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13.王都行進 2

 13


 門を抜けると、大通り沿いには大勢の人達で埋め尽くされていた。


 街の人達の反応は様々。

 イベントを見るように楽しそうにしている者、屈強な魔物達の姿を見て怯える者、興味深く眺めている者たち。

 そんな観衆の中、行進していく。


 実はこの観衆を集めたのがハルナ。

 彼女は約一カ月で築いた人脈を元に、街の人々へ今日のパレードを周知させ、最終的には大規模な祭のようになってしまったのだ。


 そんなハルナはケヴィンの方に身向いて「エヘヘ、街の人達に宣伝した甲斐がありました!」と言い、愛くるしい笑顔を見せる。


 ケヴィンはいつもお子様組を褒める時の癖で反射的に「エライぞ、よく頑張ったな!」と反応してしまう。

 その言葉にハルナは恥ずかしそうに目尻を下げ、ポリポリと頭をかく。


 何店か出店が出ているのを見つけたリヴ、アイシャ、ソフィのお子様組が馬車の中で食べたいと騒ぎだす。

 あまりの煩さに馬車を止めてお子様組を待つ。


 ケヴィンは馬車の中から出店を見つめながら「出店までやってるなんてな」と呟く。

 すると出店の店員が大きく手を振りながら「会長〜!大繁盛ですよー!」とエレインに向けて大声で叫んでいた。


 ケヴィンは苦笑いしながら「エ、エレイン?まさか……」と声をかけると、エレインは頰を赤らめ「だって仕方ないじゃないですか閣下!商機があるなら、そこに乗るのが商人なんですよ!」と反応。

 その迫力に押されたケヴィンは「あ、うん。そうね」と応えるしかなかった。


 買い物を済ませたお子様組が走って馬車に戻り再び馬車は動き出す。


 大きな四階建ての建物の前に近づくにつれ、歓声がより一層大きくなり、観衆が湧いている。


 ハルナがその一角を見つめながら「あれは冒険者ギルドです!」と説明。


 冒険者達は目の前を行進する隊列に「凄え!デスアーマーなんて初めて見た!」「オーガキングにジェネラル?何体いるんだよ?」「おい、あれ伝説のグリッドウルフじゃないのか?」「後ろ見てみろよ!ウィザードリッチだ」と驚きと興奮の声が方々から飛び交う。


