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10.古代遺跡の仲間達 2

 10


 翌日、ケヴィンは朝から古代遺跡の一室で魔法の訓練に励んでいた。


 彼が古代遺跡に来てからというもの、早朝から深夜まで、食事と睡眠以外ほとんどの時間を訓練に割いている。


 そんなケヴィンの訓練を見つめる男の姿。


 彼の名はディーケイ。

 細身の身体に品のある顔立ち。人間でいえば二十半ばの歳頃に見えるだろう。

 ラウンドタイプのサングラスが似合い、高めの身長もあってモデルのようにも見える。


 しかし彼は研究者であり、実験や研究をする時は白衣を纏う為怪しげな人物に見えてしまう。


 今日のディーケイはいつものように白衣を纏っている。

 ケヴィンは魔法訓練を中断するとディーケイに声をかけ、ディーケイは手に持っていた銃そして弾丸をケヴィンに手渡す。


 今日はディーケイに依頼していた銃の試し撃ち。


 ケヴィンは手持ちの弾丸が残り少なくなっていた為、魔術道具のスペシャリストであるディーケイに、この世界に対応した銃と弾丸を模索しながら作製を頼んでいた。


 ディーケイは銃と弾丸を渡すと、いつものように地面に向け手をかざし魔法を発動させる。


 地面には淡い光りを帯びた直系一メートル程の魔法陣が六つ浮かび上がる。

 その魔法陣の中心から、人型の土の塊が現れた。


 ケヴィンはその土塊を、銃で次々と撃ち抜いていく。


 弾丸は六つの的の全てに命中し、いずれも頭や心臓の部分を貫いていた。

 それから再び弾丸を込め、今度は一つの的に絞り先程よりも早い連射を試す。


 これまでケヴィンが地球で使っていた銃と弾丸の違い。

 それは弾丸の通過した軌道上に真っ直ぐな光の線が走るという点だ。

 これは弾丸に魔法を施しており、弾丸に使用している魔鉱の影響でもあった。


 ケヴィンは何度も試し撃ちを繰り返し、満足そうな笑みを浮かべ、

「ん、いいじゃないかよディーケイ!まったく問題ないぞ!やっぱり天才だなお前は」

「有難うございますマスター。完成に至ったのはマスターの発想があってのこと。私だけでは完成させることなど出来ませんでした。それに魔法の爆発エネルギーを使い弾丸を飛ばし、風の魔法を弾丸に付与し空気抵抗を減らす。そして魔法を当てるのではなく、魔法により放たれた弾丸を当てるという発想はそもそも私にはありませんので」

「まぁ、それは俺がいた世界の人が作ったものだから、言っとくが俺の発案じゃないぞ。それに元々こっちの世界には魔法で岩を飛ばす魔法あったろ?あの魔法は違うのか?」

「ストーンバレットとは全くの別物になります。あの魔法は岩に魔法をかけて飛ばす為、術者の力量によって速度、威力が左右されます。使用する術式も二つのみです。対してこの銃と弾丸は、使用者の力量に左右されず常に一定の威力を保つことが可能です。この発想こそが素晴らしいのです!トリガーで魔法を起動させ爆発、その力を利用し弾丸を射出させる新たな発想。しかも使用している術式は弾丸で五つ、銃で二つ使用しています。ですのでストーンバレットとは威力の桁が違います!」


 目を輝かせながら熱弁を振るうディーケイ。

 その後も彼の語りはしばらく続く。


 まだまだ終わりそうもない彼の熱弁にケヴィンは苦笑いをし「そうなの?」と適当に相槌を打ちながら話を聞いていた。


 ディーケイはケヴィンの持ってきた異世界の道具を褒め称え、それを聞いているケヴィンが適当に流すという一連の流れ。

 もはや恒例のようになっていた。


 今回は銃と弾丸だが、その前のパソコンと携帯の充電機を作成する時は酷かった。


 その時のディーケイは未知なる機器に酷く興奮し、三日三晩寝ずに試作と改良を重ね、試作品は三十にも及んだ。

 その度にケヴィンは熱く語るディーケイの話を聞いていたのだ。


 そんなこともあってケヴィンにとって聞き流すのは容易いことだった。


 ケヴィンは反応などお構い無しに、一人熱く語り続けるディーケイ。


 ケヴィンは話の流れで気になる言葉だけを拾いディーケイに「今の話だと、大量生産は可能ということか?」と訊ねると、ディーケイは「勿論可能です!」と応え、ケヴィンはニヤリと笑みを浮かべる。


