東京
東京の街に、でてきた。
夢に挑戦しに来た。
部屋は家賃4万の木造のおんぼろアパートに決めた。
贅沢しに来たわけではないと、自分への戒めの気持ちがある。外観は、まさに廃墟のそれだ。
部屋までの道中、世田谷の繁華街を歩いた。
日が暮れていたということもあり、街はあらゆる人で賑わっていた。
その中を歩いた。この先、やっいけるのかと半分絶望を確信しながら、歩く。
街行く人々が、全員他人に見えてしかたがなかった。自分だけ精神が違う所にあり、場違い感が否めなかった。また、それを見透かされているのではないかと疎外感で胸がいっぱいになった。
繁華街に行くと、まれに宇宙から自分を見ているような感覚になる。
自分の存在意義が削られていくような、お前はちっぽけな存在だと街に殴られているように感じる。
いてもたってもいられなくなり、直ちに脱出を試みる。
夜の街は怖い。昼間は抑制されている人間の欲望が、街全体に孕みだす。
信号待ちしていると、前方で若いにいちゃんが女の子をナンパしていた。それを見た直後に、別の場所で男が女に声をかけている現場を見た。そのような光景はあたかも当然であるかのように街は流れていく。僕の憂鬱も最初からそんなものはなかったかのように街は何もしないし、応えてくれない。
なるほど、確かにこの街は僕と交わることはないと理解した。
チャラい男と清楚な見た目の女の子が一緒に歩いているのに遭遇すると、いたたまれなくなる。ご両親はこんなチャラチャラした奴と付き合わせるために東京行きを承諾したわけではないだろう。仮に、自分が父親の立場なら地獄を見ることになるのは想像に難くない。ご両親に対して、勝手に同情の念を抱く。余計なお世話だろうか。