40.絶望?
「そもそも、お前はサエナリア嬢を見つけて何がしたい? 元の関係に戻ろうなどと思っているのか? 男爵令嬢にうつつを抜かしたお前が?」
「お、俺は、サエナリアとマリナの三人で一緒に輝かしい未来を創っていきたいのです! 元の関係以上の、」
「黙れ」
国王はまた息子の言葉を遮った。しかも蔑むような目で。それだけカーズの言葉が聞くに値しないし聞きたくもないからだ。
「はぁ、聞かなければよかったな。これ以上幻滅させられるとは」
「本当ね。王族にあるまじき傲慢な考え方だわ。二人の御令嬢が離れていったのは聡明な判断ね。そのお二人は貴方にもったいないわ」
話を遮られた挙句、見るからに呆れた姿勢を見せつけられて、カーズはもう声が出なくなった。それだけではない。目の前の両親の目を見ただけで、どれだけ失望されたか理解してしまった。自分にあのような目を向けられたことはこれまで一度もないのに。
「(そんな……俺は、サエナリアとマリナだけじゃなく両親にまで見放されるというのか……)」
カーズはうなだれる。そして、そんな彼をこの場にいる誰もが同情できない。
「さっさと謹慎してろ。今のままだと、お前の人生は絶望の一本道になる。もう少し賢くならなければ、絶望だけがお前の未来だ」
国王がパチンッと指を鳴らすと同時に謁見は終わった。カーズはこの後、呆れ顔の護衛二人に無理矢理自室に運ばれることになった。
「王子、抵抗は御控えください」
「我々に抵抗は無意味です」
「…………」
放心状態のカーズは絶望のあまり抵抗しないまま、連れていかれた。
◇
「「はあ~……」」
謁見の間に残った国王夫妻は揃って深いため息をついた。顔もげんなりしている。それだけカーズに対する失望は深いのだ。
「どうしてこうなったのだ、どうしてあんなにも愚かな男になったのだ、カーズ……」
「学園で成績上位と聞いていたけど、成績だけでただの馬鹿。いえ、大馬鹿者だったのね……」
「私がもう少し見て言てやれていれば……」
「学園は閉鎖的な場所だと分かっていたのに……」
カーズのあまりの馬鹿さ加減に二人は絶望する。大馬鹿者と聞いて、ジンノは一人の男を思い出した。
「大馬鹿者といえば我が愚弟もそうだったな。カーズは奴ににて行動力があり過ぎる」
「あの子は、カーズは、彼と親しかったものね」
「愚かなのは我が愚弟だけでよかったのだがな……いや、いないほうがいい」
二人が頭に浮かべるのはジンノの弟、つまり王弟にあたるウェイザー・フォン・ウィンドウのことだ。ウェイザーはとても行動力があって破天荒な男であり、三年前に訳の分からない理由でウィンドウ王国を飛び出して旅に出て行って、それっきり音沙汰がない。そんな男とカーズは親しかったのだ。
「兄でありながら私はウェイザーの言っていることがいまいち理解できなかった。前世の記憶がどうだのと、妄言としか受け取れなかったものだ……」
『私には前世の記憶があるのです!』
「しかも、この世界を『ゲーム』とか言って広い世界を見たいだなんて言ってたわね……」
『この世界がどこまでゲームと同じなのか違うのか、この目で見てみたいのです!』
二人はウェイザーのことを思い出して、最後に同じことを思った。
「「…………(ウェイザーと親しかった時点でマズかったのかもしれない)」」
カーズには絶望までさせられたが、他の二人の子供たちは違う。
「カーズはもう無理だな」
「ええ。王太子はレフトンかナシュカに任せるしかないわ」
国王と王妃の間でカーズの失脚が決まった。




