ペンギン三兄弟 〜 11話 春の嵐 の巻
ペンギン三兄弟、チャン、ドン、ゴン。
今日も仲良く暮らしています。
ガタガタガタ、ゴトゴトゴト、ゴウゴウゴウ
今日は朝から、やけに強い風が、
家の窓や壁をたたいています。
チャン「今日は風が強いなあ」
ドン「春一番だって、ニュースで言ってたよ」
チャン「このボロ家、大丈夫かな?」
ドン「どうだろうね、吹き飛ばされてもおかしくないよなあ」
チャン「でも天気はいいんだよね」
ドン「桜も満開だしね」
チャン「この際、花見にでも行くか」
ドン「そうだね」
チャン「あれ、ゴンはまだ寝てんの?」
チャンとドンは、ゴンを起こしにいきました。
チャン「おーい、ゴン、起きろよ」
ドン「起きろ~」
ゴン「え~、もう朝?」
ゴンは、寝ぼけながら目を開けました。
チャン「花見に行くぞ、用意して」
ゴン「ちょっと待ってよ、歯みがきして着替えないと」
ドン「なんかこの部屋、空気悪いよ」
ドンはそう言うと、窓をバンっと開けました。
その瞬間、
一陣の風がビューンと部屋に吹き込み、
部屋の中をグルグルと吹き散らしました。
そして、
メキメキメキ!
ドーン!
なんと部屋の天井が落ちてきたのです!
チャン「うおー!」
チャンはとっさに両手を上げましたが、
頭にゴーンと、天井がぶつかりました。
ドン「ハシッ!」
ドンも両手を上げて支えようとしました。
背が小さかった分、頭は打たずにすみました。
ゴン「ギャー!」
ゴンはベッドに仰向けに寝たままで、
とっさに足を垂直に上げて、両足の裏で天井を受け止めました。
ゴン「どうすんのこれ」
ドン「ちょっと待ってて!」
ドンは、部屋の隅に倒れていた特大ゴジラのフィギュアを
部屋の中心に立てて、天井を支えました。
ドン「今のうちに部屋を出よう!」
3羽は、なんとか部屋を這って脱出しました。
チャン「あー、イテー」
チャンは頭を押さえています。
ドン「チャン、だいじょーぶ?ますます、おバカに...」
チャンがギロっとにらんだので、
ドンは、言葉をのみました。
3羽は、家の外へ出て、しばらくボロ家を眺めていました。
ゴン「まさか天井が落ちてくるとはなあ」
ドン「大家さんに言わないとね」
チャン「もっと丈夫な家に住みたいよ」
3羽は、近くに住む大家さんの家に向かって
てくてく歩きだしました。
途中で公園に差しかかりました。
公園の真ん中には、大きな桜の木があって、
風に吹かれて、大量の桜吹雪が舞っていました。
それは、ひと目で打ちのめされるほどの美しい光景でした。
3羽は、家を壊された喪失感を背中ににじませながらも、
美しく舞う桜の花びらの中にじっと立ちつくし、
いつまでも、春の嵐に酔いしれていました。
おわり