第122話 空中の一戦
そのあと、俺とカエデはすぐに南の橋付近に到着。ひとまず中央の部隊と合流せんとする敵にやはり閃光鉄はう(今命名)とバズーカのコンボ攻撃でほぼ行動不能状態にしてしまう。
このころになると、割と開けた土地で体制を立て直しつつある侵攻軍とルーマー族がぶつかっていた。森の方からも鉄と鉄がぶつかる音が聞こえてくる。
そして、今度こそシーサーペントは動き出した。どうやら中央の部隊が交戦し始めたタイミングで動き出すということになっていたらしい。
隙があったら本隊の支援もしようと考えていた俺たちだったが、動かれたんだから本来の任務通りシーサーペントを倒すに限る。
今回の作戦は簡単。俺が後衛で遠距離から支援して、カエデが猛毒を染み込ませた苦無で行動不能にさせるというもの。
「よし、準備いいな?」
「いつでもバッチ来い!」
「【フライ】!」
今回は俺の【フライ】で飛行状態を確保する。最近になって分かったのだが、これは味方にかけられて俺が操作することも可能だが、かけた相手が個別で制御することも可能らしい。カエデもしっかり慣れているので大丈夫そうだ。
「行くよ!」
「よっしゃ」
そう一つ気合の篭った声を出したカエデは自由自在に空を飛んでシーサーペントに急速接近していく。対して俺は安全に近づいてもらうためにやつの気を引くためにわざと正面に躍り出て、憲政のために投げナイフを目に向かって投げる。
勿論敵はそんなものを食らうはずもなく、頭を下げてナイフを躱すと俺に向けて進路を変更してこちらに向かってきた。あーあーそんな口開けちゃって。そんなことしていると……。
俺は隠し持っていた銃を手に取り、両手で構える。確か仕組みはほぼパチンコみたいなもんで、銃の形はほぼ飾りだったはず。ただしある程度の速射性と連射性能は持っている。
俺は口を開けて興奮状態のシーサーペントの舌の付け根に狙いを定め、トリガーを引く。
『グオオオオ!?』
「よっし」
撃った弾はしっかりと舌の付け根からやや下のところへ命中。それと同時に鮮血が弾が作り出した穴から吹き出る。そして今撃ったのはカエデが作ってくれた毒の弾。カエデの方だけじゃ足りないと思うしナイスアシスト。
そのままシーサーペントの気を引くように背を向けて逃走。ある程度のところに行ったら逆に接近して噛みつき攻撃をすべて間一髪のところで避けていく。未だに目が少し見えにくいから最悪離脱できる距離でやっている。
「とりゃあああああ!」
『グオオオ!?』
今度は横合いからカエデが苦無を突き立てて体内に毒を入れこんでいく。一度張り付いて刺し、そして一度離脱してからもう一本刺す。
それをしたらあとは毒が回るのを待つだけだ。
「おい、どんくらい待てばいいんだよこれぇ!」
「う~ん、リースキットの記録のより2回りくらい小さいから4分くらい?」
「なっが!」
だったらと思い、俺はなるべく里から遠い場所に誘導するためにシーサーペントに背を向けて逃げる。もちろん追ってくるだろう。だが、過度に動くとすぐに体内に毒が回って……。
『グオオオロ!?』
追いかけっこが始まって2分とたたないうちにやつは飛行に使っていたヒレを使うことが出来なくなり、最終的には胴体も痺れて動けなくなった。
「……意外とやわらかかったな」
「だね~。確かリースキットに出現したやつは心斗君と相討ちで倒されたはずなんだけど……」
「今回はカエデが優秀だったのもあるけど……確かに柔いな」
「ゆ、優秀……」
なんかカエデが少々照れてるっぽいけどまあいい。今度は岩龍を狩りに行かねば。地雷さえ発動させちまえばあとはタコ殴りだ。
なんてことを思ったとき。俺の後ろから急に何かが現れた感覚がした。
「心斗君、後ろっ!」
「…………っ!」
俺は勘でとっさに右に旋回して避ける。そのまま背中に戻していたバズーカに手を伸ばす。が、しかし目の前に現れたものに俺は驚愕を隠せなかった。
それは、確かにさっき撃墜したはずのシーサーペントだったからだ!
