14.妹?
「「ん?」」
何やら、こっちに向かって走ってくる音が聞こえ始めた。嫌な予感がするベーリュと不可解な感じがするカーズ、二人はそろって扉のほうに視線を向けると……。
「王太子様が来てるって本当!?」
「「!?」」
突然、ベーリュとカーズが話し合いをしている客間の扉が勢いよく開かれ、ウィンドウ学園の制服姿の少女が入ってきた。ノックもしないで入ってきたその少女、いや御令嬢を見るなりベーリュとカーズは目を丸くして驚いた。
「ワ、ワカナ!(何でこの馬鹿が出てくるんだ!?)」
「ワカナ嬢? サエナリアの妹か(何だ、ノックもしないなんて)」
入ってきたのは公爵家の次女ワカナだった。ワカナは王太子のカーズを見つけると、笑顔で迫ってきた。
「わあ! 本当に王太子様だ! 本当に来たのね!」
「「(無作法!)」」
ベーリュとカーズは、ワカナを無作法と思った。平民の反応なら分かるが、貴族ではあり得ない行動と口調だからだ。そんなワカナに対して、ベーリュは怒りを、カーズは冷めた視線を向ける。だが、ベーリュが叱りつける前にワカナは勝手に自己紹介を始めてしまうのだった。
「おい! ワカ、」
「初めましてカーズ王太子様! 私はワカナ・ヴァン・ソノーザです。わざわざお越しいただきありがとうございます!」
「あ、ああ。こちらこそ初めまして。カーズ・フォン・ウィンドウだ……(なんて礼節のなってない自己紹介だ)」
礼節のなってない、というのは事実だ。ウィンドウ王国の貴族の自己紹介にしては、発する声が大きすぎるし姿勢も正しくない。格上の相手に対して頭を下げる角度が違うし、普通なら王太子「様」ではなく王太子「殿下」と呼ぶ方が正しいのだ。
「(王太子に対する礼儀がなってないな。本当に公爵家の令嬢……サエナリアの妹なのか?)」
カーズはとりあえず貴族として自己紹介を返すが、そこに笑顔はなかった。何しろ、ワカナの態度は相手に失礼にもほどがある。カーズは個人的にお近づきになりたくないと思ったのだ。
「ワカナ! 部屋に戻りなさい! 王太子殿下と大事な話をしている最中なんだ!」
「えー、いいでしょ! 王太子様が私のために来てくださったんだし私がいてもいいじゃない!」
「馬鹿者! お前のためなものか! さっさと部屋に戻らんか!」
「やだー!」
ベーリュは娘に注意して部屋から出ていくように指示すするが、ワカナは幼稚な子供のように拒否する。それはこの年齢で貴族の令嬢のする言葉遣いではない。カーズは見ていてイラっと来る。正直言って見苦しいのだ。
「??(こんな女がサエナリアの妹だと?)」
ソノーザ父娘が言い争う中、カーズは突然現れた少女が婚約者サエナリアの妹だとは思えないし思いたくなかった。カーズの知るサエナリアは、礼節を重んじ常に落ち着きを保っていた。顔は良く言えば清楚、悪く言えば地味と称され、どこかはかなげな雰囲気を漂わせる女性だった。そんなサエナリアと比べると、ワカナは姉よりも目麗しい美少女だが、性格は全く逆だと分かってしまう。




