31.パーティー 4
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ハルナ達の演劇が終わり、観客達の中から笑いながらケヴィン達の方へとやってくる二人。
一人は女装をしたゴツイ男のリザと冒険者ギルドのギルド長グレイ。
二人の視線はエレインに向けられていた。
そんな二人の視線に気付いたエレインは、酷く歪んだ人様には見せていけないような顔をする。
リザはエレインの視線に気付き、筋肉の塊のような腕をブンブンと振り可愛らしい笑顔を見せる。
それから乙女のように、キラキラと目を輝かせ内股で駆け寄っていく。
「あらあら、エレインちゃん。どうしたの?そんな浮かない顔しちゃって!そんな顔しちゃっ駄目っ、殿方達が見ているわよ!」
「そんなのどうでもいいわよ。どうせ明日には王都中面白おかしく噂が広がって、好奇な目で見られるんだから!」
「もう、そんなことないわよ。カッコ良かったわよエレインちゃんの啖呵。マフィアのボスみたいで!」
「――ぷっ 」
「ちょっと閣下。今、笑いませんでした?」
「ん、マティスじゃないのか?さっきハルナの演劇見て、腹抱えて笑ってたし」
「――ケヴィンさん!何でいつも私に振るんですか?笑ってたのケヴィンさんじゃないですか!」
「あらあら、そうなの魔王様。女の子を辱しめるなんて、そんなことしちゃ駄〜目っ!」
「こら魔王言うな!あのなリザ、初対面だからとりあえず聞いとくけど、突っ込みどころ満載のお前に、まず何から突っ込んだらいいんだ?」
「まあ!魔王様ったら、こんな人前で突っ込むなんて!夜はまだまだこれからなのよ。でも、そんな強引な魔王様も、ス・テ・キ!」
「――ちょっと、どうなってんだ親父さん。いきなり下ネタぶっ込んできたぞ。アレ、商業ギルドの管轄じゃないのか?」
リザがケヴィン達の席に来たことによって、その場は一気に混沌としていく。
ケヴィンが突っ込みどころ満載というリザの外見というのが、彼がいた世界のドラッグクィーンのような格好なのである。
厚い化粧にテカテカのラメ。
長いつけまつげに血色の悪い口紅。
極め付けなのがムキムキの筋肉の上に纏うピチピチのドレス。
情報が乏しいこの異世界の地で、その容姿に辿り着いたのはある意味賞賛すべきだろう。
ケヴィンはそんな彼女を何とかしてくれとばかりにルシエルへと話を振るが、彼は顔を痙攣らせ「リザは冒険者ギルドにも所属しているから」とチラリとグレイを見てなすり付ける。
話を振られたグレイはといえば「古くからの友人で主催者のマティスが適任ではないか?」とマティスへと投げかける。
マティスは「それならばエレインの方が仕事上の付き合いも深い」と反論。
こうして大人たちの汚いなすり付け合いが始まってしまう。
彼らがそんなことをしている間、リザは周囲に集まる招待客(男)を物色しており、ゆっくりと歩き回りながら、いい男がいると彼女はその熊のようにゴツイ手で、ご挨拶と称し彼らの股間にペロンとソフトタッチ。楽しそうにお触りに興じていた。
方々から男性の悲鳴の声が上がる会場。
先程のエレインとアルベルトのやり取りよりも緊張感溢れる雰囲気に包まれていく。
そんな中、料理を食べ終えたお子様組がマティスの元にやって来て、彼にデザートの催促。
マティスはお子様組を真剣な眼差しで見つめ「ちょっと待っててね、今大事な話をしているから」と大人の事情で逃げようとする。
しかしそんなものがお子様組に通用する筈も無く、スラ吉がマティスの頭の上に乗り、リヴが背中におんぶ。
ソフィとアイシャがマティスの両脇をくすぐり、完全にオモチャにされてしまう。
騒がしくなった席。