「なんでだ!?」
「わからないよ!」
……妙に毒が回るのも早かったし脆かったとは思ったかが……まさか復活するなんて思わねぇだろ! そんな文句を言いながらも俺は再び遠目からバズーカをぶっ放して攻撃。今回は最初から顔面だけを狙う。
が、しかし。バズーカの弾はシーサーペントにあたる前に何かにはじかれ、その場で爆発してしまった。
おそらく魔導障壁とかその類だろう。
「だったら!」
腰から短剣を抜き放ちそのまま突っ込む。シーサーペントは風魔法を放ってきたが直線的な攻撃だったので最低限の回避行動でどんどん突っ込み、そのまま剣で眉間に一発入れる……はずだった。
俺が突き立てたその時、急にシーサーペントの姿がなくなり、そのまま”敵”がいた場所をすり抜けてしまう。
「なっ!?」
まさかこれは幻影なのか……? だけどさっきの風魔法はしっかり攻撃魔法だった。だけどすり抜けたということは絶対に幻影のはず。一度攻撃を真正面から受け止めて判断してみよう。
そこで俺はある程度距離を取って相手が攻撃してくるであろう場所でわざと棒立ちになってバズーカを構える。するとどうだろうか、素直な幻影はこちらに向かって今度は水魔法を放ってきた。
「心斗君!? 【魔導障壁】」
「……お前が受け止めるんかい」
自分でも魔導障壁は張れるから張ろうとしてたら横合いからカエデが俺の前に躍り出て真正面から水魔法を【魔導障壁】受け止める。
「どうしたの? 魔力切れ?」
「アホ、だったら空飛んでないわ。さっき俺がすり抜けただろ? だから本当に幻影なのか確かめるために真正面から受けてみようと思ったんだが……」
「そうだったんだ。もう、そういうことなら私に一度相談してくれても……」
「しょうがないだろ」
そのまま俺たちは再び二手に分かれる。線化してもう一度攻撃をかわしながら攻略の一手を考える。おそらく相手は幻影で間違いない。アンデッドじゃあない。だったらどっから魔法撃ってる。幻影の魔法は形がない目くらましみたいなもんだから普通直撃してもなんのダメージもないはず。だけどカエデは押され気味で受けきった。押されてたということは魔法は形があるということ。だったらどっかに形のあるものがあってもいいはず。
そう考えながら俺は再びシーサーペントの幻影に近付くと逆手に持った剣を押し当てるように振る。するとどうだろうか、やはり俺は虚空を切るようにすり抜けてしまう。しかし、俺はとある大収穫をした。
そう、俺がすり抜けた先には赤い1つの球があったのだ。スーパーのお菓子コーナーで売ってるモ〇スターボールを2倍にしたくらいの大きさだが、そこからはしっかりと魔力が感じられた。
「そうか……あの球っころから魔力で幻影作って魔法撃ってんのか!」
つまりあの球を通じて他のやつが魔法を撃ってる。シーサーペントの幻影はしっかりとした形だからピンポイントでそこがすかされなければまずバレない。
だが、こちらはすでに球の位置はわかった。丁度角の真下の腹部分だ!
「カエデ、今から俺があそこに突っ込む。そしたらあそこらへんに赤い球体が見えるはずだ。それを破壊してくれ!」
「了解だよ!」
その掛け声と同時に俺は再び幻影の真正面から突っ込む。シーサーペントの幻影は噛みつき攻撃をする構え。すり抜けるはずであるが一応警戒してそれを全て躱して角の真下にある胴体に思いっきり突っ込む。
それを待っていたかのようにカエデもしっかりと俺の後ろにぴったりとついてきている。
腰からもう一度短刀を取り出し、逆手に持って……すり抜けた瞬間に見えた球体にすれ違いざまに刃を充てる。……固い。この一発では破壊できそうにないが……後ろから。
「はぁぁぁぁぁ!」
どこから取り出したんだと聞きたくなる太刀を取り出しそれを掲げて突っ込んできたカエデがそれを一刀両断する。
……このままじゃ再生される可能性がある。
「【ソードビット】!」
実は肌身離さず投げナイフとして使っていたナイフたちに魔力を送って指示を出す。鈍っているのかどうかわからないが少しフラフラとした軌道で5本のナイフは俺が思い描いた動きを見せ複数回2つに割れた球体を攻撃し木っ端みじんにする。
小規模の爆発が起きて、しっかりと球体はなくなったと同時にシーサーペントの幻影はなくなった。
その頃青龍村上空
「や、やっぱ高いぃぃ!?」
「……お前自分から行くって言ったべ?」
「はぅぅ……これ、大丈夫なんですかぁ!?」
『……僕、しらないからね』
1匹の龍と3人の人間が騒いでいた。




