28.パーティー 1
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貴族達への報復から三日が過ぎ、ケヴィン達は穏やかな日々を過ごしていた。
今日はマティスの宿であるリヴィアの雫にて、新作料理の試食会と称してちょっとしたパーティーを開催していた。
新作料理といっても、ケヴィン達が常日頃口にしている和食や異世界料理、それらのレシピが溜まっていたので、客人をもてなし反応を見る為でもある。
そして今回のパーティーを開いたもう一つの理由が、顔合わせだ。
エレインとマティスは人脈を広げ、協力者になってくれそうな要人達へ声をかけていた。
商業ギルド長、冒険者ギルド長、鍛治ギルド長や大手商会の会長といった錚々たる面々がリヴィアの雫に集い料理を楽しんでいる。
ケヴィンはエレインの商会で仕立てた黒のスーツを身に纏い、ひと通り要人達との挨拶を終えると椅子に座りグッタリしていた。
「あら、ケヴィン。まだパーティーは始まったばかりなのに、もうお疲れなの?」
「はぁぁぁ、こんなに人がいるとは思わなかった。なぁ、エレイン。挨拶だけでクタクタだから今日はもういいか?」
「うふふ、ケヴィンも弱音を吐くことがあるのね!今日は最後までいる約束でしょ?」
「あー、そういえばそうだった。しかし凄いメンバーだな、今日のエレインとマティスを見てやっぱり商人なんだなって思うよ」
「そう?でも今日来てくれた人達は皆、ケヴィン達に会いたくて集まっているのよ?」
「ん、そうなのか?」
「えぇ、王宮で箝口令を敷いているから一般の人達は知られてないけど、ここにいる人達は皆、王城での出来事を知ってるわ。だから今日来てくれた要人達はケヴィン達と繋がりを持ちたくて来てると言ってもおかしくないの。皆、王宮の奴等にウンザリしてて、ケヴィン達なら何かしてくれそう。そういう期待もあるんじゃないかしら?」
ケヴィンはぼんやりとパーティーに参加する人達を見つめながら、エレインとマティスの人脈に関心していた。
祝宴の間に集まっている王都の要人。
その数は三十人を超え、従者や関係者を含めると二百人はくだらない人数がパーティーに参加している。
想像していた人数をはるかに超えていた。
まさかこんな大規模なパーティーになるとは思っても見なかった。
「期待ね俺、城で暴れただけなんだけど?」
「ふふっ、それだけじゃないでしょ。災害級と言われる魔物達を千体以上も引き連れ、それにあれだけの数の竜を従えてるのよ。これだけでも一国の戦力に匹敵するっていう話よ。それにアイツらに誓約書を書かせたでしょ?そういうのがケヴィンに期待する要因じゃないかしら」
「あぁ、やっぱりあの行進はマズかったか。
リヴがアレでも少ない位だ、なんていうから納得しちまったんだよな。はぁ、あの時の俺を殴りてぇ。でも、誓約書はエレインの案だろ?そこら辺は訂正しないか」
「うーん。でも、残念だけど遅かったみたいね。ほら見てケヴィン、あっちでハルナ達が王城でのやり取りを再現しているみたいよ」
エレインが指すのは、人だかりの前で演劇のように王城でのやり取りを再現しているハルナ達。
ハルナが演じているのはケヴィン。
そして本人役でお子様組とディーケイ、更には王と貴族役で黒騎士までもが出演している。
アクションを起こす度に湧き上がる歓声と拍手。
ディーケイが間髪いれず進行と説明を入れていき、そこは一つの舞台となっていた。
それを見たケヴィンは顔を顰め「なぁ、俺あんなんだったか?スゲェ悪そうな悪役みたいな感じなんだけど」と不満そうに口にすると、エレインが笑いながら「あんな感じだったわよ」と楽しそうに応える。