リザの目にはお子様組が映り、リザが再び席へと戻って来て満面の笑みを浮かべ「あらあら、可愛らしい子供達ねぇ」と声をかける。
声を掛けられた三人。
振り返って声の主であるリザを見ると、ぽかんと大きく口を開け固まってしまう。
お子様組はこれまでどんな凶々しい魔物や獣に遭遇しても、こんな風に固まることは無かった。
それが今、未知なる生物を前に唖然とした表情を浮かべ、お地蔵様のように固まってしまう。
まさに初めての経験である。
「こら、お前ら。何、固まってんだよ。あー、これか?これはな希少種の“リザ人種”っていうバケモノだ!どうだ珍しいだろ?」
「ふぉぉぉ、希少種!カッコイイのです!」
「うん!凄く強そう、僕も初めて見るよ」
「魔物なのか人間なのか、分かりませんでしたが希少種ですか。だけど何か凄いっていうのは分かりますわ!」
「あらまあ!素直でとってもいい子達ねぇ。そんないい子ちゃんにはお姉さんからプレゼント。とっても美味しいわよ!」
リザは空間収納から皿に乗せたワンホールのチョコレートケーキを取り出す。
それを見てお子様組の目がキラリと輝く。
お子様組はデザートを用意出来なかったマティスに席を譲れと催促し、彼に追加の椅子と皿、切り分けるナイフを持ってくるように騒ぎ出す。
そしてお子様組と何故かリザも一緒に席に座り、ワンホールのケーキを五当分し、四人と一匹で仲良く食べていた。
リザに興味津々のお子様組。
そんなお子様組は彼女に次々と質問し、リザが微笑みながら答えていく。
先程まで男を漁っていたモンスターが大人しくなり、会場にいる男達は肩をなでおろす。
お子様組がチョコレートケーキを食べ終わると、リザがまた空間収納からケーキを取り出す。
今度はフルーツケーキだ。
彼女はケーキが大好きで、基本ワンホールひとつ分がオヤツだと言う。
美味しそうにケーキを食べるお子様組。
それを羨ましそうに見つめるエレイン。
彼女はリザへと見向き「ねぇ、リザ。私の分はないの?」と尋ねる。
「エレインの分はないのです!自分のお乳でも吸ってるといいのです!」
「本当、そうよね!せっかく私達が活躍できる機会だったのに、美味しいところ全部持っていっちゃうんだから!」
「でも残念だったよね。あんな奴、僕の魔法でプチっとしたのに」
「あんたらねー、今日はそういうこと駄目って言ったでしょ?言うこと聞かないと閣下にあの事言うわよ?」
「「「――ッ!」」」
「エレインちゃんのケーキね?今切り分けるからちょっと待っててね。それにしてもエレインちゃん。この子達と仲良しなのね。羨ましいわぁ!」
「エレインはソフィ達の従者なのです!仲良しではないのです!」
「でも全然言うこと聞かないよね?スラ吉といい、僕の従者は言うこと聞いてくれないのばっかりだよ」
「リヴ様の言う通りですわ!それに最近生意気になってきましたし!」
お子様組に従者と言われ、またしても怒りの形相を作るエレイン。
彼女が叱ってもお子様組は特に気にする様子も無く、またエレインに叱られることを繰り返すのが最近よく見る光景である。
その様子を見て楽しそうに笑うリザ。
彼女は何故かお子様組から気に入られており、初対面の筈なのにお子様組の中では既にエレインよりも扱いが上になっていた。
そしてしばらくの間、招待客達に捕まっていたハルナとディーケイがケヴィン達の席に姿を見せると周囲の人たちから歓声が湧き上がる。
今日一番の盛り上がり。
ハルナとディーケイが拍手で迎えられる。
ハルナは照れ臭そうにエヘヘと笑いながらケヴィン達の席に近づいていくと、ケヴィンの隣に二人分の椅子が用意されており、彼に座るよう促される。




