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オタクで変人なPC部員は、異世界で冒険者になったら器用○○でした!?  作者: 古河楓
第3章 PC部員たち、社会の上下関係に巻き込まれる
33/211

第33話 侵略者登場!?

 俺はすぐにクッキーを作り終え、貴族様—アルフレッド男爵に連れられて屋敷に向かった。

 以前はシュベルツィアの街の中にある屋敷に(要はクマキチさんの宿屋の建物)に住んでいたらしいが、景観がいいという、それだけの理由で街の外に居を構えることにしたのだという。なんという……。

 一度シュベルツィアの街の街を経由して、この前シーサーペントと闘った方面に行く。

 そこからさらに分岐し、30分ほど馬車で行く。


「娘はな~、それはそれはいい子でな~。髪は水色で長くて……」


 その間、アルフレッド卿から様々な娘さんの話を聞かされた。ほぼ自慢話だった。それが延々と続けられるのだから困ったものだ。正直うるさい。


「それでな……」


 うわー。今度は容姿の話になったよー。正直、中身さえよければ人間なんだっていいと思うんだけどね~。

 このアルフレッド卿のマシンガントークいつになったら終わるんだ。あの新田でさえマシンガントークモードは3~5分しか持たないんだぞ? とっくに30分を超えるのだが。

 どうなってんのこの人の口周りの筋肉。まさかとは思うが親バカ種は口周りの筋肉が発達しやすいのか?


 アルフレッド卿の自慢話を適当に聞き流しながら、赤坂と新田が何をしているのか考えること約2時間。道の先に、ようやく立派な屋敷が見えてきた。アシンメトリーの庭と本館と思われる建物。西洋式建築の要素がふんだんに取り入れられている。多分だが、ヨーロッパ辺りの豪邸は、全部こんな感じなのだろう。

 馬車は門番の兵が明けた正面の門から直接入っていく。そのまま玄関に続く道を馬車がいく庭……というか庭園には、様々な花が咲いていて綺麗だ。


 玄関前までくると、メイドの方々がドアを開けてくれた。タクシー感覚でドアを開けようとした俺が馬鹿だったようだ。

 ……つーか、本当にメイドさんっているんだな~。


「「ご主人様、お帰りなさいませ」」

「ああ、只今戻りました。お客様がいらっしゃったので、そうだな……なにか好きなものはあるかね、英雄」

「英雄じゃないっつーの。そうだな、じゃあ紅茶もらえる? クッキー作ってきたから。ああそうか。毒味する? その分はわけるから」


 サクサクと物事を進めていく俺(すぐに毒味用のクッキーをメイドさんに預け、荷物を預かってもらい)を見たアルフレッド卿は、「もしかして、貴族だった?」と聞いてきたが、「一般人だ」と返事をした。


  〇 〇 〇


 玄関の馬鹿みたいにでかいドアから中に入ると、これまた馬鹿みたいにでかい広間に出た。

 物語によくあるように、中央に階段があり、真ん中で分岐してアシンメトリーの本館の左右をつないでるようだ。床にはレッドカーペットが走り、壁には肖像画があり、置物の高そうな壺とか剣とかの骨董品があり、観賞用植物もある。

 そんな中、俺たちは、執事の方(結構若かった)に案内され、俺のファン(?)であるセシリアさんのところに連れていかれた。横には護衛騎士とアルフレッド卿がいるので、抜け出せない。


 空間把握能力(仮称)が、自然と屋敷の構造を伝えてくる。床にはところどころ穴のようなものがある。おそらくは侵入者撃退用のトラップと思われる。天井にも、大人1人が匍匐前進してやっと通れそうな通路……というか通気口がある。


「あの~、1つだけ質問いいか?」

「ああ、なんでもいいぞ?」

「床に落とし穴とかいっぱいあるけど……これは何用だ?」


 俺は好奇心で、どんなものなのかを見てみたくなった。落とし穴くらい【チェンジ・マテリアル】で作れるんだが、この世界ではどんな落とし穴なのかが知りたいのだ。


「な、なんで落とし穴がわかったんだ!? 幻覚魔法が付与された魔術道具で隠してたのに」


いやいや、その魔術道具作動してないだろ。だって素の探知スキルみたいなのにすぐにばれてんだよ?


「あ、用途だが……侵入者用と……対G最終決戦兵器だ!」

 

 なんで対G兵器にこんな大掛かりな装置使うんだよ! あとこっちの世界にもGいるのかよ……いやなこと聞いたな。俺、G大っ嫌いんだよ。

 それにだな。これは田舎によく行っている者だからわかることだが……。


「言っておくけど、Gって命の危険を感じると羽を使って飛ぶぞ?」

「なんだと!?」


 まあ、この世界ではそんなのがないと信じたいが。というかGはいないで欲しかった。


 そんな願いもしないことを言っているうちに、そのご令嬢の部屋の前までやってきた。

 執事の方が先に入り用件を伝え終わると、アルフレッド卿を先頭に、俺、護衛騎士の順番で入る。無事に送り届けたのを確認してから、護衛騎士は外に出ていった。


「セシリア。ようやく、君の言う英雄が来てくださったぞ!」

「ほ……本当ですか!?」


 あの、うん。アルフレッド卿の巨体(203cm、108kg)で見えない。はい、見えません。悪かったな。こっちは170うんたらしか身長ねーんだよ。


「じゃあ、ご挨拶なさい」

「は、はい!」


 そういうと、アルフレッド卿が半身になり、ようやくご令嬢の姿を見ることができた。

 ……なるほど。水色の髪をストレートのロングヘア―にして、緑色……というよりはエメラルドの瞳を持つ美少女だ。身長は155cmくらい。


「セシリア・フォン・アルフレッドと申します。ようこそいらっしゃいました、英雄さん!