ケヴィンはしばらくの間、頭を抱えていたが面倒になったのか考えるのをやめて、目の前に並ぶ料理へ手を伸ばす。
今日の料理は彼にとってお馴染みの料理。
数ある料理の中から鳥のから揚げ、味噌汁、チャーハン、漬け物、魚の味噌煮を選びローテーションを組んで食べ進めていく。
そんなマイペースなケヴィンを優しい眼差しで見つめ、クスリと笑うエレイン。
「ねぇ、ケヴィン。工事の件だけど、来週には着工できそうよ」
「おぉ、良かった良かった!中々進まないから心配してたんだ」
「そうね、思ったよりも時間がかかったわ。というのもベネスの話だと教会を作ることに反対した貴族がいたみたいね。それに聖・フィーリアの大司祭が口を挟んで来たらしいの」
「へぇ、聖・フィーリアって前に話してた、あのアホみたいな教典のところか?」
「そう、その国よ!多分、反対してた貴族連中も繋がりがあるかもしれないわね。まぁ、例の血の雨と天誅騒動で大人しくなったみたいだけど」
「まぁ、貴族連中は金の繋がりだろうな。じゃあディーケイに頼んでおくよ!」
「ディーケイが教会を作るのね?」
「ん、違う違う!ディーケイの姉貴にお願いするらしいぞ。ディーケイも集落や港町の方で忙しいから、手が回らんらしい」
彼らが話しているのは以前から計画していた教会の設立の件である。
この件もあって襲撃の首謀者である貴族達への報復を制限していた。
もっともケヴィンはリヴ達が貴族邸を半壊、半焼させてしまった事など、まだ知らないのだが、今のところはリヴ達に上手く丸め込まれている。
というのもリヴの「解放的なデザインの屋敷でした!」という報告に、彼は「世の中には奇抜な家もあるからな」と笑い。
アイシャが「リフォーム中でした!」と報告すれば「ま、血に染まった屋敷だから当然か?」と納得。
ディーケイが「火事場泥棒してきました!」と報告すれば「へぇ、鍛治場か」と勘違いをする始末。
そんなこともあってリヴ達の破壊行為はまだバレていないのであった。
ケヴィンが教会と孤児院を作るのには理由がある。
その理由の一つは王都にいる孤児があまりにも多かったから。
彼が召還され王都で情報収集をしていた時、地べたに座るやせ細った子供達を沢山見ていた。
その中には獣人の子供達も大勢いる。
ケヴィンは現在王都にある教会では孤児達を受け入れることが出来ないと知り、教会と孤児院を作ることにした。
もう一つの理由として教会権力の分散と民衆の支持を得る為である。
教会に力があると発言力が増し、多方面から金が入ってくるのが現在の教会。
まともな運営をしている教会であればいいのだが、ディーケイに調べさせたところ民衆から金を絞り取り、その金を貴族達の手元に渡す教会が多い。
そんなこともあってケヴィンは教会の設立を計画していた。
「あらディーケイにお姉さんがいたのね。どんな人なのかしら?」
「あー、何かディーケイが言うには馬鹿らしいぞ」
「ふふふっ、また騒がしくなりそうね!」
「んー、これ以上うるさくなるのは勘弁して欲しいところだが、姉貴の方は大きい建造物とか、規模が大きい魔法とかが得意らしく、ディーケイの話だとこれから港町を作るのに最適な人材みたいだ」
「そうなのね。馬鹿だけど町づくりに最適な人。ちょっと想像つかないわね」
「だろ?で、リヴ達も会った時あるって言うから聞いてみたけど。そしたら皆さ、馬鹿だけどって頭につけて説明すんだよ」
「あははっ、何それ?益々想像つかないわ」
「な?お子様組に馬鹿だけどって言われている大人ってどんな人だよ」
ディーケイの姉の話で盛り上がる二人。
食事を取りながらしばらく談笑していると、祝宴の間の入り口付近が騒がしくなる。
二人が視線を向けると、そこには宿の給仕と警備の制止に怒鳴りちらす貴族の姿があった。




