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41.冒険者 3

 41


 ――リヴィアの雫・和室


 御馴染みの和室では急遽会食が開かれていた。


 参加しているメンバーはケヴィンとディーケイ、エレインとマティス、そして冒険者ギルド長のグレイの五人。


 イジーがギルドで報告をした日。

 グレイはすぐにケヴィンと連絡をとり、急遽この会食が開かれたのである。


 座卓には既に美味しそうな品々が並び、料理を楽しみながら話をしていく。

 グレイはイジー達から説明を受けた内容を一通り説明をしていくと、ケヴィンが口を開く。


「やっぱり遺跡の話は帝国から流されたみたいだな」

「閣下、それはどういうことでしょうか?」

「ん?あー、そうか。この件について一から説明すると、まずサンドエルが帝国から情報を盗んだと言ってた遺跡の話自体、帝国が意図的に流した情報。つまり諜報がいるのを知っていてわざと流した情報ということだ」

「なるほど、だからケヴィンさんは帝国が動いてくると言ってたんですね」

「ケヴィン殿、帝国は何故そのようなことを」

「帝国が他国で動けばどうしても目立つ。まぁ、そもそも他国だから大々的には動けない。だからリエラ王国を動かして、あいつらに調査させ、それで情報だけ抜いていたんだろうな」