 ディーケイは続けて、

「しかし、マスターに教えて頂いたミサイルの方はまだ大量生産出来ません。それにしてもあのミサイルという――」

 と話をしていると、ケヴィンは話が長くなるのを懸念し、

「――あ、ディーケイ、今ミサイルの話はいいんだ!」

 とディーケイの話をばっさりと遮る。

 その時ディーケイは残念そうな表情を浮かべケヴィンを見つめていた。


「じゃあディーケイ。早速で悪いが、俺の予備一つ。それにエレインとハルナ、マティスの分も用意してくれ!」

「了解ですマスター!お三方の分は出来ましたら、いつものようにお届けした方がいいでしょうか?」

「あぁ、そうしてくれ。銃の個人認証だけは忘れないようにな!それからエレインの商会で作物の種子を大量に買ってきてくれ」

「以前お話ししていた件ですね。種子は同士に見繕ってもらいますが、それでいいでしょうか?」

「あぁ、それで構わない。同士ってハルナのことか?お前たち気が合いそうだもんな……特に暴走気味に語るところなんかそっくりだぞ」

「ふふっ、マスター。私達はマブダチですから、そういうところは似ているのかもしれません! 私にとって初めて波長の合う人間の友人です。同士と話をしていると話が尽きることはありませんし、何より楽しいです」

「おっ、良かったなディーケイ。でもハルナもディーケイもよく暴走するから気をつけてくれよ?」


 ディーケイはエレインとハルナが拠点としているリヴィアの雫に、ケヴィンのお使いとして転移魔法で何度も訪ねている。


 ハルナはアニメに出てくるような話や冒険譚が大好物で、ディーケイは魔術道具や武器に目がない。


 お互い惹かれるような共通の話題を持っており、熱く語ってしまう点も似ている二人。

 仲良くなるのは必然であった。

 二人は互いに同士と呼び合う仲になり、夜遅くまで語り合うこともある。


 ある時はハルナがアニメで見た武器や兵器を一人何役もこなしながら語り、ディーケイはそれを目を輝かせながら聞いている。


 逆にディーケイがケヴィンの持ってきた道具が如何に素晴らしい物なのか熱弁を振るえば、ハルナは感嘆の声を上げながら聞き入り、時折「同士よ、キタ!神の導きだ!」と言い魔術道具製作のアイデアを次々に出していき、共に魔術道具を製作していた。


 そうして出来たのがケヴィンに依頼されていた携帯とパソコンの充電機である。


 二人はその他にも魔術道具を製作していた。

 魔導コンロに冷蔵庫、そして洗濯機といった家庭用製品を中心に製作している。


 ディーケイはケヴィンの反応を省みず、ハルナと普段話をしていることを延々と語り続けていると、先程ケヴィンが言っていた大量生産のことを思い出し、話題を変える。


「そういえばマスター。先程銃と弾丸の大量生産のことをお話ししておりましたが、リエラ王国殲滅の日が近いということでしょうか?」

「違ぇーよ!お前はいつも殲滅とか極端な話になるよな?そうじゃなくて、ほら最近さ、知能ある魔物達や獣人族が遺跡に集まって来てるよな?ゴブリンとかオークとか」

「――はい、王であるマスターの下へと集まってきております」

「へ?それって俺が原因で集まって来てたのか?」

「勿論で御座います。伝説の宝具に選ばれし王。マスターのお役に立ちたいと魔物達が各地から、この遺跡へと集結しているのです」

「へぇ、そうなんだ。何か今の話、深く考えたら頭が痛くなりそうな話だな。まぁ、面倒くさそうな事は後にしてディーケイ。この銃と弾丸を大量生産したら、ゴブリンやオーク達でも使えそうなのか?」

「恐らく問題ないかと思います。集まって来ている魔物達は会話も出来ますし、見た目以外は我々と何ら変わりはありませんので」


 ケヴィンはその話に口端を上げる。

 そして顎を撫でながら思考を巡らせていた。


 次に王と会う時まで自身の戦闘力を高め、戦力を確保するという当初からの目的。

 王都へと向かう日まであと六日。

 ギリギリのところでその目的も何とか目処が立ちそうであった。

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