第110話 サバイバル・アイランド 5
さて……残るは俺たちとチームヤング島主となった。期限はあと1日ほど。それまでにどう攻略するかを考えなければならない。
「まずはこの渦潮の中を突破出来たらなぁ!」
「……これは?」
「渦潮だよ渦潮っ! 巻き込まれたらヤバいやつヤバいやつ!」
結局島の北側で落ち合った俺たちは船で自陣へと帰ろうとしたのだが……四方を渦潮に囲まれてしまった。ちょっとでも動けば飲み込まれそうだ……怖い!
「いっそのこと、船捨てますか?」
「溺れるわ! むしろ溺れるわ!」
「じゃあ……収まるまで待つのですか?」
「それしかないねん!」
「それじゃ……釣りします?」
「出来るかボケ! 海流の流れ見ろッ!」
こんなピンチ、何もわからないユエルはいつもの如く魚を食べたそうにしている。そこまでハマったか刺身に。
「とりあえず……巻き込まれないことを祈って作戦考えますか……」
なんて思った瞬間。俺の横合いから何かが飛んできて……。
「うおっ!」
俺の側頭部に激突した。かなりの衝撃だったので持っていかれそうになったが踏ん張ってその元凶をキャッチ。するとそこには……。
「はぁ!? トビウオ!?」
そう、横合いから俺に頭突きをかましてきたのはトビウオだった。あ、しかもこいつ魔物やん……魔物のトビウオなんだから空飛べよ。
「ご主人様……その魚は……」
「トビウオ(魔物)だな。焼いてよし、出汁によしだ」
「刺身は……」
「知らん」
まあおそらくあるんだろうけど……と思っていた瞬間、左から怖ろしい数のトビウオが飛んできた!
「うぉわ!?」
「……え?」
海面から飛び出しては俺とユエルの周りをヒュンヒュンと音を立てて飛んでいくトビウオ。試しにナイフ突き出してたら何匹かヒレを斬られて船内に落下してきた。
……ってか待て待て! よく渦潮の中泳げたな!
そんなツッコミもむなしく。俺たちは魚の嵐と渦潮の脅威からただただ耐えるしかなかった。
〇 〇 〇
3時間くらいたっただろうか。ようやく渦潮もトビウオの嵐も過ぎ去って。俺たちは本拠地に帰れることに。
しかし、そうはさせじとする者がいた……。
それはあともうちょっとで自陣があるという海上でのことだった。
もうちょっとで夕方。腹ごしらえの為に先ほどのトビウオの魔物を解体して刺身にしていた。魔物の魚肉って刺身で食っていいものなのかとも思いながらだが。
「多分、大丈夫です」
「多分じゃん! しっかりそこは大丈夫って言ってよ!」
とツッコミを入れたその時! 俺の空間把握能力(仮)がなにか接近してくるのを捉えたのだ!
「何か来るぞっ!」
「え……?」
魚じゃない……? サメ……だったら尾びれが海面に出てる。クジラでも……じゃない、人だ!
「ユエル、敵だ!」
「海中からですか!?」
「ああ! 相手は島国の人、泳ぎは得意なはずだ。油断してた!」
というか誰が海中で攻撃を仕掛けて来るなんて思っただろうか。よっぽど泳ぎに自信がないと出来ないだろう。ひとまずこのままでは船に上がられる……迎撃するしかない!
「ユエルは……」
「私は船の上から迎撃を」
「了解! 俺は海中で迎え撃つ!」
そこまで泳ぎは得意じゃないけど、やらなければいけない。引き籠ってた時に水中戦闘の基本はちゃんと覚えた。それを実行すればいい!
「よし、行くぞ!」
俺は短剣を持って水中へダイブ。短剣を両手で持ってけのびの姿勢で泳ぐのだ。基本はドルフィンキックかバタ足。
水に入った直後、俺は直感で右に進路を変えると、さっきまで俺が居た場所を銛が駆け抜けていった。
(俺の腕輪の場所とほぼ一緒!?)
地球時代、いつだったか忘れたが銛を使ったことがあるがここまで正確に突いてくるとは……やりおる!
相手は総力戦で来ていた。つまり4人全員来ているという事だ。俺の正面に2人。後方に2人。そのうち2人は船の方面に向かって行った。ということは俺の相手はこの2人という事だ。
フィールドは相手の方が有利。しかも中距離から攻撃できるのか。だったらやっぱ間合いに入るしかないよなぁ。
俺は後ろから迫ってきた銛の一撃を避けて真正面に居る1人に突っ込む。もちろん逃げられた。相手フィン付けてんじゃん。ずるいわ。
(確か船にフィンあったよな……)
機動力アップのためにもつけたほうがいい。そう思って船の方に泳ぐ間にも銛が迫ってくる。それを水中バク宙でかわし、一度海面に出て息継ぎをしてから船の方面へ。
……わかったが、銛を一度射出すると絶対に10秒前後は攻撃が出来ない。それをうまく生かすしか勝ち目はないだろう。さて……どうするか。
もうちょっとで船。手薄な船尾から船に手を付けユエルに敵でないことをアピール。そして船に上がる。
「ユエル、そっちはどうだ!」
「なんとか抑えているます」
という説明を受けた瞬間に1人が船に上がってきそうになる。チャンスだ!
そう思い投げナイフを投げるが、それに気づいたらそいつは潔く船から手を放して水の中へ。
「……モグラたたきか!」
この程度の攻撃ならユエルがやられることはないと判断した俺はフィンを装着。手は付けられないが足にはしっかりとつけておく。
「よし、もういっちょ行って来る!」
ちゃんとつけれたのを確認した俺は再び海の中へ舞い戻る。そして俺は敵に向かう前にとあることを思い出した。
(待てよ……もしあそこに誘い込めたら勝てるんじゃないか……?)
……いや、もしかしたらじゃない。あの地形を使えれば絶対に勝てる!
なんで思いつくのがこんなに遅かったんだとは思いながらも再び船に引き返す。
(さあ、チェックメイトをさしに行こう!)




