はぁ...ぶっ壊れ
リーナにそう言われ、俺は振り返りしばし耳を澄ましてみるがなにかが聞こえる様子は無かった。
だが斥候でもない俺の耳は特別優秀なわけでも無いし、もし本当になにか聞こえたのだったらそれは十分警戒するに値する情報なので前衛の二人も呼んで一応確認しておいた方がいいかもしれない。
「おーい!リーナちゃんがなんか聞こえ――――って…マジか…?」
二人を呼び戻す為に前方の方を見てみると、そこには先程のサニスの希望通りぼろい剣にぼろい鎧を着けたゴブリンソルジャーがこちらに向かい歩いて来ていた。
その数は全部で3体。ここに来るまでに目にしたのは全てただのゴブリンだった為、たった3体とはいえ奴等が放つ独特の圧の様なモノを感じる様な気がした。
(3体のゴブリンソルジャーってさすがに前衛二人だけじゃキツイんじゃないのか?)
これは満を持してようやく魔法使いの出番が来たのかもしれない。初めての戦闘への参加に、えも言えぬ緊張感がこの身を包む。
「……数多いし先に魔法で削るわ。二人とも下がってくれ」
「そうだね。さすがにソルジャー3体は簡単には行けなそうだ」
「っち!初撃は譲ってやる!外すなよ!」
少々気張り過ぎて出しゃばってしまったかとも思ったが、前衛二人の反応を見る感じこの状況での判断としては別段間違ってはいなかった様だ。
「とりあえずは……こんなもんか?」
あの化け物以外に魔法を使うのはこれが初めてだったし、相手の耐久を試す意味合いも込めてファイアーボールを1体に1つずつ放ってみる事に。
ドドドーンッ!!
「ギェッ」「ガッ」「ギャァ」
土煙の向こうから魔物達の短い悲鳴が聞こえた後、何故か後ろも急に騒がしくなった。
「え?今レイアさん詠唱しました??」
「まさかレイアG級なのに無詠唱スキルを持ってるのか!?」
「な、なかなかやんじゃねぇか流石俺のPTメンバーだぜ」
後ろを振り返るとアスロとリーナは驚愕の表情を浮かべ、サニスは驚きつつも何故か誇らしげな表情を浮かべていた。
一応内容は聞こえていたのだが、無詠唱というスキルが一般的にはそこそこ凄いモノなのかもしれない。
あの冷血漢賢者の反応がそこまでだった為大して凄くもないのかと思っていたが、この3人の反応を見る限り割と自信を持っていいのかもしれない。
(まぁ、あいつ仮にも賢者だしな。そりゃそうか)
「一応ね。でも魔法自体のダメージはそんなに強くないと思うからあんま期待はし過ぎないでくれ」
これはなんの謙遜でも無く本音だった――――実際あの化物のせいで俺は自分の魔法の威力を信じる事が出来なくなってしまっていた。
「いやでも3体ともしっかり瀕死ですよ…」
「だがこれなら殺すのは簡単だ。サニス!止めを刺しに行こう!」
「言われなくても行くっつの!」
瀕死のゴブリンの元へと駆けていく2人の背中を見ながら俺は1人安堵していた。
(よかった…俺の魔法はゴブリン相手になら問題なく通じるみたいだ。これで倒せるなら俺はソロでも下級のクエストぐらいは出来そうだな)
それから2人が瀕死のゴブリンソルジャー達にトドメを刺し戻ってきたところで俺達は小休憩を挟む事にした。
「とりあえず必要な素材は集まったしそろそろ戻ろうか」
「أنا أسافر وحدي أنا لا أسافر وحديأنا أسافر وحدي أنا لا أسافر وحديأنا أسافر وحدي أنا لا أسافر وحدي ヒール!」
(ヒールの呪文ながっ!)
今までの交戦で少しだけ傷を負っていた前衛の二人にリーナちゃんがヒールの魔法をかけてあげていたのだが、そのあまりの詠唱の長さに俺は驚きを禁じ得なかった。
だが人の傷を癒す、それは凄い事だ。特別な才能が無ければ使う事すら出来ないのだからこれくらいの長い詠唱は当たり前なのかもしれないな。
一種の奇跡を目の当たりにしながら、それと同時に俺は自身のスキルの無限の可能性に気付いた。
(もしかしてこのヒールですら俺は無詠唱で使えたりするのか…?)
いよいよぶっ壊れ具合が止まる事を知らなくなってきた己のスキルに軽い戦慄を覚えながらも、俺は一旦スキルについての思考を止めた。
どうやら俺は勘違いしてたみたいだ。ゴブリン討伐のクエストとはその巣にいるゴブリン達を殲滅するものだと思っていたのだが、このクエストは普通の素材回収クエストの類だったようだ。
(でもそりゃそうだよな。FランクのPTにそんな何十体ものゴブリンの討伐なんか頼むわけないもんな)
更に言うなら一人はGランクですしね
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