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45.労い

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 どこまでも高く澄みきった青空。

 雲ひとつない空の下では、ケヴィン主催のちょっとした焼肉パーティーが開かれていた。


 帝国での諜報活動を労う焼肉パーティー。

 諜報員達は帝国での諜報活動のほか、冤罪の首謀者である第一皇子と貴族らの追跡。

 その時、何故か城壁が消え去って第一皇子や貴族を捕まえ易い状況となった。

 そして諜報員達は首謀者に直接手を出すことはなかったが、住民達や各ギルドが依頼した冒険者や暗殺者が首謀者らを捕縛に至るまで影ながらサポートに徹した。


 結果、第一皇子と事件に関係した『リスト』に名を連ねた者達は全て捕らえられ、被害者の仲間や家族達の手によって処断された。

 首謀者らを捕らえた時、皇帝や他の貴族達に住民達を咎めたり、そのことで騒ぐ者は誰一人としていなかった。


 また今回の冤罪事件の件だけではなく、諜報活動によって多くの希少な情報を手に入れることが出来たのである。



 銀狼族達は美味しそうに焼肉を頬張り、楽しげに笑う。

 その中心では何故かお子様組の三人がおり、互いの肉を奪い合いながら食べていた。


 そんな和やかな雰囲気の中、銀狼族の長ベクターは申し訳なさそうな表情でケヴィンの向かいに座り、帝国でのことについて報告をしていた。


「なるほどな。そういう話なら、しばらくは様子を見ておくか」

「はい、その方がよろしいかと。それと主人殿、今回の件とは別で一つご報告がッ!」

「ん、何だ?」

「実は、帝都で主人殿が。その……いつの間にか神様と呼ばれておりまして……」


 ベクターが言いずらそうに報告。

 その報告にいち早く反応したのは隣に座っていたティアだった。


(ちちうえぇぇぇぇ!?ちゃんと報告するで御座るぅぅ!いつの間にかじゃなくて、主人殿が神様と呼ばれるようになったのは完全に父上のせいで御座るぞォォ!)


 ケヴィンは焼肉を摘みながら呆れた顔で、

「――あー!それね、多分金色の騎士の連中のせいかな?ま、その内、皆忘れるだろ」

「そう、ですね」


(主人殿ぉぉぉぉ!?違うで御座るよぉぉ!そいつが犯人です!犯人が目の前にいるのです!父上も「そうですね」じゃないで御座る!流石に皆、忘れないと思うで御座るよ。だって、だって……本になって売られていたから、皆そう簡単には忘れないと思うで御座るぅぅ)


