お風呂
『かちゃかちゃ』
と音を立てて腕時計のベルトを外す。
一日身に着けていた他の衣類も順番に脱いでいく。
何も身に着けていない状態になって浴室にはいる。
シャワーを手に取り適当な温度に調整してから、頭からかけ、少し体を温める。
その後、
シャンプー、リンスと決まった順番で、頭から体へときれいにしていく。
全身が洗い終わったところで、浴室の電気を消してから、
お湯をあらかじめ張っておいた浴槽に足を入れる。
ゆっくりと体の下の方から上のほうへとお湯につかっていく。
肩までつかったところで、浴槽の縁に首を預ける。
まだ暗さに目が慣れずに、ぼんやりと光る世界で瞼を閉じる。
『チャポン』
と時々、
湯船に水滴が落ちる音だけを残した真っ暗な世界。
全身が温かさに包まれる。
さっきまで何かに縛られているかのように、
重く感じた身体から、ゆっくりと何かがほどけていく。
色んなことで散らかっていた頭の中も、
一つ一つがタンスにしまわれ、整理されていく。
一体どれくらいの時間が流れただろうか。
さっきまではあんなに腕時計を気にしていたのに、
今では時計の針の音は聞こえない。
体が火照ってきたところで、一息ついてから小さく伸びをする。
目もすっかり暗さに慣れていた。
ゆっくりと立ち上がり、浴槽からでて、脱衣所にはいる。
脱衣所で体についた水滴をバスタオルでとる。
そして、服を順番に着ていく。
少しだけ、身体が重くなったように感じた。