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35.種族長 2

 35


 ケヴィンが今後の方針を話していく。

 四人の長達はケヴィンが話す内容に初めは驚きながらも次々とケヴィンに質問を重ねていた。

 その間退屈そうにしていたソフィ。

 見かねたケヴィンがティアと一緒に遊んできていいと言うと勢いよく食堂を出て行く。


 解決しなければいけない問題は食料や収入だけではない。

 外敵からの集落の防衛、そして増えていく住民達の住居の問題もある。


 防衛に関しては災害級と言われる魔物達や竜が住んでいるのでそれほど心配はない。

 しかし戦争規模の数を用意され遺跡に攻めて来られた場合はどうしても苦戦してしまうだろう。

 集落が発展していけば手中に収めようとする貴族なども出てくる。

 その辺を踏まえて戦闘班にはディーケイが作った銃を使った集団での戦いかたを教示していくつもりだ。


 四人の長達も戦闘班で銃を使った戦闘を体験しており、銃の有用性を理解している。


「主人殿、あの銃という武器はエゲツないですね!魔力も腕力もない者達でも使え、威力もある。我々緋鬼族は狩猟の民。戦闘には自信があったのですが、力の弱いゴブリン達に負けるとは思いませんでした!」

「ふふふっ、そうよね。私達が使う弓なんかよりずっと使いやすいんですもの!」

「まぁ、あれは俺がいた世界では主流の武器の一つだからな。他にも面白い武器を用意しているぞ」


 銃を使った戦闘に惹かれているのが緋鬼族とエルフ族。

 この二つの種族は現在戦闘班に入り浸っており、現在訓練で汗を流している。


 バーグスとシェリーは銃の話になると明らかにテンションが上がっており、身を乗り出して話に興じている。

 楽しそうに話す二人にケヴィンは、

「戦闘班はあくまでも住民達に日常の中で楽しみを見出す為の一つだからな。参加の強制とかしないで、個人の意思を尊重するようにな!」

 と、釘を刺す。

 二人はコクリと頷くと、再び銃について話し出す。


 住居の方はヴァンから提案があった。

 ここに来て一週間程過ごしている紫狐族達。

 彼らはその間、集落の中をくまなく見て歩き、他種族と交流を持ち情報を集めていた。

 彼ら種族は特に新しい知識への興味が深い。

 そして各々代々受け継がれた書籍や文献などを持ってきており、学者や研究者肌の者達が多く存在する。


 そんな彼らの中には住居建築に興味を持つ者がいるので、彼らにより効率的な建築を研究させてプレゼンをする機会を与えて欲しいとヴァンから懇願されたのである。

 ケヴィンはそれを承諾。

 実はケヴィンも住居建築に関して思うところがあった。


 ケヴィンが所有しているパソコンにインストールした書籍や資料に建築関連のものがあれば、ヴァン達にそれを元に研究してもらうのも面白いかもしれない。

 そんな話をするとヴァンは目を輝かせ、建築以外のものでも異世界の知識を取り入れていきたいと嬉しそうに話す。


 ケヴィンが集落の目的と今後の展望を話し終えると、四人の長達の表情は会食前と比べ明らかに違った。

 表情に生気が宿り、目が生き生きとしている。

 その様子にケヴィンは口端を上げる。

 会食後は種族の者達が中央広場に集まっているというので、長達と一緒に中央広場へと向かう。


 今回集まっているのは総勢六百人ほど。

 皆、緊張した顔つきではあったがケヴィンが話を始めると次第に表情が和らぎ、時には笑いも起きていた。


 ケヴィンは初顔合わせで、このような場は何度も経験し、もう慣れたものである。

 新たな住人達と顔を合わせて言葉を交わす。

 これだけでも住人達の不安は和らぐ。


 いつの間にかケヴィンを住人達が取り囲み、座談会の様になっていた。

 話の内容は多岐にわたり、集落でやってはいけないこと、他の種族達との習慣の違い、班ごとの違いなど様々な質問が飛び交う。

 質問には随時ケヴィンが応えていく。


 そんな中、ケヴィンが何か気づいたような表情を浮かべ、彼らの衣服を見ながら呟く。


「そういえば、今気付いたんだけど。服のことすっかり忘れてた。皆、長旅で服がボロボロだし、子供達なんかすぐ大きくなるから今着てる服なんかすぐに小さくなるだろ?

