第1話 始まりの1ページ
突然だが、あなた方は異世界を信じるだろうか?
おそらく“今までの”世界なら、絶対に信じないことだろう。
しかし、今、地球……1つの惑星の人類の一部が、魔法という革新的なものを得ている。
もう否定する人物はいないだろう。
では、異世界がどういうところかを知っているだろうか?
目で見て、肌で感じたことはあるだろうか。
……ないだろう。
しかし、私は……いや、私たちは、その“異世界”を目で見て、肌で感じて、一生懸命駆け抜けた。
知っているだろうか、満足に治療ができず、疫病一つで壊滅するほど、もろい世界を。
知っているだろうか、日々命がけで獣を討伐する人たちの姿を。
知っているだろうか、地球の比ではないスラムの多さと、貧困に苦しむ子供たちの姿を。
知っているだろうか、神の名のもとに市民を苦しめ、益を欲する上人を。
知っているだろうか、その世界の命は、脆く、儚くて、美しいことを。
知っているだろうか、あの神々しい、夢のような世界を。
知っているだろうか、なにもない地平線に昇る美しい太陽の姿を。
知っているだろうか、今日を、明日を生き抜くために必死になって戦う者の姿を。
これは、昔の出来事。
私たちが、精一杯、一生懸命、走りぬいた異世界での物語――