちゃんと冒険者やってるみたいだね。なんだか私も嬉しいよ!最初にギルドの場所を訪ねてきた時はあんたが死んじゃわないか心配してたんだよ?……じゃあちょっとだけサービスしといてやるから頑張って来な!
でも調子に乗って無理なんかするんじゃないよ?」
「わかってるよ。ありがとう」
やはりこの人は面倒見のいい優しい人みたいだ。だからと言って当然恋愛対象として見れる様な歳では無いので、第二の母の様な感じに勝手に思っている。
第二の母との会話も程々に、その後は改めて街の風景を眺めながらのんびりと詰所まで向かう。
詰所にいた衛兵の一人に雑把にだが帝国への道なりを聞いた後に俺は、詰所の奥に広がる果てしない草原へと足を踏み出した。
「これはこれで中々楽しいけど……なんだか勇者って感じの立ち回りはしてないよな。俺って……」
穏やかな陽気のせいか何故だかやけに眠い。特に何も考えず食料だけを買って歩き出した俺は今更ながら大変な事に気付いた。
「ってか――――野営の道具とかもなんもない!」
なんだか強くなることばかりを考えていて、それ以外の事がだいぶ疎かになってしまっている気がして仕方がない。
(お金の事とかも全然考えてないしな俺……)
行き当たりばったり過ぎる自分が流石に不安になってきた。
「1人って暇だなー。従魔とか欲しいなー」
そもそも自分は召喚術とかも使えるのだろうか。そんな疑問が浮かぶが、正直僧侶にしか使えなかったヒールが使えてしまう以上大体のモノは使えてしまう様な気がしていた。
そもそもこの世界にはどんな魔法があるんだろう。
飛行魔法とか空間魔法とかも存在するのだろうか。
――――空間魔法使って荷物を収納して、飛行魔法で空の旅……
(……なにそれ素敵)
そんなレアな魔法を見せてくれる様な強者との出会いに焦がれ、今はただひたすらに歩く
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