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第90話 アルヴィンの旅行日記 2

あとがきにおまけを書きました。

 顔面スタートリオと俺は、王都の東の門……リースキット東西街道を海方面に向かって走っていった。目当てはもちろん海沿いだからこそ食べれる海産物の数々である。

 中央部から海までは顔面スターたちの驚異的な体力で通常5日のところを3日で走破。海に出ると海沿いを北に向かって走る。


 今回、俺は東の海沿いから北を目指し、王国最北端の地方都市バドミールから新領の最北端ノースフリードへと続くコースを選んだ。ノースフリードからは南方面に進み、最南端のサウスフリードから山脈を迂回するように共和国を経由して王都へ戻ってくる。

 おそらく2か月程度かかるのではないかと思う。

 今回の旅の目標は。


 1、なるべく多く村や町を回る。

 2、気になった場所に行く

 3、行った街で1つ個人的名所を作る

 4、美味しいものを食べる


 となる。調査依頼なのでリースキットに吸収されてからどう生活が変わったかなどを観察するため、宿泊地には最低でも2日は滞在、地方都市などには4日は滞在することにしている。


 そんな目標と計画を馬車の中で考えながら、旅は進む。


  〇 〇 〇


 潮風を身近に感じた海沿いの沿岸街道に別れを告げ、内陸部に進む王国環状街道へと乗り入れた俺たちは、時計で例えるなら3から11までの距離を進んでから北方街道へと歩を進め、王都を出発してから2週間後に王国最北端、バドミールに到着した。


 馬車の荷台には、沿岸部で買った魚の干物やら和の国からの輸入品、あとは内陸部で手に入れたチーズやらでいっぱいである。

 ああ、ハマグリもどき美味しかった……イカ(魔物)もタコ(魔物)もエビ(魔物)もおいしかった。一番は何と言ってもマグロ(魔獣)の刺身だなぁ。シャチがイワシ(魔物)の群れに追い回されていたのはシュールだった。

 内陸部ではたまたま滞在していた村にゴブリンが襲撃してきたので返り討ちにしたらチーズをくれた。普通のラクレットとブルーチーズの中間の味がして美味しい。

 これら食料品は道中で野宿するときに消費している。においに敏感なはずの馬は干物のにおいには動じなかった。


 そして今、俺はバドミールの関所で検閲を受けている。


「身分証は?」

「はいギルドカード」

「よし。お……結構いろいろなところを旅してきたようだな」

「ああ、旅が趣味だし、そういう感じの冒険者なもんでね」

「荷台にはなんで魚介類とチーズと武器なんだ……ってかこれ王国騎士団の制式だよな?どこで手に入れた!」

「まあ、怒りなさるな。これを見てみな?」


 そう言って取り出すは国王の捺印がされた依頼書。これで「嘘」とでも言えば王族に……いや、国王の顔に泥を塗ることになるのだ。


「な!? そ、そうか……王族御贔屓の冒険者だったとは……とんだ無礼を」

「御贔屓? ま、まあそんな感じだけどそれでどうこういうつもりないし。まだまだCランクのひよっこだよ」

「いやいやいや、Cランクでひよっこって……」


 ま、本当のこと言うと長距離で拘束期間の長い依頼って結構ランク昇格とかでポイント高いんだけどね~。


「あ、そうだ! この街でお勧めの宿と食べ物ある?」

「え? あ、ああ……メインストリートを進んで5個目の角を曲がったところにあるのがおすすめだ。そこで作られている油鳥っていう料理は最高だぞ」


 油鳥? なんじゃそりゃ。


「これだけ旅しているのに知らないのか?ほら、あれだよ。ノースフィールド帝国の郷土料理で油で鳥を揚げて、甘辛いソースをたらしたやつさ。ここら辺を通る旅好きはこぞって食べに行って高い評価を残しているぞ」


 うん、それレシピを聞く限り油淋鶏だね。そうか、久しぶりに油淋鶏食べることが出来るのか。あー、そうなるとタルタルソース作ってタルタルチキンも捨てがたいっ!


「そうか、ありがとう。行ってみるよ」

「あ、ああ……通っていいぞ」

「サンキュー」


 検分が終わったようで、俺はバドミールの町へと馬車を乗り入れさせる。そのままメインストリートを進み紹介してくれた宿屋へ一直線。早く食べたいな~油淋鶏。


  〇 〇 〇


 油淋鶏食った。めっちゃ油淋鶏だった。それ以外に特筆することなかった。味はいたって普通。使っている油がごま油に近いもの以外、特に……う~ん、筋が若干多かった気がする。

 だけど、普通に食べることが出来る油淋鶏だった。

 それより俺が感動したのは、コメという存在だ。なんでもノースフィールド帝国ではコメが栽培されており、王国寄りの夏は比較的温暖で、その地域にはコメの産地があり秋になれば一面黄金色になるらしい。それを聞いた俺は本来の目的を忘れて「よし、帝国に行くぞ!」と大声で言いそうになった。


「はぁ……でもやっぱコメ買って帰りたいなぁ……」


 栽培されている品種は東南アジアとかでよくみる感じの品種で、相違点があるとすればぱさぱさではなくモチモチと言ったところか。

 しかし……しかしッ! これは非常に惜しいことをしたのではないだろうかッ! コメは日持ちする。だけど、これから新領を南下していくにあたって、邪魔になるではないか! 南から攻めれば……攻めていればッ!


