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奴隷姫は祝福す
「誇り高き君主よ。以上が、異世界で命を落とした若者がこの地にて復活を遂げるに至った、わたくしの知る真実のすべてでございます」
そう話を閉じた乙女は、枷の鎖を鳴らして額ずき床に口づけた。
黒髪の若き君主は、玉座の金の肘かけに頬杖をつき低く笑った。
「生き返らせる代わりに別人への生まれ変わりをさせるとは、指輪の魔人もなかなか突飛なことをする。しかし、妹の行方はまだ分かっていない。ロック鳥に連れ去られたということは、もう食われてしまったのではないか」
澄み渡る君主の声に呼応するように、大広間にひしめく黒い影がにわかにざわめいた。千の灯火がどれほど照らそうとも黒以外の色が見出せぬその影に囲まれながら、乙女はなお臆することなく玉座を仰いだ。
「気高き君主よ。それを知るには、まだまだ先を語らねばなりません。さすれば天を渡る太陽が砂丘の影を照らし出すように、すべてが明らかになりましょう」
乙女がたてる涼やかな音に耳を澄ませながら、君主は眠るように紅の眼を伏せた。
「続けるがいい」
「英知あふれる君主の寛大なるお心に感謝いたします。黄金の輝きを頭上にいただきし君に、星の数よりも多くスライマンの恵みがあらんことを」
床に祝福の接吻をして、乙女は顔を上げた。
「絨毯を操る魔法使いを道連れに、二人の魔人と空飛ぶ木馬を手に入れたバタルは、ロック鳥が棲むという七色の海を目指しました」
灼けつく砂漠から、宝玉のごとく輝きし海へ、舞台は移る。
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