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第114話 武族の里 3

「……あの~」

「……」

「なんか喋ってくんない!? さすがに怖いわ!!」


 戦闘部族・ルーマー族、その長の家についた俺はとあるご老人の前に座らされていた。言っておくが普通のお爺さんじゃない。

 歳を取るなんてことを知らないようなムキムキマッチョの巨体、そして俺を貫いてもなお勢いが衰えることがなさそうな視線を向けるこの人こそ、この部族の長という人物である。


そんな長はやっと口を開けると……。


「……やらぬ」

「は?」

「ユエルは、ユエルは貴様なんぞに渡さぬぞ!!」

「なんでそうなった!?」


 次の瞬間、親バカ……ならぬ爺バカを発動させていた。このいきなり展開に俺も大声でツッコミを入れるしかなかった。しかもその迫力がすごいすごい……一瞬吹き飛ぶかと思った。


「と、倅夫婦は憤怒していたがの……」

「あんたの息子さんたちの話かよ!?」

「まー、別にワシはそこらへんどうでもいいんじゃがのぅ」

「いや、さすがにそこは少しだけでも気にしてあげてください……」


 どうやら今のは長の息子さん夫婦の会話を真似したものだったようで……あ~、びっくりし……ん?


「もしかしてユエルって長のお孫さんだったりします?」

「ん? そうじゃが……なにか問題でも?」

「いや、ないです……」


 俺が気になるのはよくこんなムキムキマッチョのボディビルダーみたいな怪人の子孫にあんな容姿端麗なのが生まれたな……ってことなんだけど。まあいいか……異世界ってことで済ませちゃえ~。


 ……でも気になるわやっぱ!!


「まずは……ユエル、孫を助けていただいてありがとう冒険者殿」

「いや、こっちもいろいろ振り回してしまったなぁ……」

「それはしょうがないじゃろ、誰にだって都合というものはあるものじゃ」


 そう言ってくれれば助かるんだよなぁ。なにかと戦闘に巻き込んだ思い出しかねぇし。一緒に旅できたのは楽しかったが……でもなんか戦闘と食のことが大半をしめているような気がするのはどうなんだこれ。サバイバルとか、泳ぎ教えるとか。ろくな思い出じゃねぇな。


「そして、ここに来るまでに同胞が冒険者殿を傷つけたようじゃが……我々はほとんど外の世界との関わりを持たぬ部族ゆえ、外の世界には疎いのじゃ。許してほしい」

「いや、普通奴隷になった同胞連れて縄張り来たらそうなるから別に文句言えないけど……」


 とにかく言えることは「死ななくてよかった」ということ。急に体勢崩れて目の前が真っ暗になったときは死んだと思ったけど……。


「して、お礼なのじゃが……」

「あ、ああ。魔力の回復方法を教えて欲しいんだが……」

「ユエルから聞いておる。ワシでも信じられぬ程の魔力をもっておきながらそれが空……おそらく”深紅の呪い”じゃな」

「な、なんじゃそりゃ」


 要するに呪いにかかって魔力が回復しなくなったということはわかった。でも詳細がわからない。そういってみたところ、何かがかかれた資料のようなものを差し出してくれた。


「これは我々の祖先が残した秘伝書じゃ。そこに”深紅の呪い”のことが書いてある」


 そう言われたので、秘伝書やらを開けてみると……失礼だが俺でも書けそうな絵が連続して記されてあった。おそらくは絵文字というものだろう。


「それによると、魔力欠乏症がより悪化した状態、そしてなんらかの方法で自身の魔力量よりも多く魔力を使用した時に起きる現象じゃな」


 通常、魔力は使い切ると回復するまで魔力が使えなくなる。そして俺がたびたびお世話になっている魔力欠乏症は一気に魔力を使ったことによる後遺症のようなもの。それを悪化させたのがこの”深紅の呪い”と言われるものらしい。

 もう一つ補足すると、自身の力量を超えて消費するということは理論上不可能だ。からっぽになったらそれ以上なにも使うことができないのだから。

 

 ……しかし、俺はこれについてだけ心当たりがあった。



『これ、いくら魔法使っても魔力なくならないんだよなぁ』


 そう、【超覚醒】である。いくら魔力を使う魔法でもスキルでもなにも消費せずに発動させる謎スキル。考えられることは、それで自身の魔力量をオーバーして使って……ということだろうか。

 いや、そこで使ったのを”後払い”させられていたのか……?


「ひとまず、その【超覚醒】というのが引き金になったっぽいなぁ」

「ふむ……話を聞いている限りそうじゃな」


長もそう言っているし、これ以外に可能性なんてないだろう。それに【超覚醒】途切れたとき、気を失って3日くらい起きなかったし……。


「ち、ちなみにこれ、回復方法とかってありますよね……?」

「もちろんあるぞい。たま~に似た症状になる者もおるゆえ、準備は怠っておらぬ。一部を除いて」


 おお、それは助かる……すぐにでもこの魔法フラストレーションから解き放たれたいんだ! い、いますぐだ今すぐそれをくれ!


「して、方法じゃが……」

「な、なんだ? なにするんだ?」

「単純に薬を飲んでそこから修業を再開するだけじゃ。まあ急なことじゃったから薬の原料のキングスネークが足りないんじゃが……」


 待て……スネーク? 蛇、へびだよなぁ……やだよ? 俺は蛇とは戦わないぞ!?


「別にキングといっても15mくらいの蛇じゃ、冒険者殿でも余裕で倒せるじゃろぅ」

「や、やめてくれ……蛇だけは勘弁してくれ!」

「まさかとは思うが……蛇が苦手だったり……」


 ええ、はいその通り! 沖縄でハブに噛まれそうになってからというもの、俺は蛇が大の苦手なんですねぇこれが! しかも凶暴な体調15m以上のキングスネークを相手にするとかやってられるかよ!

 ち、ちなみにそれ以外の方法というのは……?


「あるわけないじゃろ」

「で、ですよねぇ……」

 

  こうして、俺はっ……! 魔力を回復させるための試練として……蛇を倒しに行くことになってしまった……!



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