 そのことに身悶える俺に宿の店主が「なんなら、お土産用に送っておきますか?」と申し出てくれたので泣きついておいた。全て偽の実家に送られ、そこから偽装してシュベルツィアに送られることになる。ふっふっふ、これでルートを確保すれば俺は米生活をすることが出来るし、店にモチもんじゃが追加されるではないか。食革命と経済効果アップまったなし。


 滞在2日目は腕が鈍ると困るので、周辺の草原でこの地特融の魔物を相手に戦った。この世界のコボルト72匹の群れを相手にしたが、別に弓でもそれなりに倒せることが分かった。

 ただ、【アローレイン】のような魔力を使うスキルはやはり使うことが出来なかった。

 そうそう。今回の旅で魔力の回復についても探りを入れていくことにした。共和国の学園都市の研究者のモルモットにされたくはない。


 ヒントになりそうなのは新領の所々に住んでいる戦闘部族ルーマー族。魔力による身体強化術はこの世界では右に出る者はいないらしい。

 しかし、集落を見つけた者はいないらしく、ただ「いる」としかわかっていない。当てはないが調べる価値はありそうだ。


 3日目。足りなくなってきた着火剤などこれから必要そうなものを購入すると同時にノースフリードへのルートを確認する。

 調べたところ、一度ノースフィールド帝国の村を経由しなければいけないらしい。山脈に道は通っているがこの大型馬車では通れないとのこと。その通る村ではコメが栽培されているらしいので売ってもらうために保存食の一部を売り払いスペースを開ける。


 4日目。ざっくりにしか見ていなかった街を観光。

 ここバドミールは王国の北の玄関口として知られ、北に位置する帝国の文化も採り入れられている街である。城門は万里の長城のそれに近いデザインになっており、緊急事態の時は城門の上から飛び道具を使うのだとか。

 教会はどちらかというとお寺(?)のような感じであり、本当に同じ宗教の教会なのか……と思ってしまった。

 初めて泊まった宿の女将さんに教えてもらい、街内観光では定番になった教会のステンドグラス観察も今回はお休みのようだ。


 それ以外にもどう見てもゴマ団子にしか見えない食い物に食いついたり、杏仁豆腐にしか見えない食べ物を売っている屋台に突撃したり、どう考えても(オーギ)玉子(ョーチィ)(台湾の夜市ではポピュラーなゼリーデザート)にしか見えないジェル状の食べ物を試食したりした。


 そして5日目。朝一で一度帝国領内を経由するために王国からの出国手続きと帝国への入国手続きをする。街の北東に位置する門には両国の兵士が詰めており、入出国処理を同時に行えるのだとか。

 この大型馬車で甲冑とか積んでいるので時間がかかると思い朝ごはんは待っている間に久々のおにぎりである。ああ、白米美味い……。

 ちなみに、ご厚意で泊まっていた宿から少し米を分けてもらった。これで当分は乾燥パン生活からはおさらばできそうだ。


「おい、検閲終了したぞ。あとはギルドカードの提出を」

「あ、はいはい。これね」


 王国騎士の通訳で帝国騎士とコンタクトを取り、王国の出国手続きと帝国への入国手続きが同時に行われる。


「よし、通っていいぞ」

「はーい。ご苦労様~……とっとっと。ちょっと聞いていい?」

「なんだ? まだ何か用か?」

「帝国デさ、コメの産地を教えてほしいんだ。俺、コメ好きで……」

「なんだ、そういうことか。一番有名なのは帝都の一つ手前のコーエンだが……貴様が行くルートならノースフリードへ向かう街道にある……ルーグ村じゃあないか? 多分売ってくれると思うぞ」

「サンキュー、じゃ、今度こそ」


 地図に印をつけてもらった俺は今度こそ王国騎士と帝国騎士に別れを告げて顔面スターズに前進の指示を出す。


 ……ああ、コメだコメ!コメを買い、コメを食すのだーーーッ!


おまけその1ー テレパシー ー


 ……ああ、コメだ、コメを買い、コメを食すのだーーーッ!


 そのころ、エルフの大森林のログハウスでは。

 

「あれ? 今先輩が物欲全開の雄たけびを上げたような!?」

「新田……根拠は?」

「ない! だけどなんかそう感じた!」

「そもそも、先輩ここ1か月連絡すらよこしてきてないけど」

「トランシーバーの存在忘れたのかな?」


新田がテレパシーを感じていたという。


おまけその2ー もしも馬車を引く馬が普通の馬だったら ー


「えーと、お前はアグノーじゃなくてシロ? え、とこっちはクロじゃなくてブラウン……だああああああ! もういい! 全員、前え進めー!」


 数が多すぎて馬の名前を覚えられずにいた。


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