122.長い?
誰もが軽蔑するがベーリュは勢いを増すばかり。その勢いは国王も不快感を示す。
「ベーリュを勢い込んでくれるところで悪いが日記が真実を書いていることは間違いない」
「な、何故ですか!?」
「この日記を見て、私達が何も調べなかったとでもいうつもりか?」
「っ!」
ベーリュは息を飲んだ。正直言って、そうしていただろうと思っていたのだ。ただ、嫌味な国王に反論しないと気が済まなかっただけにベーリュは最後までもがいてあがくと決めたのだ。たとえ、勝算が薄くても。
「そ、そんなことは……では……!」
「ああ、納得してもらえるように他の証拠を提示してやろう、宰相。例の物を」
「はい」
宰相が持ってきたのは、数多くの書類だった。しかも、束ねられた書類は分厚くて本にまとめた方が早いのではないかと錯覚してしまうほどの厚さだ。
「そ、それは?」
「ああ、あれは日記に記された事件の全てを徹底的に調べ直した結果をまとめた書類だ。二十年も前のことだが、あの頃より今の方が我が国の技術力が発達しているから、あの頃見落としたことがあれば今の時代なら調べ直しても見つけられるはずだと思わんか?」
「そ、そんなことを、わざわざ!?(なんてことを! そんなことされたら……)」
ベーリュは顎が外れそうな勢いで口が開いたまま固まった。国王の言った通り、確かに今と約二十年前では技術力が違う。それは捜査能力も同じだった。
「わざわざ、だと? 原因は己自身にあるだろう?」
「……(くそっ!)」
国王に睨まれて、ベーリュは舌打ちしたい思いだったが、立場上そんなことができないことに悔しさが深まる。
「そういうことだ。さあ宰相よ。簡潔にまとめて結果を聞かせてくれ」
国王に促され、宰相は静かにソノーザ家の罪を淡々と説明した。
「……はい。日記に記された事件の全てを可能な限り調べ直した結果、そのほとんどが現ソノーザ公爵ベーリュ・ヴァン・ソノーザが関与していたことが事実である裏付けと証拠が出ました。他国から麻薬や毒物の購入は裏商人の自白、あるいは購入記録から確定しています。毒物の方は日記に記された過去の数々の毒殺事件及び、当時王太子であられたジンノ国王陛下が経験された毒殺未遂事件に使用されたものと一致しています。麻薬に関しても、過去の麻薬所持・取引事件の物と一致しています。それらの事件全ては、別人が犯人として逮捕されていますが、これを機に彼らは冤罪と判断されました。念のため、濡れ衣を着せられたと思われる方々に関しては、本人もしくは親族の方々を調べ直して九割が無実であることが確認できました。そういった方々はすでに王家側から謝罪をもって正式に釈放されました」
「「「「「……………………」」」」」
長い説明だった。
「長いぞ? 簡潔にまとめろと言ったはずだが?」
宰相は静かに反論した。
「まとめました。長いと思われるのは、それだけ罪が多くて深いのです。全く恐れ入りますよ。よくもまあ、出世のためにこれだけの罪を犯せるものですね。……全く反吐が出ますよ、ベーリュ・ヴァン・ソノーザ」
宰相は無表情な顔を維持したまま、ベーリュを睨み付ける。




