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20.銀狼族

 20


 畑作りを終えて古代遺跡へ帰る。

 その中には客人として夕食に招いたエレインとティアの姿もあった。


 ダイニングルームで話をしながら料理を待っていると、ディーケイがテーブルに料理を並べていく。


 今日の献立は和食を中心とした料理。

 ご飯に味噌汁、山菜の天ぷらに魚料理、そしてボア肉の角煮と副菜が並ぶ。


 目の前に並ぶ数々の料理。


 姿勢を正し待っているティアの尻尾はバサバサと大きく揺れていた。

 彼女の紅く大きな瞳は、出される料理に釘付けだった。


 皆が料理を食べ始めると、彼女はまず山菜の天ぷらをフォークで刺し口へと運ぶ。

 サクッ、サクッと小気味よい音が鳴り、心地よい音を立てながら天ぷらを食べる。

 口の中に野菜の旨味が広がっていく。

 真っ白な彼女の肌がほんのりと赤く染まり、目を細める。


 ケヴィンは美味しそうに食べるティアに見向き声をかけた。


「なぁ、ティア。気になってたんだが、その拙者とか御座るとかいう話し方。それはティアの村の人達も使っているのか?」

「いえ、使っているのは私の家族だけです主人殿。この話し方はウチの曾爺ちゃんが使ってた言葉で、爺ちゃんも父上も皆うつってしまったので御座る」

「へぇ、なるほどな。曾爺ちゃんが使ってたのか。ならティアの曾爺ちゃんは日本人かもしんねぇな!」

「な、なっ!あ、主人殿?!どこでその言葉を知ったので御座るか?日本人という言葉は一族の者達しか知らないはずなのに」


 ティアは大きく目を開き、白銀の長い髪を揺らしケヴィンへと見向く。

 驚愕の表情を浮かべるティアに対し、ケヴィンは角煮を箸で摘み、口にして飄々としながら応える。


「ん?そりゃ俺も元日本人だからな。今テーブルに並んでる料理は、日本でよく食べられている和食というものだ。食った事ないか?」

「ないので御座る。しかしそうで御座ったか。我が主人殿が曾爺ちゃんと同じ故郷とは奇妙な縁で御座る。この料理が曾爺ちゃんの故郷の料理で御座るか。ウチの一族は拙者が知っている限りでは、料理というものは焼いて食べるか塩漬けして食べるくらいしか知らないので、こんな美味しい物を食べるのは初めてで御座る」

