第37話 巨大ゴーレム討伐依頼 4
「いたぞ……そのまさかだ……!」
予想がまさかの的中! ジャイアントゴーレムは岩に擬態していたのだ。しかしなんという擬態方法! 自分から土に埋まって、動かず、ただの岩になるとか。思考回路良すぎだろ!
しかも、材質は鉄なのに! それを土かぶせて胡麻化すとか!
「で、でかいですよやっぱり!」
材質がミスリルから鉄になったとはいえ、高さは50mある。見上げていると首が痛くなってしまう。感覚としては、高層マンションを真下から見ているようなものだ。
「というかこれ倒せるのか!?」
まず出た率直な感想が、これだ。人間は、自然と自分よりでかいものに対して恐怖を覚えるものだ。それは俺も例外ではない。いかに力があろうが、でかいものは基本「いや、これ無理だろ!?」から始まるのだ。
「と、とりあえず攻撃してみて、ダメだと思ったらそこまでです!」
いやいやバーニー君。これと戦えと言われたら10人中10人は逃げますよね? こっちはまだ冒険者暦は実質3か月前後だぞ?
いや、確かにやる前から無理だって考えるのもダメか。材質は鉄に変換してるからミスリルよりも耐久性はないはずだし。もしかしたら、いける?
「よし、とりあえず多方向から攻めるぞ! 新田は主に土魔法で攻撃してくれ!」
「はい!」
俺はすぐさま閃光弾を打ち上げる。それは上空で爆発音とともに2つの光の花を咲かせる。
意味は、発見と救援要請だ。
そんなことをしている間に、ステフとバーニーが左右に分かれて攻撃をし始めているところだった。
「いきなりドッカーン!」
「いきますよおおおおお!」
ステフの両肩に抱えた2つのバズーカが同時に火を噴く。同時に反対側ではハイジャンプしながらバーニーがメイスを振り下ろす。
それが同時に直撃する。バズーカの弾が直撃したところは軽く凹みができ、メイスの所はかなりえぐれている。これは、被弾さえしなければいけるな。うん。
そう考えた俺は、自分でもバズーカを構えながら、次々に指示を飛ばす。
「新田は背後から攻撃、俺は正面で引き付けるから、バーニーとステフは脇腹に一発お見舞いしてやれ!」
「「「はい!」」」
俺は注意を引き付けるために、顔付近をかすらせるようにバズーカを放つ。もちろん、それに反応して、ジャイアントゴーレムは俺に向かって、その巨木のような腕を振り下ろしてくる。
「くっ……」
それを十八番のヘッドスライディングでかわし、素早く腕に張り付き、肩をめがけて32連装マイクロミサイルを放つ。威力はそれほどでもないが、広範囲に均等にダメージを与えられる。
それは見事に命中し、ジャイアントゴーレムの装甲を傷つけていく。よし、かなりダメージは与えられる!
俺はそのまま腕をよじり上っていき、四角い頭の後頭部に向けて残りの32連とバズーカの弾を浴びせかける。生物じゃないけど、少しは影響を与えられるだろう。
「ししょー! ちょっと来て!」
ジャイアントゴーレムが立ち上がる前に俺は素早く来た道(腕)を戻り、地面に戻ってくる。
そして、肩に一発浴びせようとしたときに、ステフが呼んできた。
なんだよこんな時に!
「いいからいいから」
いや、ほんと今よくないんですけど、とは思いながらもすぐにステフのもとに行く。なんでしょ?
