18.選ばれた?
「どうして私が働かなきゃいけないのよ! そんなのは他の奴がやればいいじゃない!」
「王家に嫁ぐということはそういうことだ。サエナリアのようなしっかりした女性ならそれが分かっている。お前のような女とは違うのだ」
「違うって何よ! あの女が持っていない美貌とドレスや宝石を私は持ってるのに! 私は選ばれた女なのに!」
「「(こいつ、もう頭はダメだな)」」
意味不明な言葉を吐くワカナに呆れまくる公爵と王太子の二人。
「誰に何を選ばれた? まともな者はお前など選ばないよ。それにサエナリアにこそ、お前が持っていないような貴族として必要不可欠な価値観と深い情を持ち合わせている。もしも選ばれると追うなら、サエナリアこそ選ばれる!」
「な、な、な…………」
ベーリュがワカナに言いたかったことを言ってくれるカーズ。ワカナの方は、もはや何を言ったらいいのか分からないと言った感じだ。
「覚えておけ。私の婚約者にふさわしいのはサエナリアのような女性だ。お前などでは絶対にない!」
「~~~~~っ!」
ワカナは目に涙をためて、顔を赤く染めて、唇を噛んで悔しがる。更に、美少女の顔を歪ませて鬼のような形相になった。怒りに震え、興奮してまだ何か言いたそうだが、ここで使用人の執事たちがノックもしないで入ってきた。
「申し訳ありません! ワカナお嬢様はこちらに……ってワカナ様!?」
「旦那様と王太子殿下もご一緒に!?」
どうやらワカナを必死で探していたらしく、そのワカナがベーリュとカーズといるのに驚いた。ベーリュはすかさず使用人共に怒りを交えた命令を下す。
「お前たち何をしていた、ワカナが勝手に入ってきたんだぞ!」
「「はっ! 申し訳ありません!」」
「直ちにワカナを自室、いや地下牢にでも閉じ込めろ! うるさくてかなわん!」
「「了解しました! ワカナお嬢様、失礼します!」」
「んなっ!? お前たちは!?」
ワカナは二人の執事に両側から腕を捕まれて、その場から連れ出されることになった。それでも、ワカナは王太子に向かって理不尽な怒りを叫ぶ。
「ふっざけんじゃないわよおっ! 何が王太子よ! 礼儀だの気品だの細かいこと気にしてんじゃないわよ! 地味な女と最高の美を持つ女を取り換えられるというのに、後悔しろおおおぉぉぉ! ちくしょおおおぉぉぉ!」
怒り狂うワカナの声は、とても少女の口にするような声に聞こえなかった。ギャアギャア騒ぎながら部屋を連れ出されてからも「ムッキー、くそ、離しなさいよ!」とか「私に逆らうな、お前たちはクビにしてやる!」という声が聞こえる。ワカナの父親のベーリュとワカナを袖にしたカーズも悪魔の声を聞かされた気分になった。
だが、ようやくワカナの暴言という嵐が過ぎ去ったのだ。おかげで静かになった。




