62(44裏側).場所?
王妃は二人の息子たちの行動に心配になった。カーズの居場所をすぐに突き止めて向かうのだから、おおよそのことは理解しているのだろう。
「あの二人が今のカーズに何を言ったのでしょうか?」
「この件はカーズに非がある。それが分からないような子たちではないのは確かだ。二人とも性格からして厳しいことを言うのだろうな」
「まあ………カーズの心が壊れてしまうのでは?」
王妃がカーズの心配をするが国王は気にしなかった。むしろ、一度深く絶望してほしいとすら思っていた。
「そうかもしれんな。だが、そうなったのならばカーズの自業自得と言えよう。もっとも、サエナリア嬢という婚約者がいるというのに他の女性と懇意にするような奴がそう簡単に心が壊れるかは分からんがな(心が折れてもあやつならいずれ立ち上がるだろうしな)」
「それは……厳しい言い方ですが確かにあの子の責任ですね」
「私達はソノーザ家のようになるわけにはいかんのだ。本当にカーズが心を壊してしまったとしても、それはカーズがその程度の男だったというだけだ。(深く反省してくれればいいというのが本音なのだが……)」
「そうですか……。確かに私もカーズのしたことは許しておけませんし、ここは二人に任せましょう」
「ああ、形は違えど二人も優秀な子たちだ。任せても問題ない(弟だしな)」
王妃の顔からカーズに対する憂いが無くなると、王妃は真剣な顔になった。
「それでは早速スミロード公爵に知らせなければなりませんね。サエナリア嬢の失踪、ソノーザ家の罪、私達王家の意思、そしてサエナリア嬢の保護と養子縁組のことも」
「うむ。サエナリア嬢の居場所を確保するためにも、私の直筆の手紙を書いて王家の命令として伝えよう」
国王は机に向かうと、手紙と印鑑を引き出して書き始めた。王妃は他の仕事のために自分の部屋に一旦戻っていった。国王は部屋で一人になると、一旦筆を止めて物思いにふける。
「ベーリュめ。あそこまで私やエリザベスを利用していたとは……。その頭をもっと他者のために使ってほしかったものだ。無能な私達にも節穴だった責任はあるが、あの日記から分かる範囲でも罪が重すぎる」
日記の最後はソノーザ家を出て行く決心がついたという内容になっていた。その後のことは日記に記されていないが、両親がどうなったのかを考えると調べれば更なる罪状が見つかる可能性が高かった。
「フィリップス・ヴァン・ソノーザか。日記を残してくれたことには感謝しなければな。……ん?」
ここで国王はえる違和感に気付いた。それは日記があった場所についてだ。
「何故サエナリア嬢の部屋にベーリュの弟の日記があるのだ? ベーリュならそのようなものがあれば、すぐに処分してしまいそうだが……?」
ベーリュ・ヴァン・ソノーザの性格からして、家から出て行った弟の私物など残していくとは思えない。それがこのような暴露本のような日記ならなおさらだった。日記の内容から弟思いな一面があるとは思えない男なのだ。しかも、日記のあった場所はサエナリアの部屋だというのだから更に奇妙に感じる。
「サエナリア嬢の部屋は元は倉庫だったらしいが……それでもおかしいぞ。何か妙だな」
国王は首を傾げるが、その答えはそれを調べれば分かるということにして、筆を持ち直した。
その答えが、とある意外な人物の手によってサエナリアの部屋に持ち込まれたという事実だった。その事実を彼が知るかどうかは、今は分からない。




