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オタクで変人なPC部員は、異世界で冒険者になったら器用○○でした!?  作者: 古河楓
第3章 PC部員たち、社会の上下関係に巻き込まれる
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第45話 赤坂とシルクの討伐デート 1

                 ー赤坂sideー


 先輩たちが青龍の見た目と言動のギャップでカチカチに固まっているころ。

 赤坂とシルクは国境付近のとある村に向かっていた。


「今から行く場所にはキングスコーピオンが出没しているらしくてですね。キングと言われてるのにそこまで強くないので! それで金払いがいいんですよ!」

「ああ……うん」


 俺は御者台に乗りながらシルクの言葉に耳を傾ける。そして、大きくため息をつく。


 今回、この2人が討伐しにいこうとしている魔物が、ゴブリンロードと同等……いや、それ以上の強さであるからだ。


「あれだよね……キングスコーピオンって……」

「そうです! 尻尾からの毒攻撃とはさみをぶん回すことしかできない“あの”キングスコーピオンです!」


 ……冗談じゃない! と心の中で叫ぶ。

 キングスコーピオンはサソリのような魔物で、尻尾の針から毒を分泌し、そのまま相手に突き刺すだけではなく、毒液を飛ばしてくる。さらに毒を持った手……はさみのような器官で挟んだり、ハンマーに見立てて振り下ろしたりするなど、かなり危険なのだ。

 そのため接近戦を挑む者は少なく、遠距離から魔法で倒す者が多いと聞く。

 遠距離攻撃はシルクの精霊魔法があるからいいと思うが……どうも気が乗らない。


 それを言えば……。


「なに言ってるんですか? 私に向かってきた攻撃だけを防いでくれればいいんですよ! アカサカさんならできます!」

「いや、そう簡単に気うけどね……」


 俺が過去に読んだ本には、毒は盾や鎧など使い物にならないほどの効果があるとされている。

つまりは、一度でもくらったらもうそれで人生すら終わりになるわけで。それを赤坂は言いたいのだが、取りつく島もない。


 結局、自分の意見を言うのをあきらめるしかなかった。


  〇 〇 〇


 それから馬車を走らせること丸4日。赤坂とシルクはやっと国境付近にあるとある村にたどり着く。

 やはりそこにも関所がある。これを見て、俺はぬかりがないなと思う。

 というのも、このリースキット王国はこの大陸屈指の商業国であり、物流の中央地点。ならば自然と街道や村を通る者が多い。つまり、関所を設置して、通行税を取れば、それだけで大きな収益を集めることができるということだ。

 もっとも、これは大川がこの間ボソリとつぶやいていたのを偶然傍受していただけだが。


「おい、止まれ! というかここを通るな! 今ここではキングスコーピオンが確認されている! 危険だから……」

「だから、討伐しにきたんです!」


 こちらにむかってフルフェイスの兜をかぶりながら怒鳴ってくる門番の騎士に向かって、シルクは依頼書を取り出す。ついでに、もう1つ……シュベルツィアギルドのギルドマスターからの推薦状等々もだ。


「これは……信じられん。お前みたいなのが精霊魔法を使えるのか……?」

「こんなのとはなんですか! 人を見た目で、第一印象で全て決めちゃダメだってオオカワさんも言ってましたよ!」

「オオカワ……英雄オオカワ、か。なるほど」


 何故か先輩の名前を聞いて納得する門番の騎士。ここに先輩がいたら「なんでだよ!」とツッコミが入ったところだろう。というか普通それで納得すんの?


「それに、このアカサカさんはオオカワさんのパーティーで活躍するほどの優秀な騎士なんですよ!?」

「なんだと!?」

「おい、ちょっと……」


 そんなことを唐突に言われたから慌てて否定しようとする、本人は、ただの馬鹿で、活躍もくそもないと思っているのだから、即座に訂正したいところだ。

 だが。シルクの熱弁はそれで終わらなかった。


「アカサカさんはかのゴブリンロード戦で私を毒矢から身を挺して守ってくれましたし、そのあと敵をとるかのようにゴブリンの群れに突っ込んで、疲れ果てて倒れるまで奮闘して、オオカワさんを陰で支えていたんです!」

「いや、あれは大川先輩の変換ミスで酔ったらしくて……」

「それ以外にも、私なんかの買い物に付き合ってくれたり、料理を食べてくれたり!」


 どんどんと述べられる赤坂のいいところシリーズ。それは戦闘能力ではなく、どんどんと人間性になり、それからどうでもいい些細なことに移っていく。

 兜の舌からでも門番騎士のイタい者を見る目を感じたので、すぐにシルクを止めようとするが。


「黙っててください! 今いいところなんです!」


 という一言で一蹴されしまう。その“いいところ”を言ってる張本人からの申し出をこれほどバッサリと切り捨てる者はこの人以外にいないと思うくらいのバッサリ加減である。

 結局。


「もういいよ! 好きになんでも言えよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 諦めて、そう叫ぶしかないのだった。


  〇 〇 〇


 そんなころ、青龍村では……。


「おいおいおい……」

「これ、マジですか……?」


 青龍がいる祠。そこで行われる1日1回の大仕事。それを見学していた大川と新田がドン引きしていた。


「あ、ああ! そこ! そこだよぉぉぉぉぉぉ!」

「今日の青龍様はやっぱここだと思ったよ~」

「ああああああああ! 気持ちえええええええ!」


 青龍はゴロンとひっくり返り腹を完全に見せており、そこに数人の亜人が取りついてうろこを拭いている。

 その時に発せられる青龍の声! 声!!  声!!! そこにかなりの問題があるのだ。

 しかも青龍の上には子供連中が集まっており、腹の上でぴょんぴょん飛ばれても、「ええ刺激やわ~」と言ってしまっている青龍君は……正直、控えめに言って……。


「ドMだだな……」

「ドMですね」


 結局、ドMという結論にいたったのだった。





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