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オタクで変人なPC部員は、異世界で冒険者になったら器用○○でした!?  作者: 古河楓
第2章 PC部員たち、萌えと苦労を知る
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第19話 世の中って、理不尽!

「すいませんでした! つい、感情的になって」


 結局俺たちは模擬戦闘をすることになった。その訓練場に行くまでの間に新田が俺に頭を下げてきたのだ。多分、さっき独断で勝負を受けると宣言してしまったのを気にしてるんだろう。


「いや、俺もあそこまでなったら受けるって言おうとしてたところだったから別に気にしてないさ」

「それならいいんですけど……」

「それと、勝負は俺一人でやるから」

「「え?」」


 実は、さっき受付嬢さんから『祈祷の時雨』の詳細を手に入れ、俺だけで対応可能だとわかった。

 この後依頼も受けるため、2人は温存しておきたいのだ。赤坂だと分が悪いし、近接戦闘に弱い新田も無理だ。


「酸反応性爆弾で体内からとかなしですよ……?」


 赤坂、お前はアホチンか。それ相手死ぬから。やんねぇよ。流石に俺もそこまで鬼じゃない。

 とにかく、あのスキルと魔法さえ使えば俺は一撃も喰らわずにこの勝負に勝てるはずだ。確率とかじゃなくて、確実に。


「くっくっく、まあ見てろ。ついでに年長者を敬わないとどうなるか、世間はどれだけ広いかを思い知らせてやる」

「先輩が悪役に見える……」

「同感」


 やかましいやい!


  〇 〇 〇


 2年前に魔法や武器の練習をした訓練場の四隅は既に多くの冒険者(野次馬)で埋まっていた。そこには仕事を中断して出てきたギルド職員の姿がある。暇か、お前らは。

 中央では審判役なのか、ホーネストが陣取っており楽しそうな顔を隠そうともしていない。ついでだ、あのスキルに巻き込んでやる。


 俺は2人に見送られながらバトルフィールドに入っていく。相変わらず小学校のグラウンドと同じような場所だ。


「そっちは1人だけ?」


 先ほどから挑戦的なステフがそんなことを聞いてくる。当たり前だ。だから1人で来たんだろうが。


「ぬぬぬぬ……なめられたもんだね、私達も」


 お前それベテランのジジイとかババアとかが言うセリフだろ。実年齢何歳だよ。

 そんなステフを無視して、メイスを背負った方の子が、こっちに来て手を差し出してきた。


「すいません、ステフはいつもああなので。自己紹介してなかったですね。私はバーニー。『祈祷の時雨』のリーダーで長女です。よろしくお願いしますね」

「あ、ああよろしく」


 バーニーはしっかり者なんだな。なんとなく常識人が彼女らの中にいて安心した気がする。


「ほら、2人も自己紹介して」

「「はーい」」


 バーニ―に呼ばれ他2人もトテトテとこちらにやってくる。最初に口を開いたのはステフの方だ。


「私はステフ。末っ子だけど、戦闘力は一番高いよ!」

「……うそ。私の方が高い」

「サリーよりも攻撃範囲広いもん!」

「……近接戦闘できないのによく言う。バカステフ」

「う……うるさい!」


 なんか、喧嘩始まったんですけど。誰か助けて、へるぷみー。


「今は自己紹介中でしょ?」


 外野に助けを求めるまでもなかった。バーニーがすぐに止めてくれた。流石は長女のしっかりさん。頼れるなぁ(けんかの仲裁は)。


「じゃ、最後にサリーやって」

「うん。み、見苦しい所をお見せして申し訳ない……」


 多分人見知りなんだろうな。緊張しなくて大丈夫なんだけど。


「せ……拙者はサリーと申す。次女である……よろしくたのむ……はずかしい」

「サリーってブシドーとか言ってるくせに内向的で人見知りなんだよね~」

「う……うるさい!」


 あ、セリフが反転しているような気がする。ブシドーって、武士道だよな? なぜ伸ばす。あとこの世界に武士いるのか。


「じゃ、俺も自己紹介しないとな。俺は大川心斗だ。大川が家名だからよろしく」

「……家名が和の国っぽい。もしかして、和の国の出身であるか!? それに、オオカワといえば伝説の剣豪、大川新介の家名ではないか!」


 自己紹介をした瞬間に人見知りなはずのサリーが食いついてきた。多分、その和の国も家名が前に来るんだろう。あと誰だよ大川新介って。そんな奴知らねぇよ。


「久しぶりに、刀使いと打ち合えるとは!」

「いや、盛り上がってるとこ悪いんだが、俺アーチャーだぞ?」

「え……」


 武器の弓を見せるとサリーのテンションはすぐにminになった。悪いけど事実なんです。

というか、いつ始めるの?


