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オタクで変人なPC部員は、異世界で冒険者になったら器用○○でした!?  作者: 古河楓
第4章 PC部員たち、戦争に巻き込まれる
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第68話 リースキット追撃戦!

 援軍に来た青龍&カエデのおかげであっさりと飛竜を殲滅することができた。となれば、次は第4陣――赤坂たちの救援に行かねばならない。


「それで、カエデと青龍はどうするんだ?」

「もちろんこのままグランツに攻め込みますよ~!」

『久しぶりにストレス発散できるしね』


 うっわ、他国に攻め込むのがストレス発散とかちょっとやばいなこのドMドラゴン。なに、ドSもいける人? 二刀流ですか?


『だって、あんな洞窟の中にいれば暇になるじゃん、ストレスたまるじゃん』

「あ、はいすいませんでした」


 確かにあの洞窟にずっと入っていればそうなるわ。でも、外にいられるのもちょっと……。なんつーの、危ない。国をつぶすのがストレス発散とか言ってるドラゴンは120%危ないに決まっている。

 でも、仲間にすればものすごく頼りになる。適当に頼んでおけば、制空権は確保できる上、姿だけで敵をおびえさせることもできるし、ブレスで凍らせられる。

 なぜか簡単にとっ捕まった間抜けな後輩兼パーティーメンバーを助け出すのにはこれ以上ない援軍だ。


「よしわかった感謝するからさっさと第4陣殲滅してきて」

「なんで棒読み!? しかも早口!?」


 いや、もう俺の出張んなくなったから。あとは青龍突撃させれば万事解決じゃん。

 一国vs青龍だったらあきらかに青龍じゃないか。


「まあ、俺たちもほどほどに頑張るさ」

「と、とりあえず第4陣を殲滅しに行きますから!」

「ああ。青龍だけで十分だとは思うが、俺たちも第4陣を叩くぞ! 全軍行動開始!」


 どうせいらないだろうけどと思いながら、全軍に指示を出す。俺も【フライ】を発動してまっすぐに第4陣討伐隊の救援に向かう。

 俺の後ろからは残存兵力が馬に乗って、徒歩で、走って、ついてくる。青龍もわざわざ俺の後ろに追随する形をとる。

 ってか、俺の後ろにいるんだったら乗せろ。もうちょっとで魔力切れるんだよ。

俺は速度をゆっくり落として、青龍の頭に着地。そこからジャンプしてカエデの後ろに腰を落ち着ける。


「第4陣を落としたらどうするんですか?」

「決まっている。敵の本拠地に直接乗り込み、制圧する」


 ぶっちゃけて、敵の21万を倒してそのままグランツ帝国に攻め込むのは得策ではないが、この機を逃せば、絶対に再度攻め込むことは不可能だろう。

 それに、こちらはチートを何個も持っている。青龍、祈祷の時雨、ステフのゴーレム君、赤坂等々。死傷者もそれなりに出ているから、動ける兵と最低限の衛生兵を連れて乗り込もうと思っている。幸い、魔導士隊のほとんどが無傷。攻城兵器は持ってなくとも、火力は出せる。パワードスーツ隊がほぼ全滅しているのは悔やむところだが。


「もうちょっとで第4陣とうちの隊との交戦ポイントですよ~」

「相分かった」


 まだ力が入りにくい左肩にバズーカはやめて、代わりにナイフを握る。


「な、なんだ!?」

「青龍だ!青龍が出たぞー!」


 交戦ポイント入った瞬間、敵兵がショックを受けたのがわかった。いきなり神話に出てくるドラゴンが現れたのだから。しかも、その青龍に乗っているのは王国の人間。つまりは、王国の味方ということになる。


「それじゃあ、適当に暴れてくれ。味方は巻き込むなよ?」

「はーい!」

『それ得意だから大丈夫!』


 青龍の「大丈夫」は大丈夫じゃなさそうで怖い。少し寒気を覚えながら、青龍の背中から地上に向かって前傾姿勢で飛び降りる。


「【マテリアルブースト】、【チェンジマテリアル】」


 なけなしの魔力で、武器を強化する。これで、いくら短剣といえども、鎧など軽く貫通させることができる。まあ、すぐに大剣に変えるんだけど。


「はああああ!!」

「なに!?」


 態勢を起こして、落下地点にいる敵兵の鎧に大剣を振り下ろす。落下速度も加わった一撃は、目の前の騎士を鎧ごと、左右対称に断ち切る。

 人の肉が、骨が斬れる間隔が途切れた瞬間、目の前で血が周りに広がっていく。吐きそうだ。

 だが、今はそんなことにかまっていられない。


 再び、短剣形態変えて、俺を包囲しようとしている敵兵どもに突撃する。


「死ね、悪魔あああ!」


 人を悪魔呼ばわりして突撃してくる騎士の突撃を避けて、こちらに向けられていた盾で壁キック。上空に舞い上がると、そのまま次のターゲットに接近。また盾を出してきたので、そこに片手をついて身をひねり、すれ違いざまに投げナイフを首筋にあてる。

 崩れ落ちていく敵兵を見ながら、正面にいた2人目の兜をけってさらに上空へ、とんだ先にいた3人目に短剣を一閃させて、鎧の上から頸動脈を斬る。それを蹴って、獏注しながら地面に着地すると、魔法で強化した靴の瞬発性を利用して、先ほど兜を蹴った2人目に急接近して、わき腹と右肩をほぼ同時に斬り刻む。


「まだまだ……!」


 バズーカを右肩で構えて、トリガーを引き絞り、弾を放つ。それと同時に左でナイフを構えて突進。爆風で巻き込めなかった集団をすれ違いざまにどんどん倒していく。


(これでも足りない)


 もっと早く、さらに早く。より正確に。もっと強く、もっと……もっと……!