「マスターが仰る通り、王城には帝国の諜報が動いております。偶々王城で見つけた時にそいつらから吐かせたので間違いありません!」

「ディーケイ、貴方。何してんのよ?」


 エレインがディーケイに呆れた眼差しを向ける。


 ディーケイは調べものをする時にはよく王城を利用しており、彼にとっては堅く守られた城というより、本や資料が沢山ある便利なところという感覚で足を運んでいた。


 ディーケイが聞いた話によると帝国が情報を流したのは約半年ほど前。

 その後ハルナ達、ケヴィン達を召喚。

 経緯を追うとサンドエルがいかに宝具を手の内に収めておきたいのかが分かる。


 そして話題は今後のことについて。

 まずは帝国の冒険者ギルド長から徹底して調べていくことになった。

 ここで先日完成した録音録画機能を持つ魔術道具の実績投入である。


 ディーケイがその魔術道具について熱く語り出す。

 その間、皆は食事を楽しんでいた。


「あっ、ディーケイ。そういえば帝国へ行く時に一緒にベクター達を連れて行ってくれ」

「銀狼族の皆さんですね。ということはマスター、帝国でも諜報を?」

「あー、今回の件に関してだけだ。ベクター達な、毎回顔合わせる度に仕事がしたいってうるさくて。最近なんかは皆、凄いアピールしてくるし、結構大変なんだこれが」


 真面目な気質の銀狼族。

 以前に諜報の仕事をしていた者達は早朝から訓練室に足を運び、訓練に汗を流している。


 そして彼らは料理にもどっぷりとハマっている為、一日のほとんどを訓練と料理に時間を費やしていた。


 そんな彼らはケヴィンを見つけると、すぐに駆け寄って、自らの術を見てもらう。

 ケヴィンが悪い点を指摘すれば鍛練を続け修正。

 そんなことを何度か繰り返すうちに、彼らの諜報技術はケヴィンの求める技量までに至る。


 そうなると今度は磨いた技術を試したくなるのだろう。

 ケヴィンとの会話に「いつでも行けます!」といった旨の内容を混ぜたり、さり気なくケヴィンの好みそうな情報を出し「詳しく調べます?」といった雰囲気を醸し出す。


 直接的な言葉ではないところが彼ららしく、ケヴィンにはその様子が可笑しくて笑ってしまいそうになる。

 それだけなら微笑ましい。

 問題なのはその人数であり、十数人が皆、ケヴィンと接する時に同じような行動をするのでケヴィンは対処に困っていた。


「ケヴィン殿、諜報を出すのであればお気を付けください。今回は裏に貴族連中が動いているかと思いますので」

「彼らなら心配ない。まず見つかることはないだろう」

「私もティアさんの術見ましたが、あれ見たらグレイさんも驚くと思いますよ」

「それほどの内容ですか、是非拝見したいものです!」


 そして話題は依頼した貴族について移っていく。


 ケヴィンとエレインの口から消す、潰す、切り落とすなど物騒な言葉が飛び交い、聞いていたグレイは苦笑い。

 結局、貴族については得た情報を精査し、その内容によって判断することになった。


 実際、ケヴィンは貴族に対してそれが出来るほど、戦力が整ってきている。

 そしてエレインも人脈を使えば、リエラ王国内にある領なら武力を使わずに大打撃を与えられるまでの影響力を持っている。


 そして今回、運悪く巻き込まれてしまったSランク冒険者、イジー達の話が出る。


「彼らを巻き込む形になって悪いことしたな。情報をまとめたらお詫びの品でも用意しとくか。グレイさん、何がいいと思う?」

「えーと、ケヴィン殿が会うだけで充分です!」

「そ、そうね。閣下が会うだけでいいかもしれません!」

「私もそう思います!」

「いやいや、それじゃ駄目だろう。ん?――何故視線を逸らす?何かあるな、ん?」


 ケヴィンはホロ鳥のから揚げを頬張りながら三人を追及する。


 しかし三人とも、最もらしいことを並べてケヴィンの追及を上手に躱していく。


 グレイは勿論、彼らとは冒険者ギルドで会っており、その病的な症状を充分把握している。


 エレインとマティスの二人も、実は会食が始まる前に彼らと一度会っていた。

 会食が始まる前、ハルナに紹介される形で会ったのだが、彼らは正装としてケヴィンと同じ黒スーツを着て挨拶に来たのだ。

 そしてケヴィンを神様と崇めていることも、その時に知ることとなったのである。


 二人はケヴィンが来る前に色々と準備をしなければならなかったこともあり、長く話すことが出来なかったが彼らを一目見て分かった。

 信者だと。


 彼らと別れたあと、エレインとマティスの(被害者の)お茶会メンバーである二人が脳裏に浮かんだ言葉が……

『とりあえずケヴィンには黙っとこ』


 いつもはケヴィンに問題児達を押し付けられ、あたふたしていたエレインとマティス。

 しかし今回は逆。

 二人はケヴィンが彼らに会い、その時のケヴィンの反応を想像するだけでもニヤケしまう。


 ほくそ笑む二人。

 周りがそんな風になっているとは知らないケヴィンは次々に料理に手を伸ばす。




 ◇◆◇




 会食を終え遺跡へと戻ったケヴィンとディーケイ。

 二人はそのまま訓練室へと足を運ぶ。


 訓練室に入ると遅い時間帯にも関わらず、まだ訓練を積む者達の姿。

 結構な数がいる。

 その中には銀狼族達もおり、ケヴィンは彼らに歩み寄っていく。


 ベクターに声をかけ、帝国の冒険者ギルド長への諜報を頼む。


 すると……


 ベクターはまるでゴールを決めたサッカー選手のように、両膝を床につけ両拳を天に向けガッツポーズ。


 何事かと集まって来た銀狼族。


 ベクター歓喜の姿、その理由を聞くと彼らもまたベクターと同じようなポーズをとる。

 遂には銀狼族達全員がその姿に。


 彼らの前ではケヴィンとディーケイが、何を見せられているのだろうといった顔で固まっていた。



 銀狼族の皆が落ち着いてから、諜報についての詳細を話すケヴィン。


 帝国へはディーケイと一緒に転移魔法で行き、目的は冒険者ギルド長が出した擬装依頼の証拠品の回収。

 そして依頼した貴族に関する情報。


 ディーケイには一日一回は帝国へと行き来してもらう。


 銀狼族はローテーションを組み、一日に一回は必ず集落に戻り、家族との時間をしっかり過ごすことを言い渡す。

 これは真面目な彼らのことだから、諜報へ行った時に仕事ばかりの状況になるのを懸念し、諜報へ行く条件とした。


 話を聞いている銀狼族の皆は喜色溢れる表情を浮かべていた。


 彼らの話を聞くと、先行して集落に来ている子供達が日に日に変わっていき、親としてそれがとても嬉しかった。

 子供達に友人や仲間が増え、自分達も同じように大切な者達が増えていく。


 そして彼らはいつの間にか、この集落が大切なものとなっており、この集落の為に何か出来ないかと考えた時に、自分達には諜報の仕事しかなかった。


 故に諜報の仕事がしたかったと彼らは語る。


 ケヴィンは彼らの口から言葉として集落への思いを聞き、今までの行動が無駄ではなかったことに安堵し、何よりもこの集落を思う気持ちが嬉しかった。


 ケヴィンと共に集落作りをしてきたディーケイも感慨深い表情で彼らを見つめている。


 銀狼族の行動と言葉はひとつの成果。


 ケヴィン達が魔物達、獣人族達のことを考え集落を作り、道筋を用意した。

 それがこうして結果になって現れた。


 ケヴィンは隣にいたディーケイの肩に手を置き、今日までの苦労を労うように優しい声色で「良かったな」と声をかける。

 ディーケイは珍しく言葉を詰まらせながら「有難う御座います」と小さく呟いた。

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