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第7話 能力は、器用○○!?

 俺たちは、クマキチさんといったん別れ、今後の身の振り方を考えていた。案は2つ出ている。

 1つは、冒険者となり、各地を旅して、元の世界に帰る方法を模索する。もう1つは、行商だ。これも各地を旅して、手掛かりを探す。

 その2つまで絞ったのだが。……だがっ!


「効率的なのは、行商なのだがっ……!」

「魔法も使ってみたいっ……!」


 俺と新田は悶えていた。せっかく異世界に来て、魔法も生で見たのだから、やりたい。ぜひとも魔法を使って、戦ってみたい。

 しかし、それには命の危険が常に……いや、行商もそうだけど。


「「う~ん……!!」」


 揃って腕を組みながら考えているがなんにも浮かばん。地道に働くのは嫌いだし、かといって命の危険が付きまとうのは嫌だし。

 どうすればいいんだろうか。


「だったら、冒険者やりながら行商やればいいじゃないすか」


 なんて言い出したのは赤坂だった。


「それができないから困ってんじゃないかよぉ!」

「いや、でもこのラノベによると『冒険者ギルド』と『商業ギルド』があってですねぇ。どっちにも登録できるじゃないすか」


 いや、この世界にそれがあるかがわからないから困ってんじゃないか。


「もう、面倒くさいから冒険者になりません? 行商のときに、昨日みたいなのに襲われてあっけなく命落とすより戦って死んだ方がましですよ」


 こいつ、死ぬこと前提で話してやがるぜ。

 だが、言ってることはもっともだ。なすすべなく殺されるのは嫌だ。だったら、ちゃんと戦って果てた方がいいと。だったら、俺もそれは賛成。あとは……。

 

「新田はどうする?」

「当然。魔法が使いたいし、運動苦手ですけどこういうのはやりたいので賛成です。運動できないって弟に笑われたので、見返す材料にしてやります」


 この世界に君の弟はいないけどな?

 とにかく、満場一致で俺たちは冒険者になることになった。


  〇 〇 〇


 俺たちは、30分ほど街をさまよって、とうとう冒険者ギルドについた。

 冒険者ギルドというからにはかなりいかつい場所かと思ったが、外見は普通の民家となんら変わらない。両開きのドアを開けて、中に入る。なんだか酒臭い。アルコールのにおいが充満している。中ではやはりというべきか。スキンヘッドにモヒカン、いかつい暴力団風の冒険者たちが昼間から酒を飲んでいた。


「換気とかしないのかよ……」


 酒に弱い俺はこれだけで酔いつぶれそうだ。意識をなんとか保たせて奥のカウンターに向かう。


「う……えーと、冒険者になりたいんですが……」

「ああ、それなら入り口横のドアを開けたところにカウンターがあるよ」

「あ、そうですか。ありがとうございます……あと、換気をおすすめします」


 俺はアドバイスとお礼を言うと、入り口横のドアまで行き、そこを押す。すると、かなり綺麗な装飾の施された、真っ白い空間に出る。

 文字は読めないので、適当なカウンターで冒険者登録はどれだと聞き、右奥だと教えてもらう。


「さて、行くか」


 赤坂が、酒場の酒の匂いで死にそうな顔になっている。それと反比例するように、新田の顔は健常者そのもの。こいつ、酒強いのか。

 俺は千鳥足になりながら、右奥のカウンターにたどり着く。


「すいません……冒険者になりたいんですけど」

「あ、はい。ご登録ですね。あと、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないと思います……酒が苦手な人用に、ここ直結のドアをつけることをお勧めしますよ……」

「はぁ」


 なんか、さっき治療院にいたシスターに声が似ているな、なんて思って受付嬢の顔をみたらさっき 治療院で治療してくれた例のシスターの姿が……。

 どうやらこの世界、普通の人間が瞬間移動できるらしい。


「さっき治療院にいませんでした?」

「はぁ。多分、姉と間違えたんですね。私たち双子ですので」

「あ……そゆこと」


 現実では双子など見たこともないので戸惑ってしまった。まったく頑張りすぎだろDNA、つーか遺伝子情報よ……。


「えーと、後ろのお二人も?」

「「はい」」


 それを確認すると、受付嬢は3枚の紙を出してきた。うむ、なにが書いてあるかなぞわからん。


「では、ここに氏名、生年月日、年齢、職業適性、魔法適正を書いてください」

「「「は?」」」


 わからないことがいっぱいだ。

その1、職業適性とはなんぞや?

その2、魔法適正はどこでわかるの?

その3、この世界の文字書けない……。


「あの~、書くのはいいんですけど、問題がありまして」

「はい?」

「俺たちは古代精霊言語しか書けないです。残念ながらそういう民族でして」

「いや、今何気にすごいこといいませんでした?」

「言ってないです。あと、職業適性と魔法適正はわからないんですけど」


なるほど、そういうことか、と受付嬢はうなずいて、俺たちを奥の部屋へ案内した。


「では、登録の前に魔力があるか、職業適性があるか、魔法適正があるか見させてもらいます。測定代金が発生しますが、これを書かないと、というか適性がないと冒険者できませんから。あと、代筆のサービスがあるので大丈夫です」

