85.日記△〇年××月〇2日
―フィリップスの日記より―
△〇年××月〇2日
「やったぞ! 遂に俺の結婚相手が決まった!」
「本当か、ベーリュ! でかしたぞ!」
「良かったわね、ベーリュ! 偉いわ!」
「ベーリュ兄さま、おめでとうございます!」
「……おめでとう、兄さん」
兄さんの結婚相手が決まった。相手はネフーミ・ヴァン・ザイーダ侯爵令嬢だ。何と爵位が上の相手の御令嬢と結婚することができたというのだ。これまでの兄さんの努力の賜物だろう。いや、兄さんだけじゃないか。
ザイーダ侯爵が何故娘を兄さんに嫁がせたかは本当のことは知らない。後で兄さんに聞くことにしよう。表向きが公爵の方から兄さんの腕を買ったから………何て話は信用できないし。
この情報元は兄さんの取り巻きであるルーカス・ウィン・コキアから聞いた話だ。彼はコキア子爵家の嫡男だ。コキア家は我がソノーザ家と以前から付き合いがあった。……まあ、派閥の傘下にいるような関係だ。兄さんが学園に入学してから取り巻きをやってくれているが、結構苦労しているみたいだ。この前も、何やら兄さんに何かやらされていたようで疲れた顔をしていた。……随分前に青ざめた顔もしていたけど嫌な想像がよぎってしまう。
もしかしたら、兄さんの結婚にも協力してくれたのかもしれない。兄さんの結婚については両親と妹が心配していたからな。嫁探しに難航していた兄さん自身も焦っていた様子だった。きっと、そういうことでも苦労させられたに違いない。
待てよ。兄さんが結婚したら、きっとすぐにソノーザ家の当主のように振舞うだろう。そうなると私やイゴナの結婚相手を都合のいいように決めてしまうだろう。でも、それはダメだ。私はともかくイゴナには恋愛結婚させてあげたい。あの子には既に心に決めた人がいるのだ。
それはスミロード公爵の次男のシュラウ・ラウド・スミロード。格上の家の相手だが本人もイゴナに思いを寄せている。そこで私は兄さんに内緒でスミロード家の御両親に会ってイゴナとシュラウ殿の婚約を進めることにしよう。私も学園の評判はいいほうだしシュラウ殿にも同席してっもらえば何とかうまくだろう。いや、賭けになるかもしれないな。我が家は少し前は落ち目だったんだし。
兄さんの結婚が終わった後はルーカス殿に感謝しなければならない。これまで兄さんの取り巻きをしてくれてきたことで随分苦労させてきてしまったのだから。願わくば、ソノーザ家の発展と共にコキア家も大きくなっていくことを望まずにはいられないな。いつか恩返しできればいいのだけど兄さんはそういうことを考えてくれるだろうか?
期待は薄いな。




