夜が明ける
「ッキャ────────────!!」
和子の叫声が爽やかな朝の森に響きわたり、ビックリした野鳥がバサササ、ピチュピチューとちりじりに飛び交っている。
和子も出来ればそのなかまに入ってどさくさ紛れに飛んで行きたかった。
「な、なん、なん、なんで、なんであ…アンタが」
さっきまでシロとラブラブしていたはずなのに、なんで今は目の前に例の銀髪男が裸で立ってるの…?
裸で、立って…?
「ウキャアアア───────────!!!!」
またも爽やかな朝の森に矯声が響きわたり、ビックリした野鳥がバサササ、ピチュピチュー!と飛び交い、森のひとがウッホウッホと騒ぎだす。
さっきまで困り顔だった銀髪男も、もう野生を味方につけて仁王立ちである。
「ワコ、オレヲシガミツク、ワカッタ。コレネ?」
堂々とご自慢のスカイツリーを和子に披露している。
和子はとてもではないが直視できず、一瞬だけ指の隙間からチラ見してみたが、さすがこの異世界一のスカイツリーぶりにコンマ数秒で目を覆い、
「シロ、メッ!シロ、わるいコ!シロ、りっぱ、なった、でも、イジワル、ダメッ!」
とか、懸命に(あっちを向いてー‼)と真っ赤な顔で懇願している。
シロこと銀髪男は、勝ち誇った顔でニコニコしながら、山の中腹から気持ちよく朝ションを飛ばした。
「コンナノ、ヒサシブリー!サイコーダー」
シャーピッピと終えると、朝陽を受けてとびっきりのスマイルでキラキラをとばしながら和子に振り返り、
「ワコ、ワカッタ?ネ?シロ、コワクナイ」
と言うとバッと和子に抱きついた。
「キィヤ─────!!ムリムリダメ─ッ!!」
ありったけの力で銀髪を突き飛ばすと、和子は麓に向けて猛ダッシュして行った。
(イデデ…、あ、そっち、ワコが逃げて来た方角なんだけど…)
肌尻に爽やかな朝の光と湿った山の土を感じながら、銀髪男ことシロこと、現神帝アイオリア・フェルディナンドは、相変わらずゆかいなサザエさんのような和子の後ろ姿を笑顔で見送った。
(おわり)