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オタクで変人なPC部員は、異世界で冒険者になったら器用○○でした!?  作者: 古河楓
第3章 PC部員たち、社会の上下関係に巻き込まれる
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第32話 親バカ領主様



「うぬぬぬぬぬ……」

「………………」

「ぬぬぬぬぬぬ……」

「………………」

「わからぬ」

「いやこっちがわからねぇから!」


 俺は思わず目の前に座ってうなっていた人物にツッコミを入れた。突然護衛騎士とともに現れ、我が物顔でお茶をすすっている目の前の輩は、なんと男爵様。このシュベルツィアの街近郊を領地に持つ貴族様だ。いつだったか忘れたが、顔を出せと言ってきた奴である。

 さっきも言ったが、赤坂がシルクに呼び出され、新田が買い物がしたいというので【フライ】で2人を送り出し、戻ってきたら、護衛騎士10人を引き連れて会いに来たのだ。

 そして、出した紅茶を飲みながら10分も20分もうなっていたのだ。


……お分かりだろうか。俺が相手が貴族といえどもツッコミを入れてもいい権利があるということを。


「なんか悩み事ですか?」


 念のために俺は唸っている理由を聞いてみる。さっさとそれを聞いて、適当に返事して、お帰り願いたい。


「は、話を聞いてくれるのか!?」

「いやだって。そうしないと帰ってくれないでしょ?」


 正直、用があってここにきてるのだろうから、それだけは聞いてあげようと思う。逆に用もなくここに来られては迷惑だ。


「じ……実はな……うちの……うちの娘がな……!!」


 あ、一瞬でわかった。この人、絶対親バカだわ。あー、面倒くさい。ほんっとそういうの面倒くさいんでやめてもらえません?


「うちの娘がな……君の……英雄オオカワの噂に影響されて……冒険者になりたいといい始めたのだよ……っ!」

「何故そこで俺が出てくる! それに俺は英雄なんかじゃなくて、一冒険者ってだけだ」

「なにを言っているんだ!」


 俺が自分自身が英雄ということを否定した瞬間、目の前の貴族様はたいそうお怒りになった。なになに、なんでそんな剣幕で起こるのよ。


「ここ最近、次々と災厄級の魔物・魔獣が現れ、王都に行っては対策せよと命じられていたときに、だ!君たちが現れた! そしてうちの領地は……いや、王国は助かったわけだ。早急な対処に、国王もおほめくださって……ホーネストもすぐに手をまわしてくれた。それはいい。だが! だが我が愛娘の尊敬の対象である者の口から「自分は英雄じゃない」と言われたらどれだけ悲しむだろうか!」


 長い長い長い!最初どうでもいいじゃねぇかよ! あと、やっぱ親バカかよ! なんだよ「尊敬の対象の者から英雄じゃない! 言われたらどれだけ悲しむか」って! こっちは適当に稼いで、あとは普通にのんびりまったり暮らせればいいの! 誰が俺を尊敬しようが別にいいじゃん! それに「英雄」なんか言ったら各地に飛ばされて戦闘しかしないだろ! 誰がそんなブラック稼業すると思ってんだ! 適性があるやつにやらせろ、適性があるやつに!

 俺はな! 騎士と魔導士がなくて、アーチャーはBだけど、それ以外全部Cなんだよぉ!

 悪かったね器用貧乏で!


「いや、そこまでは言ってないのだが……」

「おっとすまない。つい口に出してしまった」


 俺は詫びの言葉を入れて、すぐに気持ちを切り替える。


「それで、何が言いたいの?」

「それで~だな~……実は……うちに来てだな~、娘に、会ってほしいのだが……」


 なるほど。ただ来てほしかっただけか。つまり、面倒くさいということが分かった。

 社会の上下関係とか要らないんだけどな~。貴族のしがらみとか、うんたらかんたらは俺の専門範囲外。


「そして、問題が3つほど」

「な…なんだい問題とは!? か、金はあるぞ! すぐに言え、すべて揃えよう!」


 うわぁ。貴族の悪いところ発見。全て金で解決しようとする。一番リアルで見たくなくなかったな~。


「その1、俺はコミュ障ということ。その2、俺は貴族とかと関わるのが苦手ということ。その3、俺は女子(特に年下)が苦手ということ」


 あ、もちろん新田は例外。あれはオタク仲間という奴ですよ、うん。

 まず、初対面の奴とはほぼしゃべれないという問題があり、上下関係が激しかったりするやつ嫌い、敬語が使えないに等しいという問題もある。「無礼講でいい」というこの貴族様の言葉がなかったら詰んでいた。


「そこを何とか頼む! 出来れば【ソードビット】とか【チェンジマテリアル】とか見せて、よければ教えてほしい!」


 いやいや、【ソードビット】は俺の空間把握能力(仮称)のおかげだから。それに重力魔法も使うから支援魔法の使い手じゃないと使えないし。【チェンジマテリアル】は、俺の場合、常人よりも多い魔力量と質で補っているから連発できるわけで、本来はかなり魔力を使うもの。一般人で魔法の才能があるやつくらいしか使えないんでない? 支援魔法適正がBなら使えるかもね。俺もBだから。


「そこを何とか!」


 そういうと、貴族様はとうとう膝をつき、頭を……って、土下座ぁ!? プライドが高いはずの貴族が娘のためだけに土下座!? 踏めってか!? 踏んでくださいってか!?


「というか、どうしてそこまで来てほしいんだ?」


 気になったので聞いてみた。というか、最初に聞けばよかった。今さら感と、貴族様が放つオーラで暗い雰囲気が流れる。


「……娘はな」

「はい」

「来年から魔導学院に行っちゃうんだよおおおおおおおおおおおおおおおお! めったに帰ってこなくなっちゃうんだよおおおおおおおおおおおおおおお!」


 途端、貴族様は大きい声でそう叫んだのだった。


「それだけかよ……」

「それだけとはなんだ! うちのかわいい娘が王都から滅多に帰ってこなくなってしまうんだぞおおおお! これ以上に悲しいニュースはあるだろうか! いや、ない!」

「なんで反語使うんだよ!」


 だんだんこいつの相手をするのが面倒くさくなってきた俺。いや、しょうがないでしょ?


「頼むよおおおお! 娘が、セシリアがあっちに行く前に親父としていいとこ見せてやりたいんだよおおおおおおおおお! うおおおおおおおん!」


 泣き始めたぞこの貴族! どんだけ親バカなんだよ。見ているこっちが悪役みたいになってきたじゃないかよ。

 ああ、もう相手すんのも面倒くさくなったなぁ!


「わかったわかった。行くから、行くから土下座やめろ! あと少し待ってろ。なんか菓子類でも作っておみやげで持っていくから」


 そう言って洗濯が終わった予備のエプロンをつけて、キッチンに向かっていく俺。もうクッキーくらいでいいだろ。サトウキビ(物質変換魔法でホウレンソウから作った)から獲れた砂糖があるはずだ。


「あ、あ……ありがとおおおおおおおお! やっぱ君は英雄だあああああああああああああ!」


その後、クッキーを作っている間、ずっと貴族様は舞い上がっていた。



登場キャラ名鑑ー11


名前:アルフレッド・フォン・ヴィッシュ

身長/体重:212cm/103kg

マッチョ度合い:現代のボディビルダーは雑魚レベル。

親バカ検定:1級

好きなこと:娘の自慢、筋トレ、あと筋トレ、そして筋トレ、最後に筋トレ

苦手なこと:娘が辛らつ、筋トレを邪魔される、Gの大群


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