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第76話 ロマンは正義

タイトルがどうしてこうなった案件だこれ…。

 戦後処理が終わってから数日後。俺が1人で(なんとか)歩けるようになり、さらに1週間ほどしたころ。俺たちはやっとシュベルツィアに戻ってきた。

 いったん街に行くのは後にして、俺たちはまず持ち運びしていたログハウスを組み立てるとともに、増設を始めた。王国の騎兵隊が援軍にやってきて、計50人で5日かかってできたのは、地下4階、地上2階になる「とある」施設だった。地下からは地上へとつながるトンネルまで作った。これもロマンというやつだ。


 そして、その地下には、今、一体の巨人が鎮座していた。


「それで…なんでそれを選んじゃったんですか……」


 俺の隣で新田が呆れた顔をする。しょうがないじゃん、これは漢のロマンだ。しょうがないんだ、うん。


「あれだけ報酬はより取り見取りだったのに……! なんで、こんな……!」


 手を額につけてうなだれる新田。それに対して、ステフはご機嫌。サリーも興味津々だ。

 ステフは既に巨人の肩までよじ登っており、サリーは足周りを探検中。バーニーはお茶を入れております。


「ししょー、今度動かしてみていいー?」

「試験運転の時だけな……」

「私だって、ロマンはわかりますよ。男の子は、オタクはこういうの大好きですものね……。私も弟いるからわかりますよ。わかりますけど……」


 わかりますけど……なんだよ。ロマンだろ、一番の報酬だろ。


「だからって、なんでパワードスーツを選んじゃうんですか、こうやって置く場所まで作ってもらって、施設設備も王国が全部やってくれたからいいものの……!」


 つまり、目の前に鎮座している巨人というのは、共和国製のパワードスーツ。それを3機、人体着脱式と人体搭乗式自動変更機構搭載型の量産は滅多にされない機体。それが俺の選んだ報酬だった。


「いいじゃん、聞いた話じゃ共和国でも指揮官機クラスしか使ってないっていうし」

「そうではなくて!」

「それに、今回のために発注された機体、ほぼワンオフ機だ。整備性こそ下がってるけど、従来の王国所属パワードスーツより出力は単純計算で40%上、機動性も極めて高い」

「いえ、それはいいんですけど……」

「最新式の魔力同調機構による機体制御は日本のガン〇ラすら凌駕するという!」

「だからって、なんで3機なんですか! っていうかそもそもこれを普通選びます!? あの中から!」


 なるほど。根本的な問題か。どうしてこれを選んだかが知りたいのね。それは、簡単なこと。


「ロマンだからさ!」

「それはさっき聞きました……。本当のところ、どうなんですか? なんで追加装甲とか、研究道具っぽいのが搬入されてるんですかねぇ……」

「あ、知ってたのね」

「しかも、王都出る前に馬車で研究費がどうだとか言ってましたよね……? 答えてくれないんだったら今すぐここで魔法を撃ってもいいんですよ……?」


 そう言った新田は、手の上に火の玉を作り出して、押し付けてくる。それを見て俺は命の危機を感じたので、しょうがなく説明を始める。


「いやね、実は国王が『これをワンオフでもいいから、性能を従来の3倍程度にしてみてくれない? 研究費とか施設設備はこっちでやるから。まあ、これはおまけみたいなものだから、ついでに』って押し付けられた。厳密にいうと、これは報酬じゃなくて、押し付けられた“おまけ”だな。あ、ちなみにこのエルフの大森林の一部区域は実験場として自由に使っていいってさ」

「そんなのでいいのか、王国……」


 今の説明をある程度聞いた新田がそうつぶやく。うん、俺もそう思うけどね。ちなみにだが。


「あのままついていった場合、最悪爵位を渡されるところでした」

「うわぁ……」


 何かを察した新田がこちらに向かって敬礼をしてくる。ようやく、俺が苦労していたことをわかってくれたのだろう。


「それで、結局報酬には何を貰ったんですか?」

「ああ、それはこれ」


 俺はポケットから1枚の紙を取り出す。そこには金色の王国印が捺印されている。


「これ、なんですか?」

「王国の商業許可証。これを持つことで王国内と、その同盟国で商売をすることが可能になるという代物。本来は、一定数の税を納めて、書類審査、面接等々を通らないとできないのよねー。それを税を納めず、甘めの書類審査だけで通してくれた……と」


 手順とか、審査の厳しさを考えると、特上の報酬だと思う。それ以外だと、爵位とか、土地とかだったし。領地もった冒険者とかいないし……。


「先輩は、それ持ったということは、店を開くんですか?」

「いや、地球に帰る手がかりを探すときに、これを持ってればついでに行商もできるだろ? 旅をするとき用だな」


 いつか、この地を離れて本格的に帰る方法を探すときの投資というわけだ。まあ、それまでに何か店を出すのも悪くないな…うんうん。


「とりあえず、明日からはパワードスーツ改造だな……。魔力が回復するまでは、OSを作るとしよう……」

「え? OS……? OSから作るんですか?」


 もちろんその通り。

 というのも、従来の魔力同調機構では、操縦者の集中力や、魔力が切れた瞬間に動かなくなり、魔力の質によっては、変な動き方しかしない。

 俺は、そこを電力バッテリーを搭載し、OSと魔力同調機構のW制御で精密で繊細な行動も可能にしようと思っている。また、従来のパワードスーツには搭載されてない飛び道具も実験的に付ける。

 ワンオフの専用機はロマンだ、ロマン。


「それに、OS作るのは一度やったことあるだろ?」

「あれはVRのやつですが……」

「一応、あのソフトは起動することはわかってるだろ? こっからはPC部員の実力を示すとき!」


 時は来た。PC部の技術力を見せる時が。見てろよ野郎ども、お前らの言ってた便利屋が地球のそれの比じゃないものを開発してくれるわ!!



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