 誰か服作ったり、直したりするの得意な者はいないか?」

「はいっ、ケヴィン様。私、そういうの好きでよく一人で作ってました!」

「あ、あ、あのケヴィン様。私も得意な方です!」


 その後、十数人の女性から手が挙がる。


 普段衣服に興味がないケヴィン。

 しかし今後必ず必要になってくるのは住人達の着衣だろう。

 そして四種族の中だけでも服作りが好きだ、得意だという者達がこれだけいるのだ。


「よし分かった、それじゃあ服飾班を作ろう!生地はディーケイ、手配してくれ。まず初めに集落の住人達の服作りだ。なるべく着る者達の要望を聞いた上で作って欲しい。それで面倒な注文を言うやつがいたら、教えてやるから自分で作れって言ってやれ!」

「マ、マスター。宜しいのですか?新しい生地は結構な値段がするかと思いますが」

「あー、それは全く構わん!服飾班が住人達の着衣を作り、自分達の作ったものを着る者達が目の前にいる。それが喜ばれれば作った本人達は嬉しいだろうし、やる気に繋がる。

 これは班作りのコンセプトにピッタリと合っている。そして服飾班の腕が上達すれば商品化して収入としても見込めるだろ?だからこれは先行投資みたいなものだ」

「なるほど流石マスターです!」


 新しい服が着られるという話に、住人達から歓声が上がる。というのも服を新調したり出来るのは貴族や富裕層に限られており、普通は中古品を購入したり手直しするのが一般的。