「ネオ・トライアングルラッシュやりたいから、ししょーはバーニーが振り下ろして、私が攻撃を当てたほんの一拍後に、上からストーンってやって!」
なんだよストーンって。本当にステフは擬音が多いよな。まあ、言いたいことはわかるよ。要は縦に剣を振り下ろせということだろうな。
タイミングは、ステフの弾が着弾した直後か。トライアングルラッシュは身をもって体感したが、コンマ何秒のタイミングの世界だ。3つ子の絆があってこそできるまさに神業なのだ。
できるかどうかわからん。
「ししょーならできるって! だって、私たちのししょーだもん!」
うむ、その自信がどこから出てくるかが俺はわからない。とにかくわからない。それに、俺はこいつらを弟子にした覚えはない。あくまで弟子(仮)だ。
「まあいい。とにかく、タイミングはわかったが、サリーの代わりにはなるかわからないからな!」
「ししょー、信用してるよ~」
プレッシャーかけるなっての! そういいながら、俺は大急ぎでジャイアントゴーレムの真正面に戻っていく。
すぐに左肩にバズーカの弾を命中させる。すると、ジャイアントゴーレムが少しのけぞった。
……効いているのか?
「新田」
「まだまだ大丈夫です!」
「よし、じゃ、火魔法で一気に熱して、すぐに水魔法で冷ますのを繰り返してやれ!」
「……! なるほど! わかりました!」
どうしてそうするかって? もちろん鉄の強度が格段に落ちるからだ。今までは俺ステフの弾が熱さで途中で誘爆してしまい、俺が直接取り付いたり、バーニーが近接攻撃できなくなるから、させなかったのだ。
「ステフ、バーニー、新田の水魔法が合図だ!」
「「了解!」」
それを確認すると、再びゴーレムの注目を戻すために、爆撃を開始する。攻撃しながらも魔力の回復状況を確認する。
……まだ【爆雷雨】1.5発、【チェンジ・マテリアル】なら半径20㎝四方の物を3回変えるくらい、【マテリアルブースト】一回分、【フライ】なら巡航速度で300m飛べるかどうかだ。
でも、【フライ】が300m使えるならいける!
『我が力よ、願いに応じ火の嵐を呼び起こせ! 【ファイアーストーム!】』
「いったん退避だ!」
俺の指示通り、ステフとバーニーがいったん下がる。直後、ゴーレムの足元から炎の竜巻が発生する。
それはゆっくりじっくりゴーレムの装甲である鉄を加熱していく。
『我が力よ、願いに応じ水の嵐を呼び起こせ! 【ウォーターストーム】!』
今度は火の嵐から水の嵐になる。すぐに急速冷凍されてく装甲に、ボコボコと凹みができていく。
「今だ! 【フライ】!」
「「はい!」」
俺の合図と同時に、ステフがバズーカを構え、バーニーが走り出す。それとほぼ同じ、だがちょっと遅いタイミングで【フライ】による低空飛行で接近していく。
それを見たゴーレムが腕を振り下ろしてくる。それにタイミングを合わせて急速に上昇してかわす。
「やるぞ!」
「「了解!!」」
「「「必殺!ネオ・トライアングルラッシュ!!!」」」
接近したバーニーのメイスが一閃!装甲にかなり深い傷が刻まれる。
それのコンマ数秒後に今度はステフのバズーカの弾が着弾! こちらもかなりのダメージを与える!
そして、俺は2つの短剣を掲げ、渾身の力で振り下ろさんとする。
「はああああああああああ!!」
全力でゴーレムの巨体にナイフの刃を走らせる。刃と装甲が接した部分からは火花が散っていく。そして、最後に一蹴りして離脱する。
最後に魔力が枯渇しそうな苦しさを抑えながらバズーカを構えて、追撃。腹の中心に、大きなくぼみができる。
すると、ゴーレムは耐えきれなかったようで、その巨体が前のめりになっていき、手をついて、足をまげてーー
土下座し始めた。
「「「「は??」」」」
俺たちは、呆然としてしまった。50mの巨体が俺たちに向かって、ひたすら頭をペコペコ下げて、許しを請う。
そんなシュールかな光景が、その後10分は続いたという。
〇 〇 〇
そのころ、赤坂達はというと――
「あれ、こっちだったはずなんですけど」
「おいおい、本当か?」
「……ちがうきがする」
閃光弾の知らせには気付いたものの、広い森で迷子になっていた。