 冒険者達の声に耳を傾けると、行進している魔物達は伝説に出てくるような魔物、災害級と言われているような魔物達だった。

 一体出現するだけでも百人規模の討伐隊を組まないといけないらしい。


「なぁ、エレイン。もしかして、これ。やりすぎだったんじゃないか?」

「そう、ですね。私も魔物達を知らな過ぎました。あの二人が話をしている時点で止めるべきでした」

「ま、まぁ大丈夫ですよケヴィンさん。これからの計画には戦力を見せつけておいた方が効果的ですし、街の人達も歓迎してますので」


 マティスは顔を引きつらせながらフォローした。


 異様な盛り上がりを見せる観衆の反応に、リヴ、アイシャ、ディーケイの三人は大喜びしていた。


 しかし三人が企てていたのは、これだけではなかった。


 ケヴィン達が乗る馬車にいくつもの大きな影が通り抜けていく。

 視線を空に向ける。

 真っ青な空に巨大な竜。

 上空には大勢の竜が編隊を組み、ケヴィン達の頭上を飛んでいた。


 ハルナは身を乗り出し「うわぁドラゴンだ!」と目を輝かせ、その反応にリヴ、アイシャ、ディーケイの三人は胸を張りドヤ顔。


 ハルナと同様に観衆も盛り上がり、収集がつかないほどのお祭り騒ぎ。


 時折「魔王様が愚王の討伐に来てくれた!」などの声が上がっており、ケヴィンはそれを聞き間違いだろうと自身に言い聞かせていた。


 そんな大通りを通過し貴族区域を抜け、ようやく王城へと着く。


 王城の門をくぐり抜けると上空を飛ぶ竜達が次々と大地に降り、体を地に伏せて頭を垂れる。

 二十体以上はいる巨大な竜が主人を迎える壮観な光景。


 隊列を組んでいた魔物達も左右に分かれ跪いて頭を垂れていく。

 そのなかをケヴィン達一行が馬車を降り、ゆっくりと歩み進めた。


 城内をベネスに案内されながら謁見の間へと向かう。


 謁見の間に魔物達が入りきらない為、護衛として黒騎士達、黒ローブを纏うリッチ達の二十人を引き連れて扉の前に立つ。


 謁見の間では前回と同様に兵士達が赤い絨毯を挟むように左右に分かれて立ち並ぶ。

 前回と違う点といえば、檀下に大勢の貴族達と護衛の兵士達がいることだった。

 彼らは王族派と言われている王を取り巻く貴族達である。


 扉が開かれ、黒騎士達とリッチ達が姿を現わすと、兵士達はすぐさま顔色を悪くする。


 そして外からは、ドスン、ドスンと地響きを立て地面を揺らす音が聞こえてくる。

 音が鳴り止むと窓から入っていた光が遮られ、白い床に黒く大きな影が落ちる。


 窓を見れば二体の竜の瞳。

 竜達が窓から顔を覗かせて謁見の間を見守っていた。


 会談はまだ始まってもいない。

 しかし謁見の間は異常ともいえる雰囲気。

 その空気に耐えられずに気を失う者もいた。


 ケヴィン達一行が謁見の間に入ると、リヴは辺りを見回して「やっぱり用意しておいて良かったです!」と言い、ディーケイが空間収納から金で装飾された五段の大きく豪華な檀、そして色とりどりの宝飾で飾られた玉座を取り出し準備を始める。


 準備している玉座は高さ的にはサンドエルの玉座を見下ろすような感じだ。

 対してサンドエルの玉座は何故か前回の金ピカな玉座ではなく、如何にも急遽取り繕ったような玉座に腰をかけている。


 ケヴィンは苦笑いを浮かべながら、その玉座に座るとサンドエルが声をかけてきた。


「よく来てくれたケヴィン将軍。早速ではあるが、前回約束していた慰謝料を用意させた。後で確認して欲しい」

「――いや、それは今確認する。はっきり言ってお前らの事など微塵も信用してないからな。リヴ、頼んだぞ!」

「お任せください、マスター!」


 リヴがそう返事をし、兵士達が台車に用意している金貨の方へと歩んでいく。


 リヴが金貨の前に立つと、頭上に乗っていたスラ吉が地面に降り、金貨を次々と体内に取り込んでいき数を数えていく。

 スラ吉がプルプルと震えリヴにその数を伝えていき、リヴは用意していた羊皮紙にその数を書きとめていった。


 全ての金貨を数え終えるのに、それほど時間がかからなかった。

 リヴはスラ吉が数えた金貨の合計と、以前転写した羊皮紙を見比べて、ケヴィンに振り返る。


「マスター、やっぱり誤魔化していました!対象者の年収合計と軍事費の二割の合計より、金貨1,765,007枚足りません」

「あぁ、ありがとなリヴ、スラ吉ということだ。お前ら舐めてんのか?!」

「そ、そんな事は無いはずだ」

「――貴様、先程から聞いておれば、王に対して無礼であるぞ!」


 檀下に立つ貴族の一人が声を荒げる。


 その貴族に対しリヴは眉を吊り上げ、憤怒の色を滲ませた眼差しで睨み「お前こそ、我が王に対して無礼だ!消えろ――」と言い放ち、貴族に対して手を翳す。


 リヴが魔法を発動させる。

 貴族の足元に魔法陣が現れ、黒い影へと形を変える。そして影からは無数の手が伸びてきて、貴族を影の中へと引き連りこむ。

 無数の手に拘束された貴族は「な、何だ?止めろ!うわぁ――」と言いながら影の中へと消えていった。


 目の前で起きた現象に静まりかえる兵士達。


 一瞬で人が消えた。

 信じたくもない出来事だった。

 息が詰まり鼓動が早打ちしていく。


 誰もが見たことも聞いたことすらないような魔法を小さな子供が使っている。

 数々の戦場に出ている兵士ですら恐怖に慄く。

 貴族達は当然、周りにいた護衛達も動くことが出来なかった。


 当の本人であるリヴは笑顔で「あ、ついつい消しちゃいましたね!」と言うと、スラ吉が頭上に飛び乗りプルプルと震えている。

 それに対してリヴは「仕方ないですよ、マスターに対して無礼だったんですから!」と応えた。


 謁見の間にいる者達が呆然としている中、ベネスは冷静に行動していた。


「――ケヴィン将軍、大変失礼致しました!すぐに不足分を用意させます。おい、急いで不足分の金貨を用意するんだ!大至急でここに持ってこい!」


 ベネスの言葉に周囲の者達は我に返り、慌しく動き始める。


読んで頂き有難う御座います。


ケヴィン達が召喚されてから一カ月が経ちましたました。

マスター会と行進はどうしても書きたかった部分でもあります。流行だと覚醒したり無双したりしますが……次話は……


――皆さまへのお願いです。

書きながら、ふと思ったりします。小説にどのくらい時間を費やして書くべきか、と。他にも色々と悩みながら書いてます。


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宜しくお願いします。

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