はぁ...勘違い?
ビチャビチャ――グチャッ
(うぇ。気持ちわる)
俺たちは今、ゴブリン達の亡骸の上でオークと向かい合っていた。流石にあの数の死体ともなると辺りを包む血の匂いも凄まじい。
そんな事を気にしてる場合では無いと思いながらもやはり気にはなってしまう。
魔物とは言え構造はほぼほぼ人間と同じなのだ。似た様な血の臭いや似た様なパーツの残骸が目に付く度に得も言えぬ不快感が込み上げる。
「と、とりあえずこいつを倒してはやく外に出よう!」
「わーってるよっ!俺が引き付けるから援護頼むぞアスロ!」
ようやく耳の痛みが治まって来たのか、耳から手を離したサニスがオークに向かって走りながら叫ぶ。
(さて、実際オークってのはどれぐらいの強さなんだ?)
ゴブリンより強いのは見るからに明らかだがあちら側の世界の知識の中ではそこまでの強キャラではなかった様に思える。
だがそれはあくまで架空の中の話だ。実際に目の当たりにしてみるとそのサイズのせいもあってか中々強そうにも見えた。
先日のあの化け物を見ていなければ俺も少なからずは動揺していた事だろう。
「レイアさん大丈夫ですか?あんなスゴイ魔法使ってマインドダウン起こしてないなんて凄いですね…。いったいどんな魔力量してるんですか…?」
マインドダウンというのは魔力量が0になった時に引き起こす貧血の様な物。人によっては絶え間ない吐き気に襲われたり気を失ったりする事もある。
即ち戦場でのマインドダウンとは戦線離脱の事を指すのだ。
(――――わかりやすく言うとつい先日俺が陥った現象だ)
でも言われてみて気付いたが確かにおかしい。昨日の最後に放ったあの槍程じゃないにしても、この洞窟に入ってからだけでもそれに近しいだけの魔力量は使っている様に思える。
精神的に多少の疲れの様な物は感じているものの、今のところ特に身体の方に異常はない様に思える。
となるとやはり先程の仮説通り魔法とは使えば使うだけ慣れていくとかそういった類のモノなのだろうか。
「ありがとう、でも今の所特に問題はないかな。魔力の量だけは人より少し多いのかもしれないな俺」
「量だけはって…。あれだけスゴイ魔法使って更に無詠唱のスキルも持っていて魔力量まで多いなんて……十分英雄の領域ですよレイアさん!」
どこか興奮した様子のリーナ。だがこの世界での魔法使いの強さの指針が全くわからない俺とではどうしても温度差が出てしまう。
いかんせん他の魔法使いというモノを俺は知らなすぎる。宮廷魔術団の魔法使い達も基本の鍛錬をしてる所ぐらいしか見ていない為彼等がどれだけ優れた魔法使いなのかもよくわかっていないのだ。
だが俺にとってのわかりやすい成長の実感方法は決まっている。それはこのスキルを活用して使える魔法の数を増やすという事だ。
その為にもとりあえず早くランクを上げてもっと強い冒険者達ともPTを組んでみて色々な魔法を覚えていかなくてはならない。
(――――流石に魔法の種類が少なすぎてつまらないしな…)
「おーいっ!そこのんびり喋ってないでまだ戦えるなら手伝ってくれー!」
まだ戦いの最中だという事も忘れ、リーナと魔法についての話をしているとアスロからの救援要請が届いた。
声のした方を見てみると、下馬評通りサニスがオーク相手に苦戦しているようでアスロの援護を受けながらなんとか均衡を保っていた。
(でもサニスはプライドが高そうだから横槍とか入れたら怒るんじゃないのか?)
「サニスー!手伝いいるかー?」
「さっさと――しろぉーっ!」
プライドがどうこう言ってる場合じゃなかったみたいだ。となるとまた危険な状況に陥る前にこの場を早々と切り抜けた方がいいだろう。
多少押され気味とはいえ、サニスという前衛がいる為先程みたいな高火力で一気に屠る必要も無い。
俺は小さめの火の槍を4つ出すと、それをオークに向けて飛ばした。
ドドドッ!!――――ボッ!
4つの槍は狙い通りそれぞれオークの両手両足に刺さり、更に刺さった箇所から火の手が上がりそのままオークを包み込む。
「グォオオォオオオッッ」
「じゃあサニス!後は首でもはねちゃってくれー!」
「――――なんだこれ…簡単すぎるだろ!さっきまでの戦いが馬鹿みてぇじゃねえか!」
それから少ししてサニスがオークの首を斬り落とす。そしてこちらへと歩いてくる二人は何だか微妙な表情をしている気がした。
「レイア、君は本当にルーキーなのかい?」
「ルーキーだよ。でもルーキーだからって全員が全員弱いわけじゃないだろ?例えば強い騎士だって冒険者を始めたら最初はルーキーなんだしな」
「それは言えてるな。俺も冒険者になる前から剣の練習はしてたから他のルーキーよりは強い自信あるしな!」
サニスが同意して乗ってきてくれたおかげか、特にこの話は長引かなかった。
アスロも別に非難的な目を向けていたわけではなく単純に驚いているだけみたいだった。
ただ……リーナちゃんは若干キラキラした目で俺の事を見ている気がする。
――――気がするだけだけど
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