「じゃ、始めましょうか。手加減いりませんから。全力でお願いしますね?」


 バーニ―、始める頃合いを見つけてくれたのはうれしいけど、そのセリフあっさり倒される中ボスが言うセリフだと思うぞ……。


  〇 〇 〇


 双方が定位置につくと、審判役のホーネストがルールを説明し始める。


「じゃあ、ルールは模擬戦闘規約に則ってやりま~す。相手に致命傷を与えるのと、頭を狙うのは禁止。審判が終わりと言ったらその時点で戦闘は終了。スキル、魔法の使用は認めるものとする。それでいい?」

「「「異議なし!」」」

「こっちもだ。要は殺さなきゃいいんだろ?」


 そういうことだ、とホーネストから返答が飛んでくる。それならあのスキルと魔法は使える。


 とりあえず、今の装備を今一度確認。弓、矢が2ダース、【ソードビット】用のナイフが予備含めて5本、それに短剣2本。防具は胸当てと足あてのみ。魔力はMAX。よし!


「はじめ!」

「サリー、ステフ、作戦通りやるよ!」

「はーい!」

「御意!」


 ホーネストの合図と同時にバーニーが指示を飛ばし、ステフが正面でバリスタを高速展開、大太刀を持ったサリーが右手へ、大型のメイスを持ったバーニーが左手に向かっていく。


 俺は目の前にいるステフに向かって走り出す。あいつだけ使おうとしている魔法の範囲外にいるのだ。

 後ろ225度にサリーが、315度にバーニーがいて、2人とも近づいてくるな。この形は、三角形?

よし。もうちょっと、もうちょっとで……。


「引っかかったね!」

「「「必殺! トライアングルラッシュ!!」」」


 なにやら中二病らしき技名を唱えると同時に、先ほどと同じ角度からサリーとバーニーが急接近。刀とメイスが同時に振り下ろされる。

 3方向からの同時攻撃か! だが、空間把握能力(仮)でバレバレだし、もう使おうとしている魔法の有効範囲内だ!


「さあ痺れろぉ!【エレクトリックフィールド】!」

「「「きゃあああ!」」」


 無詠唱で完ぺきに発動するまで鍛え上げたとっておきを使う。すると、俺から半径5mの地面から電流が流れ始める。それは相手がジャンプしてようがなんだろうが体内に電流を流し込むのだ。

 見事に引っかかった3姉妹は感電して倒れこむ。あとは、チェックメイトをさすだけ。


「はいはいはい、【ソードビット】」


 号令と同時に3本のナイフが感電している3姉妹に高速で向かっていき、首筋ちょっと前で止まる。

 はい、チェックメイト。


「し……勝負あり……」


 あれ? 勝ったのに盛り上がらないな。もっとこう、わああああ! ってなるはずなんだけど。


「……うわ、大人げなっ」

「えぐすぎんよー」

「……(絶対勝てる気がしない)」


 いやいやいや、手加減なしって言われたから手加減せずにやったんですけど。おかしくね、その反応。


「先輩、流石に瞬殺はちょっと……」


 えー、むしろ相手の外傷をゼロに抑えたことを褒めてほしいんですけど。なんで新田にまでそんな外道を見るような顔をされなきゃならん。

 え、おかしいでしょ? なんで外道扱いされにゃあならんの!?


「う……うう……私たちのトライアングルラッシュがこうも簡単に」

「……さすがは剣豪の子孫、強すぎる」

「しびれる~、っていうか悔しい~」


「ないわ、こいつはないわ」

「龍喰らいはクズだったのか……」


「先輩って、ここまで精魂腐ってたんですね」

「だな。いっそ見限る?」


「ああもう! 世の中って理不尽!」


 俺は訓練場の中央でそう叫んだのだった。


作者「リアルな話になってあれだけどさ。マジで世の中って理不尽だわ」

大川「いや、そりゃそうだろうよ」

作者「なんだよ、余目で1時間待ち! 新庄で1時間待ち! タイミングが悪いと福島ー山形は合計で4時間くらいかかる!」

大川「いやしらねぇけどおとなしく新幹線使えよ!?」

作者「いやだいやだいやだいやだ」

大川「壊れちった」


(※奥羽本線福島ー米沢は1日6往復前後。作者は旅好きで普段から普通電車中心のボンビー旅してます)


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