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オタクで変人なPC部員は、異世界で冒険者になったら器用○○でした!?  作者: 古河楓
第3章 PC部員たち、社会の上下関係に巻き込まれる
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第42話 はじめての旅行 1

「相棒! そっちだ!」

『ギュイ!』

「相棒! 【ウインドカッター】だ!」

『ギュイイ!』

「まだまだああああ!」

『ギュイイイイイ!』


 俺と新しく仲間に加わった相棒……従属魔獣になったシルバーエル―は次々と魔物をばっさばっさと倒していく。

 最初は嫌われるかと思いきや、少しモフモフしたらすぐに懐いてくれて、今じゃ自分たちでも完ぺきと感じれるほどの連係プレーをすることができている。


「何ですか!? このオークの群れの死体は!」

「ああ、試しに狩ってきた。まあ余裕だったな」

『……ギュ』


 試しに近隣に現れたオークの群れを殲滅した俺と相棒。普通に1人でやればおそらく作戦考えるのこみではかかっただろうことを、たったの1時間で済ませることができた。

 新たな連携スキルの組み合わせもわかったので収穫はでかかった。


「……うわぁ」

「あれがこのギルドの【エリート】で、実質【エース】なんでしょ?」

「馬鹿か? あいつはギルド全体を牛耳ってるんだよ!」


 後ろでは俺の姿を見た冒険者たちが噂をしていた。この前までは「熊の巣の真のオーナー」だの、「【エリート】のあの3人を手中に収めてる」とかだったが、ここ最近は「ギルドを牛耳っている」だの、「岩龍倒して、今度は男爵家のご令嬢をも手中に収めた」だのに変化しているような気がする。

 もちろん、全部嘘だ。


 確かに『祈祷の時雨』には訓練をつけて、ステフにはバズーカをあげた。(形式上は)岩龍にとどめを刺して、ちょっと不機嫌だったという理由でゴブリンロードいじめて、シーサーペントも何故か倒せた。

 【エリート】の一員にもなったし、実質【エース】の権利を持つ補佐役にもなった。

 

 ……でもね、ギルドを牛耳ったことは一切ないし! クマキチさんの宿はあの人の個人経営だから! 『祈祷の時雨』とは師弟関係(仮)だし、セシリア様はしつこく呼んでくるから適当に相手をしに行ってるだけ!

 客観的に見ると、そうなのかもしれないけど、こちらにそんな気は全くない。確かに、権力はある程度あるに越したことはないが、基盤を固める前にありすぎるとすぐに崩壊してしまうのだ。


『ギュ……』


 そして、悩みの種がもう1つ。新しい相棒だが、やはり夜行性であるため夜間戦闘が得意で、基本日中は寝ている。

 だが、こちらは夜行性ではないため、昼間に戦闘を行うわけで。

 結果、昼間の戦闘が終わるとすぐに寝るようになってしまい、クランブルに支障をきたすこととなったり、荷物が増えたということだ。

 肩が……特に、右肩が……こってきたような気がするんだよな。


「さて、帰るか……」

「あ、ししょーだ!」


 帰るためにギルドを出ようとすると声をかけられた。やけに聞きなれた声だ。


「あ、やっぱりステフか」

「やっほー! そっちの鳥は新入り君かな?」

「ああ、魔獣契約してきた奴な」

「へー、これってシルバーエル―でしょ。へー、ししょーもやるね~。わたしが何度も挑戦して手に入らなかったのをあっさり捕まえるなんて」


 は? こいつの捕獲そんなに難しかいのか?

 ……いや、まず聞きたいのは、ステフに魔導士か従魔獣士の適性があるのかということだ。


「え? あるよ? 従魔獣士はCだよ?」


 おいおいちょっと待て。そのCでよくあんな化け物ゴーレム君と契約ができたな…… むしろこっちよりもしにくいんじゃないの!?


「ああ、あの子は自分からだからね。一目惚れってやつ!」

「うん、違うと思う」


 誰がお前みたいな子供に一目惚れしますか! したらそいつ相当な変態ロリコンだぞ! 怖いよ、近寄りたくない!

 今のバッサリ加減に少し文句があるらしいステフは、少し頬を膨らませると、すぐに機嫌を戻して、本題を切り出してきた。


「でさ、ししょーは今後1週間くらい、暇?」

「は?」


 いや、そりゃあ暇ですとも。暇とはいえ、それで体がなまらないように、定期的に何かを狩ろうとは思うが。


「じゃあさー、わたしと一緒に来ない?」

「は?」


 今何と言った? 「わたしたちと一緒に来ない?」だって? え、なんで?


「実はさー、面倒くさい依頼が来ちゃって。王都経由で、まともにやったら1か月以上かかるんだ~」

「それで?」

「ししょーは【フライ】使えるでしょ?あれならかなり早く着くんじゃないかな~って」

「俺はバスか! 飛行機か! 乗り物じゃないんだぞ!」


 こいつが言いたいことをまとめてみると、「さっさと依頼こなしたいからアッシー君としてついて来いこの野郎」と。

 うん、俺は……。


「悪いがパス。1月も留守にしたら新田と赤坂が死ぬわ」


 実際、かなり怖い所である。新田は料理を作れるが、時間がかかり、赤坂はそもそも論で出来ず。掃除洗濯すらまともにできない。

 シルクに頼んでもいいし、クマキチさんの宿で面倒を見てもらうのもいいけど、流石にそれは迷惑になるので、却下。


「……わたし、今まで料理以外はニッタの姉ちゃんがやってると思ったんだけど」


 意外そうな顔をするステフ、うん、俺も初めて会った時は「しっかりしてんな~」と思ったけど、後々関わってみて「こいつ、ダメだな~」に変わったんだよね。

 人間、見た目だけじゃわからない!


「う~ん、でもわたしだけで行くのはちょっとな~」

「ん? なんだステフだけで行くの?」

「うん、そだよ?」


 な・ん・だ・と!?

 それは、つまり王国を一つの爆弾(安全ピンなし)が練り歩くということではないか!

 これは非常に危険な案件だ! 自衛隊が出動する条件満たしてるよ!


「大げさな。そんな変なことするわけないじゃん!」

「い~や、絶対なんかあるな、これ」

「じゃあ、ってかだったらついてきてよ!」

 

 そんなことをジャンプしながら言われてもな。

 というか、さっきから目が不安そうだ。も、もしかしてとは思うけど……。


「ステフ。お前あの2人と別行動するの初めてなんだろ」

「ギクッ!」


 うわ、すっごいわかりやすい反応。やっぱりか。つまり、1人じゃ不安だからついてきてくれと。はあはあ。


「そ、そこまで深読みしない! 別に、一人でも大丈夫だけどね! なんだよ!?」

「はいはい、わかったわかった。俺もついてくよ」

「ホ、ホント!?」


 俺が不安と国の危機を感じて行くと宣言するなリ、歓喜の声を上げて、ステフが俺に抱き着いてきた。おいこら、よせ!


「じゃあ、師弟で旅行と行きますか!」

「いや、待て。流石に新田と赤坂は連れてくぞ? あいつらに死なれたら困る」

「おっとっと。そりゃそうだね~」



 こうして、俺たちは初めて、シュベルツィア以外の街へ行くことになった。


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