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30.パーティー 3

 30


 ケヴィンとエレインが座る席に三人の男が歩み寄ってくる。

 マティスと商業ギルド長のルシエル、そして鍛治ギルド長のドイルである。

 三人は和かに笑い合いながらケヴィン達の元につくとエレインに声をかけた。


「いやいや、お見事でしたエレイン殿」

「いい余興を見せて貰ったわい!」

「もう二人とも茶化さないでください!閣下からも何か言ってください。この二人、絶対面白がって茶化しに来たんですから!」

「あー、親父さんに爺さん。程々に頼むよ!」

「おぉ!ケヴィン閣下に親父さんと呼ばれるなんて、光栄でございます!」

「あぁ、儂もいつお迎えが来ても悔いはないのぅ」

「ちょっとドイルさん、そんなこと遠い目をしながら縁起の悪いこと言わないでくださいよ。ケヴィンさんは多分、お二人のお名前をまだ覚えてないから誤魔化してるだけですよ?」

「――こら、マティス。そういうのは本人の前で言うな!まぁ、でも。あながち間違いではない。すまん親父さん、爺さん。名前をまだ覚えてないのもあるが、何か親父さんはシェルの親父さんだし、爺さんは見たまんま爺さんだから、俺としてはコッチの方がしっくりくるんだよな」

「ふふふ、構いませんよ。ケヴィン閣下の好きなようにお呼びください。私としては、そう呼んで頂ければケヴィン閣下との距離が近くなったように感じますので」

「儂も構いませんよ閣下。最近じゃ孫も爺さんなんて呼んでくれませんしのぅ」


 ルシエルとドイルの二人はそう言いながら笑みをこぼす。


 三人はケヴィンに席に座るよう促され、五人で食事をとりながら先程のエレインとアルベルトの話で盛り上がる。

 何でもアルベルトは以前、他のパーティーでも似たようなことをしたという。

 その時は何とか宥めて帰って貰ったが、その時の彼は今よりも傲慢な態度だったらしい。


 それから話題はシェルが仕事をしているケヴィンの住む集落の話へと移り変わる。

 やはりルシエルは息子が心配なのだろう。

 ちゃんと仕事をしているのか、迷惑かけてないか、周りの人達と上手くやっているか等々、ケヴィンにシェルの様子を細かく聞いていた。


 対してドイルはディーケイが作る魔術道具に興味を持っており、他にどんな道具を作っているのか身を乗り出して聞いている。

 エレインの話ではドイルは五日に一度はエレインの店に顔を出し、新作の魔術道具や武器、防具などをチェックしていくという。


「ところでケヴィン閣下、その集落で儂に手伝える事などありませんかの?」

「そうですね、私も出来る限りご協力させて頂きたいです」

「ん?そうだな。今はアレかな?ウチの人数が多くなってきたから、そろそろ別の班を作るところだったんだ。その講師役をしてくれる人材を紹介して欲しいな」

「ケヴィン閣下、新しく新設する班はどのようなカテゴリーでしょうか?」

「牧場班そして鍛治班かな」

「閣下、以前も少し気になったのですが、娯楽的な班とかの設立は計画には含まれないのですか?」

「あー、それね。エレインの言いたいことは何となくわかるよ。まぁ、小さい子達には皆で出来る遊びとか教えていくつもりだけど、ほとんどが大人だろ?しかも今まで人目を偲んで暮らしていた者たちが多い。娯楽的なものは確かに楽しいけど、それはゲームや駆け引きの楽しさ、面白さだと思うから俺が考えているものとはちょっと違う。今、彼らにとって必要なのは他人との繋がり、そして物を作る喜びとか、楽しさを感じとって欲しいんだ。何かを作って誰かに与える、そして反応が返ってくる。相手が喜んでくれれば作った者は嬉しいだろうし、反応がイマイチならもっと頑張ろうって思うだろ?そういうのは相手がいて出来ること。それに誰かと一緒になって一つのことを成し遂げる喜びっていうのを、ここにいる人達は知ってるだろうけど、あいつらはそういうのをあまり経験してないんだ。それを物作りで体験して欲しいっていうのもある。彼らの話を聞いていると、今までそういう機会が少なかったと思うんだよな。まずはその機会を作ってやり、娯楽関係はもう少し後に考えている」