お会いしたかったです!」

「……?」


 俺は、少し違和感を感じた。目は確かにこちらを向いていて、ちゃんと光がある。だが、こちらをあまり見ていない? というよりは……見えていない?


「セシリア様……ですか。大川心斗と申します……お招きいただき、恐縮です」


 俺の知っている限り、最も丁寧な口調でしゃべる。少し緊張したが。早速、気になっていることを……。


「アルフレッド卿、セシリア様はお目が悪いので……? 目はこちらを捉えているが、見えていないような気がするんだけど……」

「早速気づいたか……流石は英雄」


 だから英雄じゃねーっつの!


「セシリアは、魔眼の持ち主でな……それの効果が高くてな。それが視力の弊害となって起きる、魔眼病という、魔眼持ちの約2%が抱える悩みの種なのだよ」

「なるほど。ちなみに、私の姿は見えてるので?」

「ああ、そりゃ大丈夫だ。少しこちらを注視してないように見えるが、ちゃんと周りの景色は見えるんだ」


 聞けば魔眼病は魔眼のせいで目に体内の魔力が集結してしまい、その結果一時的な視界不良、組織破壊をしてしまうのだという。


「では、私はこれで失礼するよ」

 

 説明を終えたアルフレッド卿は部屋を出て行ってしまった。うぉい! 俺を孤独にすんな! コミュ障で陰キャの俺を初対面の女子(多分年が近い)と1人にするなあああああああ!


「そ、その…よくいらっしゃいました…すいません、忙しいのに……」


 ほら! セシリア様もおどおどしてるじゃないのよ見知らぬ男と二人きりにされて。

 あの貴族親バカなのか親バカんじゃないのかどっちかにしろよ……ったく。


「いえ、今日は暇でしたし…クッキー作ってきましたので、もしよろしければ……!?」


 俺は、クッキーを出そうとしたところで、気づいた。屋根裏の通気口に、誰かが居る。数は1人。手に持っているのは……弓?

 まさか、この娘を狙って!?


「あ、ありがとうございます! それでは、メイドに紅茶でも運ばせましょう!」

「ええ、ついでに護衛騎士も呼んでくださいね。ちょっとすいません……【ソードビット】!」


 俺は素早くナイフを浮かばせて、天井に突き刺す。


『……!?』


 俺のナイフが穴をあけたところから、血が落ちてきて、声にもならない声を誰かが上げる。


「きゃあ!?」


 突然垂れてきた血に、セシリア様が悲鳴を上げる。だから失礼するといったではないか。


「はいはい、じゃあお次。セシリア様、ちょっと俺から下がってくれます?そう、5mくらい」

「は……はい……!」


 突然の出来事に、セシリア様は慌てて距離をとる。膝を狙ったし、暗殺者なら動かないはずだ。だから今度は、こっちから動けなくしてやろうと思う。


「【エレクトリックフィールド】!!」

「ぎゃああああ!」


 俺の周り、半径5mに電気の地面が発生。最近分かったが、ある程度の高さになら届くようである。それを利用して、上にいる輩に電撃を食らわせたわけだ。

 そして、天井を破って、黒装束の人物が落ちてきた。

 やけに甲高い声が聞こえたと思ったら、女性だったのか。


「こ……これは……?」

「おそらく、暗殺者かと。気配遮断スキルとか持ってたのかもしれないけど、まず気配消すのヘタ過ぎ。一瞬でわかったぞ」


 暗殺者という響きに、セシリア様は真っ青に。そりゃ命狙われりゃあ、そうなるな。


「理由はあとで拷問するとして~」

「拷問!?」

「まず護衛騎士とアルフレッド卿呼んでもらえる?」

「あ、はい!」


 俺の頼みに応じて、すぐにアルフレッド卿と護衛騎士がすっ飛んできて、部屋が使えなくなったので、俺たちは庭園を散歩することにした。


 ……のはよかったのだが。あいつ”ら”が現れた。


「ご主人様! 敵です! ものすごい勢いで突っ込んできます!」

「なんだ! どこの馬鹿だ!」

「それが、犬猫がそりを引いていて……って、ギャー、来た!」


「「せんぱあああああああああああああああああああい!」」

「オオカワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「オオカワさあああああああああああああああああああん!」


 なんと、侵略者が現れた。シルクの使い魔であるワトソンとクリック、何故かホーネストがそりを引き、それをシルクが運転、後ろには新田と赤坂が搭乗している。なに!? 侵略するサンタクロー ス!?

それは正面の門を吹っ飛ばし、庭で俺たちを守らんとする護衛騎士を次々に轢いては宙に跳ね飛ばして、俺の前で止まった。


そして、一言。


「「「「大変です!!!!!」」」」

「なにがだよ!!??」



登場人物名鑑-11


名前:セシリア・フォン・ヴィッシュ

身長/体重:157㎝/使用人も知らない

父に思うこと:可愛がってくれるのは嬉しいけど過保護は迷惑

Q:筋肉とは? A:お父様

好きなもの:お茶会、甘いお菓子

苦手なもの:筋肉の圧、父親の自慢話

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