「お、そうか。美味いだろ?お代わりもあるからいっぱい食えよ!」

「かたじけない。頂くで御座る!」

「ところでティアはどの辺に住んでたんだ?ティアの一族が住んでいた集落っていうのは、この場所から近いのか?」

「拙者達は獣人国の近くにある渓谷から来たで御座る。この場所からは大人の足なら二十日ほど歩けば渓谷に行けるので御座る」


 美味しそうにご飯をほうばりながら、満面の笑みで応えるティア。


 魔物達が何故この場所に集まって来るのか興味を持っていたケヴィンは、ティアにその事について深く掘り下げて聞いていく。


 ティアの話によると、銀狼族が代々受け継いできた魔術道具が発動し、この場所を示したのだという。


 村の長であるティアの父親が調べてみると、一族に伝承されていた魔物達を統べる王が誕生したのではないかと考え、先遣隊としてティア達に向かわせたという話だった。


 伝承通り王の誕生であれば、ティア達が住む村の者達もこの場所へ移り住むことを考えており、他の獣人族達もティアと同じように考えているようだ。


 その話を聞き、ケヴィンは顎を撫でながら思考を巡らせていた。


「ということは、まだまだ増えていくって事だな。なぁディーケイ、住居を増やしたいんだが大丈夫そうか?」

「そうですね、今聞いた話では人手が足りませんので、港町を建設している黒騎士とリッチ達を幾らか此方に呼び寄せてもいいでしょうか?」

「あぁ、それは構わない。こっちを優先して動いてくれ!せっかく来たのに住むところがないと大変だからな」

「了解ですマスター!住居建築の方は私の方で手配します。どのように区分けしますか?」

「ディーケイに任せる。というかおおよその計画は立てているんだろ?知ってんだぞ、部屋で夜な夜な図面引いてるの。この前みたいに徹夜すんのはやめて、ちゃんと寝ろよ!」

「ははは、流石はマスターです!バレていましたか。魔術道具を作るのも楽しいのですが、街作りというのはまた別物で面白いのです!マスターのいう下水路から始まり、道を作り、家を作り、それが街になっていく!家の景観を揃えるだけで街の雰囲気が変わり、広場を作り木を植えれば人々の癒しになる!マスターから聞いた話を元にして図面を引いていると、アイデアが止まらないのです!」


 前のめりになり話をするディーケイ。

 サングラスのブリッジを指でくいっと上げ、興奮していることもあってか、話は止まることはなかった。


 ケヴィンはいつものように適当に相槌を打ちながら聞いていると、エレインが要所要所で質問をしていく。


 それによりディーケイの話は更に止まらなくなり、時折エレインが住んでいた世界のアイデアを出すと、ディーケイがメモを取りながら質問を繰り返す。


 ディーケイからひと通りの話を聞くと、エレインはケヴィンに見向き声をかける。


「ケヴィン、ディーケイの話だと港町の建設って結構進んでいるんじゃないの?」

「ん、そんなことないぞ。港は完成したけど町自体は何も作ってない。今は町の外壁とこことの道路を作っているところだ」

「そう、私も早く参加したいわ。声がかかるの待ってるからね!」

「ん、了解!」

「それにしてもティア達の一族に召喚された人がいたなんて驚いたわね。どういう経緯で銀狼族と共に行動してたのかしら」

「拙者の曾爺ちゃんは勇者として、色々なところに行ってたらしいです。そんな時に人族が銀狼族を襲っているところに出くわし、曾爺ちゃんが助けて、一緒に行動するようになったと聞いているので御座る」

「そうなのね、でも大変だったんじゃない?話を聞く限り、その渓谷っていうところ、生活するには厳しい環境みたいだし」

「そうでもないで御座る。ご存知の通り、拙者達は隠れ住んでいる身。たまに旧知の一族より諜報の仕事が入った時以外は、ただ家の中で過ごすだけで御座るから」


 ティアが一族の状況を説明していく。


 その旧知の一族というのは、曾爺ちゃんの時からの友人で、今はその孫が獣人国から諜報の仕事を持って来ているそうだ。


 ティア達の一族は皆、諜報の訓練を受けており、その技術も曾爺ちゃんから受け継いで今に至るらしい。

 たまに入ってくる諜報の仕事で、衣服や生活道具を購入し、それ以外はほとんど家から出ないような生活を送っていた銀狼族。


 獣人国に行ってそこで住むことも昔は考えたようだが、一族の持つ技術を利用しようと企む輩が出てくると考えて、今も渓谷に住み着いたという話だ。


 そんな話をしていると、夕食を食べ終えたお子様組が騒ぎ出す。


「ディーケイ、デザートが食べたいのです!」

「今日のデザートは何だろうね?」

「……」

「今日はいっぱい動いたから、甘い物が欲しいわね!」

「ディーケイ、早く出すのです!」

「はい、はい。ちょっと待ってね、今朝、マティスさんのところでケーキを作って来たんだ!って、こらソフィ。今切り分けるから手を出すな!」


 ディーケイが切り分けたケーキを配ると、お子様組が一斉に食べ始める。

 目尻を下げ幸せそうな表情を浮かべながら、皆幸せにそうに食べている。


 大人達はゆっくりと味わって食べ進める。

 ティアはケーキを食べると、驚きながら「凄い!ふわふわで御座る!」と笑みを浮かべていた。


 食事が終わるとお子様組が遺跡の中を案内してくるといい、ティアを連れてダイニングルームを出て行った。

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