「「「はぁ……」」」


地球人の俺たちに魔力などあるのか? そこをまず聞きたい。


「では、職業適性と魔法適正について説明しますね」


 職業適性とは、簡単に言えばどの武器を選べば強くなれるか、どの武器に適性があるかというもの。適性はランク分けされており、上からSS、S、A、B、C、D、E、F、G となる。GとFは言ってしまえば適性がないのと同じ。上に行けば行くほど一流になる素質を持っている。ただ、素質だけなので結局鍛錬をしなければならない。

 次に、魔法適正。これは単純。どの属性の魔法が使えるかだ。これも職業適性と同じくランク分けされており、ランクの分類も同じだ。


「では、早速やってみましょう」


 測定代と登録料は問題ない。なぜならクマキチさんからある程度の金を借りてる……いや、押し付けられたからだ。


「誰からいく?」

「ここはぁ……」

「やっぱりぃ……」

「「先輩からですよね!」」

「だと思ったよ」

 

 俺は予想通りの答えにある意味ほっとする。そのまま受付嬢が立ってる場所に行くと、テーブルがせり出してきて(!?)、そこに載ってる左側の魔石に触れてくれという指示のもと、魔石に触れた。そして、俺が触れてからものの数秒で魔石がカラフルに輝きだした……。


「これは!」


 受付嬢さんがかなり驚いている。つまり、これはチートの前触れかっ!?


「かなりすごいことです! ほぼどの職業適性もCくらいの輝き方! 魔導士と騎士は適性がありませんが。一番高いのはアーチャーでBですか……まあ、言ってしまえばどれも2流まではいけますが、1流になる一歩手前というかなり微妙なところですが」


 なんか所々グサッと来るなぁ!? ここでもTHE☆平均MAN発動ですね。なんか悲しい。


「あ、落ち込まないでください! 騎士と魔導士以外なんにでもなれる万能な方なんですよ? まあ、騎士と魔導士ない方初めて見ましたが」

「ぐ……」

「ああ! すいません! 私って思ってたこと口に出しちゃう人で!」


 ズンと落ち込む俺は、早くも部屋の隅に移動して、指で円を描き始めて……せ、世界が……暗転していく……。


「これは最終回のBADENDですか!? ま、まだ魔法適正の測定があるんですから……ね?」

「そうですよ? まだそんな器用貧乏と決まったわけじゃないですから……」


 女子2人に諭され、再び俺はもう1つの魔石の前へ。

 どうせロクなのでないんだろと思いながら、魔石に触れると、今度は無色透明に光り輝く。そのあとで、6色に申し訳ない程度に光った。


「えーと、つまり支援魔法の使い手ですね。あと、申し訳程度に、一般人程度に全魔法の適正が……っと」

「つまり、俺は弱いと」

「いえ、支援魔法がBの人って、なかなかいないんですよ? 自信持ってください!」


 いや、もうとっくに自信なんて捨てたさ。特にあなたのせいでね。


 続いて、新田が魔石の前に立つ。そして、触れるとまばゆい紫色の光が部屋全体を包んだ!


「「な……」」

「これ、すごいの?」

「すごいどころじゃないです! 天才そのものです! 魔導士の適正がAですよ! しかも、多分Sに近いくらいです! 魔導士Sなんて正直言って勇者くらいですから、すごいことなんです」


 受付嬢が鼻息を荒くしている。それほどすごいことなんだろうなぁ。


「では、次にこっちの魔石にどうぞ……」

「あ、はい」


 新田が、今度は魔法適正の方の魔石に手をつけると同時に、赤、青、黄色、淡いピンク色に輝いた!


「「なぁ…………」」

「これってすごいの?」

「ほんと、あなた何者ですか!? 火と水と土、回復の4つがAって……」


 あ、わかった。こいつチートだ。うん、こいつチートだわ!

 自分のすごさがいまいちよくわかっていない新田は首をかしげながら戻ってくる。何が起こったかわからなそうな顔しやがって……一発殴りたいぞ。


「じゃ、最後に赤坂」

「どうせ、俺は新田みたいにすごくないけどな」


 いや、あれの後にするのはちょっと気まずい。それは俺もわかる。


「じゃあ、この魔石に手を触れて……」


 赤坂は言われた通りに手を置くと、銀色に光り輝いた!うぬ、眩しいんじゃ!


「これは……」

「すごいです! 今度は騎士がA! 100年に1人の逸材と言ってもいい輝きですよ!」


 あれ、こういう時「普通ですね」ってなるんじゃないの?

 あ、なにあいつらムカツクわ。なんですごいのに「は?」って顔してんの!? 一番弱いの俺かよ!


「じゃあ、次はこの魔石に」


 赤坂は魔法適正用の魔石に手を置く。今度は赤と緑に光り輝く。これも、眩しい!


「今度は……」

「これもすごすぎます! 火と風がAって……みなさん本当何者なんですか!?」


 ……わかったよ、受け止めるよ。俺はどうせ、普通の人だよっ!


「と、とにかくギルドマスター呼んできますね!」


 そういうなり受付嬢さんは奥の部屋に走って行ってしまった。

 あれ……そういえば俺たちの登録ってどうなるの……?


おまけ ー冷徹ー



「もう、面倒くさいから冒険者になりません? 行商のときに、昨日みたいなのに襲われてあっけなく命落とすより戦って死んだ方がましですよ」


 こいつ、死ぬこと前提で話してやがるぜ。


「先輩、さっき死にかけましたよね?」

「……はい。おっしゃる通りです」


 冷徹な赤坂君のツッコミにより場の空気は冷蔵庫並みに冷えたとさ。

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