はぁ...大丈夫なのか?
それから数日間特に何かが起こる事も無く平和に歩みを続けていた俺達だったが――――――その日だけは違った
それはいつも通りの時間に野営地を決め、皆でテントを張っている時に起きた。
――――ガサガサ
遠くの草陰から物音が聞こえる。まだ結構な距離がある為気付いているのは俺だけみたいだった。
俺と同じく上級冒険者の筈のフィアは特に何もアクションを起こす事無く静かに佇んでいる。
(え、まさかこいつ気付いてない?そんなわけないよな?)
どうするべきか、護衛としての責務を果たすなら勿論見に行くべきなのだろう。
「―――いや、わざわざそこまで俺が気を回す必要も無いか」
そう結論付けて再度テントの設置を再開しようとした時だった。
「敵襲だぁあああ!」
兵士達のテントの方から敵の襲来を告げる叫び声が聞こえてくる。俺がどうするべきかを考えているうちにも敵はどんどん近付いてきていた様で、最早普通に目視出来る距離まで接近していた。
「はぁ…思ったより早かったな。どうする?」
個人的には面倒くさいし行きたくもなかったのだが今は一応護衛のクエスト中、護衛対象に危機が迫っているのならば助けないわけにもいかないのだろう。
一応は先輩冒険者であるフィアに指示を促してみる。
「まぁ…行くしかないでしょうねぇ」
「俺眠いんだよな。お前だけでなんとかならない?」
「じゃあここを私1人でなんとか出来たらアストラルに着いてから私を守ってくれるならいいわよぉ?」
「俺が1人で行ってくるから待ってろ」
労力の事を考えればどう考えても野盗退治の方が楽な事は明らかだった、俺はすぐに兵士達のテントの方へと向かう。
「もぅ…」
後ろから聞こえるフィアの恨み節は無視しておく。
「しねぇえええええ!」「クイーラ様を守れ!」「おらぁあああああ!」
「クイーラ様!こちらへ!」
「なんなのだこいつらは!早く何とかしろお前たち!」
着いてみるとそこは――――中々にカオスな状況だった。
お互いの数は同じぐらいで実力も拮抗している、今の所怪我人こそ出ていたが死人は出ていない様に見えた。
(まぁこの人達結構いい人達だったしな。助けてあげるか)
割と早めの速度で初日に俺達の所にテントを持ってきてくれた兵士さんの元へ駆け寄る、そしてその兵士と剣を交わしていた盗賊を一太刀で切り伏せる。
「――――遅くなりました。大丈夫ですか?」
助けられた兵士には何が起こったのかわからなかったのだろう。唖然とした表情で伏している敵の方を見ていた。
「…あ、あぁ。ありがとう助かったよ…」
「いえいえ仕事ですから、他の奴らも自分が片づけちゃっていいですか?」
他の人達の戦いをのんびりと眺めていても良かったが、このまま放っておくとそのうち兵士達の中からも数人程死んでもおかしくなさそうな戦況だ。
「出来る事なら頼む…!」
「りょーかい」
そう言うや否や俺は駆け出した――――そして駆け回る――――確実に1人ずつの息の根を止めていきながら。
流石にこの人数が相手だと手加減して生かすとか面倒くさい為全て殺していく。
確認したわけではなかったが恐らくは野盗だし問題も無いだろう。そもそも助けられている側にそんな事を言う権利も無いのだが。
――――それから数十秒後、そこには唖然とした表情の兵士達の姿と、既に息絶えている野盗たちの亡骸が積み重なっていた。
「ふぅ、終わった終わった」
「し、信じられない…」
「これがAランク冒険者の力か…」
辺りは驚嘆の声に溢れている。こちらからすればこの程度の野盗達と接戦を演じていた護衛の能力に不信感しか無いのだが。
その程度の能力で要人の護衛なんて務まるのだろうか、失礼ながらもそんな事を考えていると最初に助けてあげた兵士が駆け寄ってきた。
「ありがとう!本当に助かったよ!流石だな。Aランク冒険者の称号は伊達じゃないな」
「いえいえ大した事はしてませんよ。それより死人とかもいない様でよかったです」
「君のおかげだよ。あのまま混戦になっていたら恐らく全員無事とはいかなかっただろう…」
「じゃあ後始末は任せてもいいですか?もう眠いので…」
「あ、あぁ。お疲れ様!本当にありがとう」
そして兵士達からの労いの言葉を貰いながら俺はテントへと戻る。
「あれだけの戦いの後に眠いだなんて――――恐ろしいハートの強さだな…」
「あれがレスティアの冒険者ですか…。凄まじかったですね。あれでAランクって事はもっと強いのもまだ沢山いるって事ですよね…」
「そうなるな。出来る事ならレスティア王国とは揉めたくないものだな」
本人の全く意図していない所でレスティア王国の武力誇示の役割を果たしているという事にレイアが気付く事は無い




