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前編

誰が主役か書いてて分からなくなりました(笑)

ごめんなさい。

勢いで書きましたm(*_ _)m





「ジェイミー・ダウンジェイド!お前との婚約を破棄する!」


 卒業パーティーが始まってすぐ開口一番にイスカール国第一王子のリカルドが宣言した。


「何故ですの?」


 紫黒の髪の耳にかけ、扇で口元を隠してジェイミーはリカルドに問いただす。


「ふん、知らぬとは言わせない。君がジャスミンにしてきたことを。可哀想に男爵の養女と言うだけで虐めていたのをよもや自分では無いと言うのか」

「ええ、わたくしではありませんわ」

「証言者をここへ!」


 ザッと音を立てて王子の取り巻きが一斉に並ぶ。

 女性は一人もいない。



「さあ、皆の者証言を!」

「待ってください!私は虐められてなどいません!」

「何を言う震えているではないかジャスミン」

「ああ、可哀想に」


 可憐な一人の少女が転がるように前に出た。

 卒業パーティーには少々貧相だが、精一杯着飾った淡いピンクのドレスが良く似合う可愛らしい少女だ。

 彼女はジャスミン・リート。市井からリート男爵が引き取った男爵令嬢だ。

 彼女の生い立ちは広く知られているが、彼女が男爵の実子かいなかは何故か知られていない。

 王子の取り巻き男達はすぐさまジャスミンを囲む。

 どの視線もデレーと目尻が下がっている。


「ジャスミン、送ったドレスはどうした?さてはお前!」


 キッとジェイミーを睨む。

 まるで嫉妬深い女性のようだなとジェイミーは扇で口元を覆ったまま思う。

 器が小さい。

 目の前の婚約者だったリカルドはジャスミンの手をそっと包んでキラキラした笑顔を彼女に向ける。

 触られたジャスミンは逃げるようにピクリと一瞬その手を引きかけたが何事もなかったかのようにそのまま手を握られる。

 愛し合う……ね……とジェイミーは他人事だ。


「先に宣言しよう!この私リカルドはジェイミーとの婚約を破棄し、新たにジャスミンとの婚約を結ぶ!」

「おお!!」

「おめでとうございます!」


 すぐさま王子の取り巻きは二人を取り囲んで祝福の声をあげるが当のジャスミンは浮かない顔。

 観客となっている卒業パーティーに出席している者達も誰も声を上げない。

 皆困惑顔で成り行きを息を潜めて見守っているだけだ。

 どこからともなくか細く声が聞こえた。


「ぜーはー!いけません!……ぜーはー!リカルド様!……婚約破棄など!……はぁはぁ」

「ちっ!抜け出してきたのかリットン」

「ましてや、新たな婚約など……はぁはぁ、国王様の……許しを受けてないんですよ!」


 卒業パーティーだというのに埃まみれの服にボサボサの髪。

 眼鏡が歪み、ボロボロと言うのが相応しい男が一人駆け込んできて叫んだ!

 対してリカルドは五月蝿いのが来たとばかりに取り巻きの一人につまみ出すよう指示をだす。


「なっ、やめろ!これ以上事態を悪化させる気か」

「五月蝿い奴だな。ジャスミンのことが手に入らないからと言ってリカルド様を妨害するのを止めろ」

「ジャスミン嬢は嫌がってただろう!」

「恥ずかしがっておいでなだけだ!」

「どこをどう見たら!モガッ……うーうー」


 取り巻き二人掛りでリットンと言われた青年は倒された挙句猿轡を噛まされる。

 パーティーには相応しく無い捕物劇だ。

 それを震えながら見ていたジャスミンは勇気を振り絞って口を開いた。


「……です……無理です!無理です!!」

「どうした?ジャスミン、何が無理なんだ?」

「王子と結婚するなんて無理です!!!手を離してください!」

「どうしたんだジャスミン、さてはジェイミー!お前が何がジャスミンにしたのか?」

「どうしたらその発想になるのかしら?今彼女と話をしていたのはリカルド様ではなくて?」

「急に結婚を嫌がるなんてお前が何かしなきゃありえないだろう!王妃になれるんだぞ!」

「無理です!好きでもない方との結婚だなんて!王妃教育なんて無理です……手を……手をお離しくださいませ!」

「……好きでも無いって言われてますが……でも確かに好きでもない方との結婚は嫌ですわね。リカルド様、婚約破棄承りましたわ。ジャスミン様どうされます?わたくし、帰りますが……」

「わ、私も連れて行ってください!」


 ジャスミンはリカルドの手を振り払いヒシとジェイミーに縋り付く。

 ジェイミーは何やら溜息を吐きたそうだ。


「……では参りましょうか。ジャスミン様」

「はい!」

「待て待て!ジャスミンを攫おうとするな」

「何を仰っているのですか?ジャスミン様がお望みでしたので叶えて差し上げているだけですわ」


 失礼な事を言うなとジェイミーはリカルドを睨む。

 卒業パーティーで急に始まった茶番劇に周りはただ見守るしかなかった。何せこの国一、二を誇る高位の者たちの婚約破棄劇なのだ。

 誰が口を挟めようか。

 参加している国王や王妃さえも口を挟まない。


「ジャスミン!あの愛の日々は嘘だったのか!?」

「愛?ですか?えっと王子様とはお話しさせて頂いてましたが……愛はなかったかと……」

「何を言う……さてはジェイミーの仕業か!」

「もう良い、黙れリカルド。ジャスミン、ここまでで良い」


 ずっと黙って見ていた国王が幕切れの言葉をため息と共に吐き出す。

 諦めた。それだけがその言葉で誰もが分かった。

 分かっていないのは当の王子と取り巻き達だけだった。




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