60(43裏側).養子に?
「カーズはただの王子にして、彼女の王太子妃の立場をそのままにするだけでは………」
だからこそ、簡単に諦めるという選択を二人はできなかった。代わりになれる令嬢など、現在のところいないと言わざるを得ない。サエナリアに対しては同情と罪悪感が深いが、二人には国を背負うものとして立場がある。どんなに罪悪感があっても個人の感情に縛られるわけにはいかないのだ。
「惜しいのは分かる。我が子たちの誰が王なっても支えられる女性はそう多くはない」
「ええ……」
ソノーザ家の取り潰しは二人の頭の中で決まっていた。それは一家全員を平民にすることを意味する。あの日記の内容が事実だと証明できればベーリュ・ヴァン・ソノーザは罪人になるのは確定だが、その娘のサエナリアは何の罪もない。むしろ、家庭環境を鑑みれば被害者だと言える。それでも今のサエナリアはソノーザ公爵令嬢なのだ。少なくとも今は。
「サエナリア嬢の立場を守るためにも、彼女が見つかった時に……。いいえ、その前に母方の家の養女にしますか?」
「母方、ザイーダ侯爵家か」
サエナリアを平民にしないで、今の立場をそのままにするためにはどこかの貴族の養子にする方がいい。条件は辺境伯から公爵の立場で、決してサエナリアを蔑ろにしない家に限られる。それでいて親戚の関係でなければならない。
「最近、領地改革を成功させたと聞いています。そこなら、」
「いや、エクス・ヴァン・ザイーダ侯爵は決して愚かではないし財政は潤っているらしいが、ソノーザ公爵夫人の弟であることを考えると家庭環境が心配だ。自分に似てないと顔で判断して、長女を蔑ろにして次女だけを可愛がるなど親としてどうかしている」
「そうですね。サエナリア嬢はとても有能なのに、無能な妹は見かけだけで頭は空っぽみたいですからね」
国王夫妻はサエナリアの妹ワカナのことまでは好いてはいない。むしろ名前を出したくないほど嫌っているくらいだ。母親譲りの美貌をいいことに学園で多くの男子生徒を惑わせる愚か者という認識だった。馬鹿なことをしてサエナリアの足を引っ張らないか心配だったが、カーズの話から学園以前からひどい仕打ちを行っていたことを知って腹を立てているくらいだった。その母親の生まれた家だと考えると、条件に合うとは思えない。
「スミロード公爵の養女にしてもいいだろう。ソノーザ公爵の妹が嫁いだ家だ。誰が見て聞いても不自然ではあるまい」
「え? あのソノーザ公爵の妹が嫁いだ家ですよ? そこはちょっと、考えものでは………」
スミロード公爵家。ソノーザ家と同じ公爵の地位にあるが、ソノーザ家に比べて政治的に力は弱い。何故なら、十数年ほど前に、地位を継ぐはずだった長男が不祥事を起こして勘当されたからだ。