 自分でも、どんどんとスピードが速くなっていくのを感じる。魔力が付きそうなのに、なぜか力が、威力が違ってきている気がする。

 まるで、自分の内部に秘められていた力が、覚醒したような、そんな感覚が徐々に広がっていく。


「な、なんだ……」

「悪魔か!?」


 そんな俺の姿を見た敵兵が後退していくのがわかった。だが、俺は逃がす気はない。一人残さず、殺ってやる。


「はぁぁぁ!」


 弾丸のような速さで、後退していく敵兵を捉えると、その体に容赦なく刃を突き立てる。

 突き立てたところからは血が噴き出るが、そんなものには構わない。抜きながら蹴り倒す。そして次の敵に肉薄しては、それを繰り返す。刃が走ろうたびに血しぶきが舞い、バズーカが火を噴くたびに敵兵が宙に舞う。


 周りにいた敵兵の多くは我先にと逃げ出していく。しかし、それはすぐに悲鳴に変化する。


「逃がさないよ!」

『はい、凍ってね~♪』

 

 逃げた先に立ちはだかる青龍が、広範囲のブレスを発射。味方を巻き込まない正確な攻撃は、敵兵を氷の壁に閉じ込める。その中で、どんどんと人間氷漬けに加工されていく。


 それを見た敵は、今度は青龍とは反対方向に走る。しかし、その方面からは、馬の蹄の音が聞こえてくる。まもなく現れたのは、魔導士を中心とした塹壕で戦っていた防衛軍の本軍。死傷者を除いても、その数8万強。後ろには、高くそびえたつ生物…ジャイアントゴーレム(ステフ所有)が世紀末間を醸し出し、その足元にも軽く1000は超える従属魔獣からなる群れが。

 それを見て唖然とする兵は、必死で抑えていた赤坂率いる別動隊に押し返され、陣形も崩れていく。


『この地にたたずむ光の精霊よ……われの力に呼応し、太陽の輝きにして悪人百機を討たせ給え! 【サンライトブラスター】! 』


中二病っぽい詠唱をして、退却しながら陣を整えようとした敵に光の柱を落としたシルク。


「サリー!」

「うん、バーニー」


 退却に遅れて孤立した敵をどんどん倒していくのはサリーとバーニー。ステフは、ゴーレムの頭の上からどんどん爆撃をしていく。


 10万もの大軍は、最初こそ押していたが、徐々にその数を減らしていく。合計12万による総攻撃に、敵第4陣はなすすべもなく壊滅していく。

 俺も剣を振るい、自分の中から湧いてくる未知の力を暴走しないように力技で制御しながら、なぜか減らない魔力を行使する。


「まだだ! まだぁぁ!」


 バズーカが敵の陣の中央に当たる。人が舞う。次の敵に狙いを定める。トリガーを絞る。


 無慈悲で非人道的な行為とはわかっている。虐殺と言ってもいい。だが、これでも俺の怒りは収まらない。大切な仲間を奪われて、命の危機に今も苦しんでいるであろう“やつ”を思えば、こんなもの甘すぎる。


 そんなことをやっているうちに、敵が一目散にグランツに向かって走り出した。完全に戦意を喪失し、指揮官も撤退することを宣言したのだろう。

 だったら、追撃するまで。


「全軍、追撃だ!」

「しかし、騎士が逃げる敵に後ろから刃など……」


 騎士たちは口々に騎士の誇りだ、あーだこーだ話し始める。だから、言っているだろ。


「誇りだけで、何が守れるんだッ! 誇りだけで飯が食えるか! 何も守れないんだよッ!」

「「「………」」」

「力がある時に敵を討つ、鉄則だろ! 守りたいものがあり戦う意思があるんだったら討て! さもないと次に討ち取られるのは自分たちだぞ!」

「しかし!」

「しかしもくそもあるかよ、やらないんだったら俺だけでやる。だが覚えておけ、この機を逃せば、もしかしたら自分たちの命でその対価、払わなくちゃいけなくなる」


 渋っている騎士どもを見ながら、【フライ】で上空に浮き、加速して敵軍を追う。

 インカムをつけたままなので、オペ子を通じて、置いてきた騎士どもの会話が聞こえる。


 そして、俺が敵軍を捉えたころ。


「ぜ、全軍突撃せよ! 総司令1人で戦わせては、王国騎士の名が泣くぞ!!」


 その声に続いて聞こえてくる騎士の声。あまりにもうるさかったので、インカムを一回外す。

 ……鼓膜破れるかと思った。


 間もなく、後ろからものすごい地響きが聞こえてきた。ジャイアントゴーレムが全速力で走ってきて。その上には青龍が。足元には狂ったように雄たけびを上げる騎兵。


「総司令に続けぇぇ!」

「俺たちの国を襲ったやつらを生きて帰らせるなぁぁ!」


 その後、俺たちリースキット軍は1万近い兵を30分で攻略。敵兵1万のうち、実に9割が降伏し、捕虜になった。

 この“リースキット追撃戦”は、後にこの王国の歴史の教科書に載ることになる。




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