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オタクで変人なPC部員は、異世界で冒険者になったら器用○○でした!?  作者: 古河楓
第2章 PC部員たち、萌えと苦労を知る
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第17話 【エリート】は子供!? 1

 春になった。

 世の中は新学期。新しい学び舎、新しい教室、新しい仲間。小学生は馬鹿みたいに「友達百人できるかな」とほざき、受験生は桜を見て追い込まれていることを知り、スーパーでは花見セールというものを始め一心不乱にお菓子や総菜を売りまくる。花粉症の人は目のかゆさや鼻炎に苦しみ、人々はゴールデンウィークが待ち遠しいとぼやく。


 ……それは「地球」という世界なら、だ。


 ここは異世界。だから、花見なんてできるわけが。

 ……ないんだけど。ないんだけどぉ!


「この木って桜の木だったんですね。先輩知ってました?」

「……知らんかった」


 実は始まりの場所の巨木は桜の木だった。なんでもこの前、魔法の練習をしようと草原に行った新田が、偶然見つけたのだとか。

 なんだろう、恋しくなるのはわかるがなぜ異世界で花見をしなれば。しかも持ってきているのはパンだぞ、パン。サンドイッチと唐揚げ……って普通か。


「ここ最近血生臭い冒険者家業やってきたんで少しは休みましょうよ」


 いや、休もうとは思ってたけどさ。だけどさ……。


 ……制服着て草原にそびえたつ桜の木の下で騒ぐって、せっかくのファンタジーぶち壊しの気がする。それに料理作ったり、【フライ】でここまで連れてきたの俺だし。


「さ、早く食べましょうよ!」

「先輩~、早くしないとなくなりますよ~」


 まあ、いいか。たまにはこういうのがあっても。


  〇 〇 〇


 最近、俺たちはたくさんの視線を感じるようになった。おそらく「岩龍を倒した冒険者パーティー」というラベルがあるからだろう。ちなみに誰が見ていたのかはわからないが俺が岩龍にとどめ(?)を刺したということが知れ渡っている。なぜわかる。俺は自分で言った覚えがない。

 

 そして、冒険者ギルドでは……。


「おうおう、そこのガキども! かわいい嬢ちゃん連れてんじゃねぇか。そこの嬢ちゃんとその装備全部おいていきな!」

「…………」

「おい、なんで答えないんだぁ?お前本当に男かぁ?」

「…………」

「オラァ、答えろやぁ!」

「…………」


 入って10秒でこれだ。今日も人気や人気、大人気。冒険者どもは俺らの資産と新田が狙いのようだ。

 新田がかわいい…? 馬鹿いえ、新田だぞ。あと俺はガキじゃない。この世界ではもう成人済みだぞ。

 あ、ちなみにこの世界では15歳で成人(所謂テンプレ)、10歳である程度働くことができるようになる。


 そんな馬鹿どももさすがに手は出してこない。というのもこの前俺がその輩を倒し、大の男が泣き出すくらいの迫力で脅しておいたからだ。流石に面倒くさかったので実力行使した。


 それを無視して、俺たちは依頼が張り出されているボードの前に行く。金は3年くらい引篭もってもまだ余るくらいはあるのだが、あって困るものではない。


「どれにします? 最近はデカブツとしか戦ってないから小さいのがいいです」

「でも小さいのだと群れが多いじゃん。残党探しがめんどくさいとか言ってたの赤坂でしょ?」


 目線を少し下に下げれば新田と赤坂言い争っている。主張は正反対で、デカブツか小さい群れか。

 個人的には的がでかいし鈍重で攻撃がわかりやすいデカブツがいい。それに金払いもどちらかというとデカい魔物の方がいい。

 適当にボードの張り紙を見ていると、『スバローカウ討伐』の依頼書が。最近強くなったしそろそろ復讐するのもありかな。

 なんて思いながら紙をとろうとすると、下から伸びてきた手と当たってしまった。


「「あ……」」

「すいません……」

「いや、こちらこそ……?」


 俺はすぐ横の空間を見ながら言う。しかし、そこには誰もいない。あれ?

 なんだ、今のってアンデッドとか怪異!? じゃあ幻聴!? 幻覚! おいおいそういうの勘弁してくれよ! そういうの無理なんだよ!

 俺が混乱していると、横合いから新田が声をかけてくる。


「……先輩、下です」

「あ……?」


 そう言いながら下を見ると、そこには背後に大きな弓を持った女の子が立っていた。


「……子供?」

「な……誰が子供だ!」


 いや、だって。俺の腰よりちょい上までしかない身長。小さい手、声変わりしていないとなれば…

…ガキだろ。


「そ……そんなこと……!」

「「いや、子供だろ」」

「なぁ……」


 今度は俺と赤坂のダブルパンチに女の子は絶望的な顔になる。いや、でもこいつガキだろ。どう見たって。


「子供じゃないってことは、エルフかなにか?」


 新田がかがみこんで目線を合わせてそんなことを聞いている。あれだ、保育園児に話しかけてる保育士だ、これ。


「そ……祖先にエルフはいるけど……」

「え……じゃあ今何歳?」

「じゅ、11歳……」

「「やっぱガキじゃん」」

「うううう……!」


 はいこれで子供確定。成人してないじゃんよ、なあ。これ立派な子供ですよね。どう思います、新田さん。


「……これは、子供ですね、はい」

「そんなぁ!」


 いや、常識だろ。今までお前ら自分を何だと思ってたんだよ、そこから聞きたいんだが。ここに100人の人がいたら100人子供って答えるよ。


「くぬぬぬぅ! だったら!」

「だったら?」

「……勝負よ」

「は?」

「だから! 勝負よ、勝負! 私達が勝ったらあなた達も子供じゃないってわかるでしょ!」


 え? ガキと勝負すんの? やだよ面倒くさい。

 ……ん? いや待て、その前にもっと考えなきゃいけないのがあるぞ。「私達」って。


「ステフ―、いい依頼あったー?」

「……そっちの2人、だれ?」


 声と足音のする方に視線を向けると同じような顔をして、それぞれ大きいハルバードを持った子と和服で、かなり刃渡りの大きい太刀を持った子がこっちにやってきた。いずれも身長は同じ。


「ふふふ……私達【エリート】3人娘のパーティー……『祈祷の時雨』に勝てるの?」


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