 それにこの集落に住む者達は人目を避けていた経緯もあり、その中古品ですら購入したりするのはハードルが高い。

 顔見知りの流れの商人から購入したり、遠い獣人国まで足を運んだりと服を一つ買うだけでも大変なのである。


 新しい住人達は新しく始まる生活に期待と楽しみを見つけ心から喜んでいた。

 その後も座談会は続き、夕暮れ時まで笑いを交えながらまったりと時が過ぎていく。



 ◇◆◇



 その日の夜。

 古代遺跡の一室にてその会合は密かに開かれていた。


 お馴染みマスター会である。

 今日はいつものメンバーに加えティアも参加している。

 ティアはここ最近、お子様組のお目付役兼遊び相手のポストについていた。


 アイシャがこほんと咳払いをし「それでは今日のマスター会をはじめます!」と宣言。

 待ってましたと言わんばかりにパチパチと拍手が室内に鳴り響く。


「今日はマスターからいい話が聞けたのです!マスターはいよいよ国外にも手を出すつもりのです!」

「おぉ、国外制圧ですね?」

「ち、違うで御座るよ!ソフィ殿、ディーケイ殿。主人殿が仰っていたのは輸出で商品を大量に売り出し、集落の収入を増やすという話で御座る!」

「ヘェ、そうなんだぁ。でもそっちの話も面白そうだね!」

「……」

「商品ですか……商品、商品」


 ソフィとディーケイによって話が大きく逸れてしまうところをティアが修正。

 そして商品を売る話にアイシャが考え込むと皆同様に思考を巡らす。

 いつもより慎重なメンバー達。

 それもそのはず、ティアを除いた四人と一匹は最近やらかしているのである。


 そのやらかしてしまった出来事というのが貴族の屋敷で書類を回収するお仕事。

 ケヴィンにあれほど『目立たないようにしろ、屋敷は壊すな!』と言われたにも関わらず、皆うっかりと半壊させてしまったのだ。


 何とか誤魔化したがエレインには気付かれてしまっている。

 ケヴィンが気付くのも時間の問題かもしれない。


「そうだ、マスターをモチーフにした商品を作りましょう!マスターの名声と共に売り出せばそれだけで御利益があるし厄除けにもなるわ!」

「おー、アイシャにしては良いアイデアなのです!」

「良いね!僕達のマスターなら絶対買う人が多いと思うよ!」

「……」

「あの主人殿の許可を頂いてからの方がいいと思うので御座るが」

「それは大丈夫なのです!マスターは売れそうなものがあれば何でも売ってみる方がいいと言ってたのです!」

「確かにそう言ってたで御座るが」

「もし怒られそうになったらエレインのせいにすればいいのです!ソフィ達の配下だから主人の為に怒られ役をするのは当然なのです!」

「そうね、エレインなら怒られてもいいわ」

「うん!エレインもたまには怒られる側になってみるのもいい経験だよね!」

「あっ、それならエレイン殿を商品作りに巻き込んでしまうのはどうでしょう?そうすればこの問題は解決するはずです!」


 お子様組のエレインの扱いがとにかく酷い。

 完全にオモチャ感覚なのである。

 彼女にイタズラをすれば良いリアクションが返ってくるし、見ていて飽きがこない。

 エレインはお子様組の遊び道具化していた。

 エレインにしてみれば迷惑な話である。


 こうして本人の承諾なくケヴィンのグッズ作成が決まっていく。

 どのようなグッズを作るのか?


 あーだこーだと話し合いを重ねた結果、お子様組達は完全に暴走してしまう。

 商品候補として可愛くてカッコイイぬいぐるみ。財布などにも付けれるようなキャラクターフィギュアなどが候補に挙がる。


 しかもケヴィンがゆるキャラ的に可愛い感じにデフォルメされ、その手には何故か死神が使うような大鎌を持っている。お子様組曰くこれがカッコイイのだという。


 テーブルに散らばるデザイン案を見つめメンバー達は満足気な表情を浮かべている。


 グッズの話が終わると話題は移っていく。


「教会と孤児院の建築が終われば、いよいよお城の建築ね!」

「お城で御座るか?すごいで御座るな!」

「あっ、ティア殿。マスターの前ではお城の件は内緒にしてくださいね!」

「でもお城なんて大きなもの建ててたら流石に主人殿にバレるので御座らんか?」

「そこはアレです。マスターには町を守る守護神殿を建築してると言いますので!魔物達を統べる王、それはいわば神なのです。神というのはマスターにこそ相応しいですし、何も嘘は言っていませんから問題ありません」

「楽しみだよね!大軍が攻めてきてもミサイルで殲滅出来るようにするんだよね?」

「もちろんです!神に敵対する者は死あるのみですから」


 こじらせた愛は神へと昇華していく。

 彼らの中でケヴィンはいつのまにか神になっていた。

 知らぬ間に王から神へとクラスアップを果たしたケヴィン。

 マスター会のケヴィンへの愛が重い。

 しかしマスター会だけではなく黒騎士やリッチなどの以前から古代遺跡を守護してきた者達も皆同じようにケヴィンを慕っている。


 お城の建築みたいな大掛かりなものは国の総力を挙げて行うもの。

 しかし古代遺跡に住む住人達の協力のもと案外あっさりと出来てしまうかもしれない。

 ケヴィン城がいよいよ現実味を帯びてきたのであった。







読んで頂き有難う御座います。


35話以降、3話ほどボツ話にした話があります。記録をみたら実に半年以上放置してました。(笑)


そんなこともあって次話からの展開はまた少しテイストが違うかもしれません。

良かったらお付き合いください。



――皆さまへのお願いです。

書いている時、この展開はどうなんだろう、この設定はどうなんだろう、とボツにしたり書き直したりと、色々悩みはつきません。

そんななかで評価反応があるだけで前向きになれたりします。


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皆さまが思う以上に励みになります。

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