第28話 vsやばいゴブリンたち 1
読書の秋の強化ウィーク!本日は2話投稿の2話目です!
「で、依頼って、何?」
「……はい、これです」
俺たちは適当な席を見繕ってそこに座り、少女が出してきた依頼書を受け取って、確認する。
依頼内容はゴブリンの討伐。しかも、ゴブリンロードのだ。なになに? 大型攻城兵器を所持している? なんだよそれ。大型攻城兵器って。
「そ、それは“ガルガンチュア”という兵器で、過去に王国が戦争していたころの遺物なんですけど。それ一個でそうですね……この国の王都は城ごと更地になる威力を持ってます。今は条約によって“ガルガンチュア”は使われていないのですが……なんでもそれをゴブリンたちが奪い取ってしまったらしくて」
「「「はぁ!?」」」
なにそれ!? つまり核爆弾級の兵器を持ったゴブリンたちが、こっちに向かってきてるということか!? え? マジでそれやばくね?
「所詮ゴブリンなんですけどね~、いかんせんロードは強いですし、指揮もうまいんですよ~」
と、何故か抜け出してきた受付嬢が言う。仕事しろ。いや、解説してるから一応仕事か。
「ちなみに、この前それの斥候の仕事がありまして。それによると敵は大体500~2000ってとこですね」
いや、うん。無理じゃ。それに単騎で挑もうとしたこの少女はただの頭がおかしい馬鹿じゃ。
もう馬鹿確定。
「違うんです。私は精霊魔法を使えて……一度に200~300を巻き込めばいけるかと思って」
「いや無理だろそれ。一発目でばれるだろうし、詠唱の間に間合い詰められて一発じゃね?」
俺がゴブリンロードの立場ならそうする。精霊魔法は使いならせば詠唱は短略化できる(クマキチさんがいい例)が、それでも時間は必要。
それにある程度は屠れる可能性はあるが、成功する可能性はほぼないはず。
「ちなみに、職業ランクと魔法適正は?」
「あ、はい! 魔導士Bと適性は光、闇、回復です! 回復の中でも特に蘇生魔法を得意としてます」
闇と光属性持ちは初めて見たな。どんな魔法が使えるのか楽しみだ。っておいおい、まだ決めたわけじゃないんだけど。いや、決めたか。新田が決めちゃったか。
「俺は大川心斗。このパーティの実質リーダーだ。ああ、英雄だのなんだの呼ばれてるけど、違うからそこんとこよろしく」
「私は新田明里。よろしくね」
「……赤坂……唯一です……」
赤坂、君は声死んでないかい!? 大丈夫!? 確かに(女子が)苦手とは聞いていたが。あ、ちなみに新田は女子と思ってないので別らしいっす。
俺たちが正式に協力することがうれしかったのだろうか。魔導士の子は勢いよく立ち上がって頭を下げてきた。
「わ、私、シルクっていいます! よろしくお願いします!」
「そんな改まんなくていいんだよ~」
新田が砕けた調子でそんなことを言ってる。こいつにしては、というかこいつ異世界に来てからはかなりフレンドリーだな。とりあえず、外交はあいつらに任せて。
「偵察、行ってくるかな~」
俺は諦めて、協力することにした。
〇 〇 〇
俺は【フライ】を使い、前回そのゴブリン共が発見された場所に行く。エルフの大森林を抜けたところにいるらしい。初めて分かったが、この森でけぇ! なにここ抜ける気がしないんですが! それから巡航10ノット(これが一番燃費がいい)を守りつつ、どんどん進んでいく。
今回、お供は1人……いや1匹。シルクの使い魔である猫のワトソンである。かなり頭がいいらしい。すぐに【フライ】に順応して、今は俺の頭の上でお昼寝中。こいつ本当に頭がいいのだろうか。心配だ。来る前に「ワトソンは偵察とか、敵感知に優れていますので、是非!」とシルクに言われたから連れてきたものの。邪魔だったら強制的に囮にして帰るからな。
携行している武器は32連を外したバズーカと、予備の弾3発に【ソードビット】用ナイフ3本。いざというときはそれで応戦しながら撤退する。
1時間ごとに休憩、再び移動を繰り返すこと4時間弱。ようやく森の端が見えてきた。馬で行ったら抜けるのに最低1日はかかりそうだな。
抜けた瞬間、俺はあるものを目撃した。湯気が立っているのだ。その近くには、緑色で小学生低学年レベルの身長、腰に布を巻いただけの生物……ゴブリンの姿があった。しかもそれが向こう300mは続いている。おそらく、ここで今日は陣を張る予定なんだろう。
