きかんぼワコ
ダテにチビイリアと暮らしていた訳じゃないワコ、かもしれない。
「シロ、お待たせ~」
古代館の入り口で待っていたイリアにさりげなく1枚チケットを渡し、和子は次の開館時刻まで並んで待つ行列に加わった。
シロはもう、両方の館を見たんだよね?前はいつ来たの?
どんな展示が好き?
とかなんとか話しかけながら、チラと隣の近現代館の行列のほうを見る。
なぜか制服姿の高校生が多く、たまにふざけあっている子らもいるが、真面目そうな子らの顔は心なしかドンヨリとしている。
「シロ、あっちの列、しずか。コワイのかな」
「…うん…」
シロの口数が少ない。
ますます気になる。
やがて両館とも入れ替え時間になり、出口から前のお客さんの列がわいわいと出てきた。こっちの館のお客さんはみな楽しそうだ。よし、今だ!
「シロごめん、ちょっとトイレー!すぐもどるから先に入ってて!オシッコだからー!」
ちょ、ワコ!とイリアが止める間もなくダッシュで館の前から離れた和子は、角を曲がったところで止まって、そお…っと館前をのぞいてみた。
近現代館から出てきたお客さんの顔が一様に真っ青だ。制服の子達など『ウェ…』『マジかよ』『これレポート書けとか担任鬼じゃね』などとざわざわ言いながらゲンナリと歩いている。
やがて近現代館の列の最後のお客さんが入り、係の人が扉を閉めようとした時、和子はダッとそっちの入り口へ飛び出し、案の定入り口の外で待っていたイリアがビックリしているのを尻目に
「まってー!おとな一名、行きます!」
と叫んでもぎりを受け、はぁはぁと入場し、コラーッ!ワコー!という声に振り返ると手を合わせて ゴメンネ⌒☆ とジェスチャーで謝りながら、閉まる扉の向こうに消えていった。
「……。終わった…」
麗しの神帝アイオリアは、ガックリと膝を曲げ、世にいうヤンキーずわりみたいになってうなだれるしかなかった。
(続くかな)
作者様にはほんとにすみません。