 ケヴィンはベクターの報告を軽く受け流していた。

 彼の今後に大きく影響を及ぼし兼ねないことなのに、まるで明日の天気でも聞いているかのように軽く。


 金色の騎士達がまたやらかしたのだろう、と軽い小火程度に考えていた。

 しかし今回の火種は向かいに座るベクター。

 商業ギルドに設けられた祭壇で、ついうっかり、神様の名前はケヴィンと答えてしまったのが原因。


 その火種はケヴィンの想像以上に燃え盛り、今や一冊の本になるほど大炎上していた。


 帝都エクレアでは名前だけは周知され、民衆を導く神・ケヴィン神と崇められていた。

 場所が金色の騎士が拠点としていた帝都だけに、これ以上広まらなければいいが……


 何事もなかったかのように焼肉を美味しそうに食べるケヴィン。そんなケヴィンを前にティアは右へ左へと顔を振り、一人であたふたしていた。


 ティアを見てケヴィンはトングで肉をとりながら、

「ん、ティア。迷ってんのか?!迷った時は全部食ってみた方がいいぞ!育ち盛りなんだから、ほら遠慮せずに食え!美味いぞ」

「あ、主人殿……かたじけないでござる」


 ティアの反応を見てケヴィンが勘違い。

 どうすればいいのか悩むティアを、仕上がっていく焼肉に目移りしていると思い込み、皿に肉を山盛りにしティアに差し出す。


 そんなケヴィンの優しさに、ティアは考えることを放棄し、ただ受け入れるのであった。



 焼肉パーティーは盛り上がり、お子様組を囲む集団に当たり前のようにいる狂信者の四人。


 彼らは先日、自力で遺跡までやって来て、既にここに住み始めていた。


 流石冒険者というべきか、集落の住民達といち早く馴染み、何食わぬ顔で住民達と共に行動し、生活をしていた。


 許可を出したのはケヴィンだが、まさか遺跡まで自力でくるとは思ってもいなかった。

 ケヴィン以外では人族初の遺跡への自力来訪者。

 Sランククランの底力を発揮した。


 イジー達狂信者四人に加え、クランメンバー三十人が現在、集落へと拠点を移している。

 帝都に残っていた他のメンバー達も冤罪事件後にリエラ王国王都へと拠点を移し、冒険者として活動をしていた。


 集落に住み始めたクランメンバー達は狩りや畑作り、戦闘班での指導を精力的に行っており、実際にケヴィン達は助かっていた。


 魔物達や獣人族達の過去を考えると、心配していたが上手くやっているようだ。

 ケヴィンは彼らを見据えながら、ディーケイへ問いかける。


「なぁ、ディーケイ。あいつら魔物達と普通に話してないか?」

「えーと、そういえばそうですね。人族では魔物達と会話するのは難しいはずですが」

「ディーケイが何かした訳じゃないのか?」

「いえ、私は何も。あっ、もしかして!マスター、彼らの魔力を観てください!」

「ん、魔力?――うおっ、あいつらいつの間にか仲間になってるぞ?魔力の色が青になってんぞ。どうなってんだ?」

「さ、さぁ。私にもサッパリです。忠誠を誓う儀式は人族には伝わってないはずですし、知っていても出来るかどうかは別です!恐らく人類史上初めてのことかもしれません」


 魔物達や獣人族が行う忠誠の儀。それは自らの魂を捧げ生涯の忠誠を誓う儀式。

 人族ではそれが出来ない為、従属の首輪や奴隷契約のような魔法や魔術道具が開発された。


 しかし彼らは何故かケヴィンへの忠誠の誓いを済ませており、ケヴィンの配下となっていた。


 ディーケイはこの件について、しばらく思考を巡らすが「愛ですね」と意味不明の結論を出す。


 斜め上の応えに頬を引き攣るケヴィン。


 そんな話をしていると、当の本人達がやって来た。


「神様、私達が焼き上げたお供え物です!是非ご賞味ください!」

「そんなに食えねーよ!大食いファイターじゃねーんだから!」

「ん、私の言った通りになった!イジー、死を持って償う!」

「怖ぇーよ、その発想!普通にしてくれ、普通に。魔物達達とは普通にやれてんのに、何で俺が絡むとそんな風になんだよ?」

「神様、私達にとって神様と同じ空気を吸えるだけでも奇跡。他の皆と同じように接することは教義に反します」

「いつ出来たんだよ、そんなもん!」

「ハッ、先日ディーケイ殿と打ち合わせをして決めた次第です」

「おい、ディーケイ?」


 ケヴィンがじと目でディーケイを睨むと、すっと視線を逸らすディーケイ。


 この四人にディーケイの組み合わせ。

 ケヴィンにとっては最悪な組み合わせだった。


 元々ケヴィンを神のように崇めるディーケイ。

 そのディーケイに外部から信者が入信。

 夜な夜な集会が開かれ、ケヴィンの知らぬ間に布教活動の為の準備がされていたのである。


 これまで集落内で収まっていた活動がSランククランの狂信者達によって、いよいよ外へと向けて羽ばたこうとしていた。


 ケヴィンが始めた王都での教会建築。

 リヴが四人に自慢気に話した神様。

 ベクターが祭壇でうっかり反応してしまった件。

 そして元々ケヴィンを神様と崇めるディーケイと四人の出会い……


 それぞれ別の場所で起きた出来事。

 それが現在、複雑に絡もうとしている。


 勿論、ケヴィンには神と呼ばれたいという気持ちは全くない。

 むしろ集落に引きこもりがちなケヴィンは、静かに過ごしたいと考えている。

 しかしケヴィンの思惑から外れ、仲間達が起こした不用意な行動によって神として担ぎ上げられようとしていた。


 そんな状況でケヴィンの神格化を更に過熱させるような事が起きる。


 ケヴィンが焼肉を食べていると、左腕に嵌めている宝具が淡く光を帯び始め……

読んで頂き有難う御座います。


残り5話。ようやくここまできました!

とりあえず書きたかった内容は完結まで書きました!


次話からは……そうです。それです。


――皆さまへのお願いです。

面白い、続きが読みたい。と思って頂ければ幸いです。書いている時はそんなモチベーションだけで書いておりますので。



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