 ケヴィンの話にマティス、ルシエル、ドイルの三人は頷き、ケヴィンの考えに感心を示す。

 そしてエレインは唇を押さえながら、深く思考を巡らせていた。


「なるほど、閣下の見解には敬服するばかりで御座います。もしかして、コミュニティ毎に台所と食堂を設けているのも、その一貫なのでしょうか?」

「おぉ、流石エレイン鋭いね。そう、あれもその一つだ。これは俺の個人的な考えなんだけど、俺達の爺ちゃん世代って近所の人達と繋がりがあって、街全体で支えあっていたように思うんだ。エレインならわかると思うけど、今じゃそんなのあり得ないだろ?俺も爺ちゃんからそういう話を聞いて、驚いたけど少し羨ましかった。俺達の世代じゃ隣に住んでいる人の顔すらも知らないからな」

「うむ、いい話ですのぅ。今の王都もそういう繋がりが薄れてきてるから、確かに繋がりがあった方がいいかもしれんの」

「そうですね。今まで色々あったでしょうから、皆で思いやり、支えてくれる人がいるというのは心強いでしょう」


 エレインから魔物達の状況をある程度知らされていたルシエルとドイル。

 二人はケヴィンにこれまでの魔物達の様子を詳しく尋ねていく。

 話をしていくうちに二人は憂いを帯びた表情を浮かべ、魔物達への援助を申し出て、一度会いたいという話になった。

 二人の申し出を受け入れるケヴィン。

 話題は再び新設する班について移っていく。


「鍛治班についての講師役は儂に任せて欲しい!何せ本業だからのぅ」

「牧場班は私に心当たりがあります。ケヴィン閣下が心配する魔物達との交流も問題ない人物です。それと家畜などの種類と数を教えて頂ければ、ギルドで用意致します」

「あのケヴィンさん、牧場班の講習を受けることは出来ますか?」

「ん、マティス。宿で何か飼うつもりなのか?」

「うふふ、違いますわ閣下。マティスはモフモフしたものが大好きなんです。閣下が警備の為にここに置いているグリ、マティスは暇があればグリのところに行って、モフモフしているんですよ」

「――ちょっとエレインさん!その話はケヴィンさんに内緒って約束したじゃないですか!」

「おぉ、そうだったのか!ウチに丁度いいモフモフしたのがいるぞ、マンモスの――」

「――それ絶対大き過ぎますよね?モフモフ出来ませんよね?私は普通の大きさの動物とかがいいんです!」


 そんな冗談を言っていると、ポツポツとケヴィン達の席に招待客達が集まってきて、ケヴィン達と言葉を交わしていく。


 彼らは商業ギルド長と鍛治ギルド長という二人の重鎮を前に、話に加わるタイミングを見計らっていたようだ。

 始めは顔を強張らせていた彼らも、ケヴィンが冗談を交え、マティスが気兼ねなく話している様子を見て安心したのか、次第に顔を綻ばせ話に花を咲かせていく。


 そんな彼らとの話で、ハルナの演劇が話題になり、彼らは面白かったと口々にしていた。

 ケヴィンは後ろを振り返って見ると人だかりの前でハルナとディーケイの二人がまたもや演劇をしていた。

 見ているとハルナがエレイン役でディーケイがアルベルト役なのだろう。


「テメェがやってんのは為政なんかじゃねぇ、寄生だ!この寄生虫がっ」

「ふんっ、平民風情が!」

「はあ?ケツから手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタにいわしたろか?」

「ケ、ケツから?!」

「こら、頰を赤らめるな!」

「い、いえ。僕、そういうの初めてだから」


 観客達から爆笑が上がっている。

 彼女達の演劇は先程のやり取りをかなりデフォルメした内容だった。


 そしてそれを見たエレインは顔を真っ赤にしながら、プルプルと震え、その顔は怒りの形相。

 手に持っていたフォークがパキリと折れる。

 どうやら恥ずかしさと怒りが混在しているようだ。

 彼女は恨めしそうにハルナを見据え「ハ〜ル〜ナ〜」と重低音の効いた野太い声を出す。

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