「……フーッ!」
頭の上ではワトソンが毛並みを逆立てながら威嚇している。こら、今騒ぐな。
「…………」
俺はワトソンを隠しながら隠れるのに適した木を選び、ゆっくりと枝に着地する。そこからスコープで周りを見渡す。いるわいるわ、大量のゴブリンが大なべのようなものの周りにうじゃうじゃいる。
対して少し離れたところにいるのは見張りだろうか。キョロキョロしてるし間違いない。
全体的な武器を見てみると、安物の剣が4割、竹やりなどが4割、弓が2割といったところか。防具はつけてないものが多い、
……おっと、狼みたいなやつもいる。いわゆる「ライダー」がいるのは確定。別動隊になられたら面倒だ。
さらに奥に目を凝らすと、灰色で卵のような形状をしたものを発見した。あった、大型攻城兵器“ガルガンチュア”だ。情報はあっていたらしい。使い方は単純。全属性の魔力を少し注入して、風の戦略魔法で飛ばすだけらしい。つまり……いた。ゴブリンメイジだ。全部で50匹。それだけいれば多分戦略魔法も使えるんだろう。
そして最後に……いましたよゴブリンロード。偉そうだな~、仰いでもらって食料貢いでもらっちゃってまあ。
とにかく、明日の朝まではここにいることは必至。今すぐ戻って作戦を考えるべきだ。
俺はこっそりと【フライ】を発動し、街へと戻っていった。
〇 〇 〇
俺がギルドに到着し、報告すると、すぐさまギルドが主体となり、一般民の避難誘導が始まった。もしかしなくても、これを最近2回もやっていたのか。
他の冒険者がいても足を引っ張るだけと判断され(祈祷の時雨3人組は依頼で留守)、俺たちは4人でゴブリン共の殲滅をすることになった。一応、討ち漏らしても街は騎士団と手の空いてる冒険者が守護するそうだ。ちなみに、こちらもここ2回そうしていたらしい。
俺は前線基地に自分たちの家を使い、移動中に考えた作戦を話す。今から準備しないといけないしね。
作戦はこうだ。狙うは早朝と夜中の中間。具体的には午前3時~4時前後だ。まずシルクが精霊魔法で雑魚を狙い撃ちして、残りは俺と新田が撃破。
街への攻撃を考えているであろうゴブリンロードは絶対に“ガルガンチュア”を使用せず温存したいはずだ。なので、最も相手の嫌がるやり方を使う。つまり、「使いたくても使えない」状態にするのだ。狙撃は大丈夫。魔法でもバリスタでもできる。
とにかく、強襲作戦でもあり奇襲でもあるので行きは隠密行動に徹する必要がある。
「じゃ、今すぐ仮眠をとれというわけですね」
「そゆこと。好機を逃さないように0時になったら起きてウォーミングアップしてからだ」
「武器は何持っていきます?」
「赤坂はバリスタと矢を携行してくれ。俺はバズーカと弾でいっぱいいっぱいだからな。矢は足りなくなったら【チェンジ・マテリアル】で作ればいい」
「了解です。ちなみに、今回も前衛の役割がなさそうですが……」
「魔導士2人の護衛だ。俺は陽動するつもりだから」
「……すごい」
俺たちがテキパキ戦闘の用意をしていくを見て、シルクがそんなことを言う。
そこまですごいことじゃないけど、これがうちの売りですから。
その日は夕食を早めに取り、全員が仮眠をとるために部屋に入っていった。
〇 〇 〇
午前3時30分。俺たちは夜の闇に紛れてゴブリンの群れを一望できる丘までやってきた。
【フライ】を使ったが、かなり気をつかったのは確かだ。
「さて、でかいの一発頼むよ」
「はい。できれば日中に放ちたかったんですけどね。大丈夫です、月バージョンもあります」
ごめん、俺、精霊魔法詳しくないんだ。何言ってるかわからん。日中と夜で何か変わるのかよ。
『この地に佇む光の精霊よ…我の力に呼応し神聖なる月の輝きにして、悪人百鬼を打たせ給え! 【ムーンライト・ブラスター】!!』
詠唱が終わると同時に、なにかが降ってきた。眩しくて、神々しい光の奔流は、丁度ゴブリンの群れの中央に着弾した。
登場人物名鑑-10
シルク
身長/体重:145㎝/姉以外知らないらしい
誰にも話してないこと:辛いもの大好き
Q:姉の好きなとこは? A:全部
好きなもの:家族(特に姉)、辛いもの全般
苦手なもの:苦いもの、一発で落ちない敵、ドッキリ