はぁ...なんかダサくね?
例の盗賊の襲撃事件から一週間が経とうとしていたある晩。流石にフィアとの二人きりの空間にも慣れて来ていた俺はテントの中でフィアから色々な話を聞いていた。
「じゃあ結局今のレスティアにSSSランクの冒険者って何人ぐらいいるんだ?」
「んー…今はサウロも冒険者やめちゃったしねぇ、3人ぐらいかしら」
「ふむ。じゃあそいつら全員サウロと同じぐらいの実力なのか?」
「難しいわねぇ。そもそも戦士と魔法使いじゃ全然強さのベクトルが違うしねぇ。一対一の戦いでサウロより強い人はいないんじゃないかしら」
(あのおっさんてそんなに強いのか…。伊達にギルドマスターやってねぇな)
だがそうなると少なくとも今のレスティアに200レベルを超える様な奴はいないって事になる。
(――――もしかして俺最強?)
調子に乗りそうになる自分に気付き、すぐ戒めた。
帝国で痛い目見たのをもう忘れたのか。もし次また同じ過ちを繰り返せば残っている腕まで無くなる可能性もある。
流石に両腕が無いのは人生ハードモードが過ぎる。
(――――想像するだけでしんどいわ)
「あのおっさんがねぇ…。ちなみにフィアのランクは?」
「私は一応Sよぉ。気が向いた時にしかクエスト受けないからねぇ。今以上に上がる事も多分無いわねぇ」
クエスト受けるのをさぼっているとランクも中々上がらない様だ。という事は俺がSSSランクになる事も無さそうだ。
そもそもの話そこまでこの世界にいるつもりも無いのだが。
「SSSランクの奴等の事ちょっと教えてくれよ」
「別にいいけど私も大した事は知らないわよ?
――――まずはずっとソロでクエストを受けていて、PTなんかに入る事も無い『独竜ザントス』かしら」
(二つ名痛いなおい…。ランク上がったらそんな呼ばれ方する様になんのか…。絶対なりたくないな)
「でぇ、次が――賢者エドの右腕とも呼ばれている『王槍ティアバン』かな?」
(賢者エドってやっぱりあのつるつるの事だよな
あいつの右腕――って事はあいつはSSSランクよりも強いって事か?)
「賢者エドってそんなに強いのか?」
「まぁ間違いなく魔法ではレスティア一ね。まぁ年もいってるしねぇ…強くて当たり前だとも思うけどぉ」
なんだか少し棘がある様な気がした。そういえばフィアも魔法使いだ、少しジェラシーの様なものを感じてるのかもしれない。
「へー。まぁいいや。あと1人は?」
「あと1人の事は全然知らないの。なんでも王族直々のクエストを頼まれてそれに失敗した――みたいな噂を聞いた事があるけど…。
でも結構前の事だから今はもうみんな忘れているんじゃないかしら」
「王族直々のクエストねぇ…。高ランクも大変だな」
「そうねぇ。だからこそ私も今のポジションぐらいがちょうどいいと思ってるしねぇ」
聞いた限りレスティアにはそこまで俺の脅威となりそうな人間はいなそうだった。だが俺を召喚したあの男がそこまで強いというのは誤算だった。
(城にいた頃に歯向かってたら間違いなく負けてたな。――――よかったぁ猫被っといて…)
「レスティアの事はわかった。ちなみにフィアは他の国の事とかもわかるのか?」
「まぁ人並みには。って感じねぇ」
「じゃあこの前言ってた四神柱って奴等の事も教えてくれ」
これから行く国の最高戦力の情報だ。知っておいて損は無いだろう。
「たしかぁ、紫猿のラクトル、黄熊のマルコ、藍狼のウシカだったかしらぁ
そして最後に――――クイーラの所の白蛇のクーネ」
フィアの口にした四神と俺の知っている四神とは大分かけ離れていた。
猿に熊に狼に――蛇、そこはかとなくダサい気がした。
確かあちらの世界での四神と言えば朱雀、青龍、白虎、玄武だった。
昔から思ってたことだがどうして火の鳥、龍、虎の次が亀なのだろうか。どう考えても1つだけレベルが違うと思うのだが。
(まぁ色々あるのかな。――知らんけど)
「なるほどな。いろんな奴がいるんだなぁ…。恐い恐い」
「私からしたら貴方の方がよっぽど恐いけどねぇ」
「俺?なんで俺が恐いんだよ」
「ある程度の強さを持つ様になったら相手の強さもわかるものなの。
なのに貴方相手には不思議なくらい何も感じない、聞いていた話や雰囲気で弱くない事だけはわかる。だからこそ貴方を見ていると深淵を覗いている様な気分になるの」
伊達にSランク冒険者を名乗っているわけではないという事か。
だが正直俺にもフィアの強さなんてわからないのだが。傲慢かもしれないがもしかするとレベルが低すぎる可能性もあるのだろうか。
間違っても脅威とはなり得ないから細かい強さがわからないのかも知れない。
(だがもしそうだとしたなら――――元とは言えSSSランクだったサウロにすら何も感じなかった俺強すぎないか?)
先程の戒めに従い勿論油断はしない様にする。それでも多少自信を持つことくらいは許されるだろう。
俺だって何もしないでこの強さを手に入れたわけでは無いのだから。
「確かにそこら辺の人間にはどう間違っても負ける気はしないけどな」
「貴方の言ってるそこら辺って『全世界中の』って事でしょぉ?」
「流石にそこまで調子乗ってねぇよ!俺はまだこの世界の事を全然知らないからな。どんな強い奴がいるのかさえよくわかってないし慢心はしないつもりだ。もう二度と―――な」
俺が何のことを言い含めているのかわかったのだろう。フィアがこの話にそれ以上踏み込む事は無かった。
その日はそれ以上話はせずに互いに眠りにつくことにした




