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オタクで変人なPC部員は、異世界で冒険者になったら器用○○でした!?  作者: 古河楓
第3章 PC部員たち、社会の上下関係に巻き込まれる
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第44話 はじめての旅行 3

「どーもー、青龍でーす! よろしくー!」


 街の中心部にある大きな祠。その中に青い巨体を持つ生物がいた。顔はまさにドラゴン。いかつい。牙は口に収まっておらず、それの鋭さはナイフ……いや、ぶっといレイピアだ。

 尻尾はまるで丸太のようで、それをぶん回せばシュベルツィアは崩壊しそうだ。

 翼なんてジャンボジェットのようだ。あれが一回羽ばたいた衝撃でガラスなんて粉々になっちゃいそうだ。

 そんな、だ。そんな青龍様の自己紹介の第一声が、これだ。


「「は…??」」


 見た目と言動のギャップに、俺と新田は思わず凍り付いてしまった。だが、これはしょうがないことだ。俺たちオタクの日本人は、龍といえば「うむ」とか「余は~」とかいう王様気取りの生物だと思っていたのだから。

 それが、そのイメージが。一瞬で崩れ落ちてしまったのだ。


『あれ? 大丈夫~? おーい』

「………」


 頼む。そのしゃべり方をやめてくれ。

 なんというか、その。口調と言いテノールだけどアルトよりの声は、おかまを連想してしまうから。


「そっかー、ししょーたちは青龍と会うの初めてだもんね~。どう? びっくりした?」


 いや、びっくりしたどころの話じゃないわい!


「……」

「あ、やっぱりびっくりでしょー? わたしも初めて会った時はボケーってなったもん。でも慣れたら親しみやすいんだ~」

「……だろうよ」


 ようやく口から単語を発音することに成功した。今まで出そうで出なかったからな。


『あ~、初めてあった人によくそう言われてるよ~』

いや、普通そういうだろ。まあ、そういう固定観念に縛りつけられているのはよくわかったけどさ。うん、でも。


「ほんと、軽いな~……重そうなのに」

『お、上手いこと言うね~! 確かに体重は20トンはあるよ~!』


 うわ! こいつ個人(個龍)情報自分から流しやがった……俺がぜったいにしない行動。すっげぇな。

 というか、日本の戦車の攻撃ですら傷つかなそうなそのうろこがあるからもっと重いと思ってた。青いうろこは金属のような光沢があって、綺麗だ。


『そりゃそうだ! 毎日磨いてるし、もらってるし!』

「いや、自分でやれよ……」


 流石は龍。自分でも少しはやるけど他は世話してもらってるのか…そこは普通の龍みたいに王様気取りだな。


『違う! 寝てるときに磨いてくれてたり、届かないところだけやってもらってるの! 聞いたところによれば、「街のシンボルはいつもきれいに!」だって』

「ああ……」


 その言葉を聞いて、少しだけ俺は青龍に同情してしまった。なぜって?


 ……こいつ、この村の観光資源にされてるからだ。シンボル=見世物。そういう図式がなりたっている。

 なんか、可哀そう。


「ところで、そちらのお嬢さんは大丈夫なの~? おーい?」


 俺の横では、以前新田がボケーっとしている。相当ショックだったんだろうか。

 新田の間で手をひらひらさせてみる。うん、反応がない。放心状態になっとるがな。今、なにしても気づかれへん気がする。


「ししょー……何考えてるの?」

「いや、こいつ、今前から攻撃されても気づかないだろうなって」


 おっとっと、顔に出ていたか。これは失敗したな。


「はっ! ここは……」


 お、やっと気が付いた。情報収集のつもりなのか、新田は辺りをキョロキョロし始める。そして、目の前に巨大な青いドラゴンがおり…鋭い眼光が新田を貫いた時。


「う~ん……」


 いきなり泡を吹いて倒れてしまった。


「うぉぉぉい! そこで倒れるか!」


 おそらくだが、でかいドラゴンと会敵してしまったと思い込んだのだろう、直前までの記憶がとんでいた可能性もあるし。


「……まったく、しっかりしてくれよ」


 そういいながら、俺は新田を抱えて、その場を後にする。


「あ、じゃあね~! 青龍祭まではいるから~」

『お~う! いつでも来いよ~!』


 後ろでは青龍が器用に羽を左右に振っている。どうやってるんだよ、あれは。


 そんなことを思いながら俺たちは、今日泊まる宿を求めて村に戻った。


   〇 〇 〇


 そのころ。リースキット王国のお隣、グランツ公国のとある都市。そこにある豪華な屋敷には2名の男の姿があった。

 1人は無精ひげを生やし、いかにも貴族ですといった格好の男。もう1人も同じような恰好である。

 彼らは揃って机の中央に置かれた水晶を注視している。

 そこに移っていたのは、最近シュベルツィアという地方都市のようで王国の重要な商業の中継地点であるシュベルツィア近郊に現れた岩龍にシーサペント、さらには“ガルガンチュア”を持ったゴブリンロードを撃破した“英雄オオカワ”と、その仲間が移っている。


「うむ…やはり邪魔だな、この男。あいつだけでも精いっぱいなんだがな……」

「ええ、まったくもってその通り。暗殺者を送っても絶対に返り討ちに合うでしょう」


 彼らはもう一つの水晶に目を向ける。そこには王国の騎士団長にのみ着用が許されるダークグレーの鎧を身にまとい、大蛇を真っ二つにする男が移っていた。


「こっちは、人間の数でなんとかなるが、英雄の方はそうはいくまい」

「そうですね。しかし、英雄も人間。弱点はあります」

「ほう、それは?」

「ええ、ギルドに潜入させた者の言うところには、“居場所”だそうです。過去のトラウマで居場所をなくすのを怖がっているようです」


 そう片方の男が報告すると、もう一人の男の顔に悪い笑みが浮かぶ。


「なるほど。つまり、この“英雄オオカワ”の弱点は横にいる女か……」


 なるほど、と報告をした男は思う。映像でもその女は大川と共に…むしろ張り付いて行動をしていた。

 それが居場所だとしたら、楽に仕留められる。

 何故ならば、その女もマークしていたからだ。


「ほう? 接近戦に弱い……と」

「ええ。実際の近接戦闘こそ記録にはありませんが、間違いないかと。仲間に騎士が居ますし、英雄も彼女を守れる位置にいます」

「それはいい話だな。あの“英雄”とさえ離れていてくれればあっという間にチェックメイトだ」


 そう判断した彼らは、これから彼らが行う戦闘の結果を想像してみる。そこには勝利の2文字しかない。


「「フフフフ……」」


それから小1時間、その部屋には不気味な笑い語が響き、幽霊が出たと噂になったそうだ。




登場人物名鑑-12 


名前:青龍ブルードラゴン

身長/体重:13mくらい?/まあ30tはあるよね

ドM検定:1級

戦闘力:その気になればリースキット軍は壊滅する

好きなもの:おしゃべり、ほどよい刺激、鱗を磨いてもらう、子供

苦手なもの:赤龍、意味わからん人、刺激与えてくれない人

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