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男爵令嬢レイクーリアがんばる  作者: 山吹弓美
二 お披露目とお客人と面倒
51/118

51話 実家は違う意味で面倒なのよ

 何だかばたばたした夜が終わり、しっかり睡眠と素振りと食事を取ったあと私は、ブランドにお屋敷の客間に案内してもらった。もちろん、お父様とお兄様にご挨拶をするため。多分2人とも、昨晩は相当お疲れだったはずですもの。

 扉をノックして、ナジャに開けてもらう。中にはもちろん、エンドリュースの家で見慣れた侍従がいたわ。


「どうぞ、お嬢様。旦那様と若様がお待ちです」

「ありがとう。大変だったんじゃなくて?」

「慣れております」


 慣れている、と言ってしまう辺りがねえ。まあ、お父様やお兄様のお世話をしていれば、確かにそうだけれど。

 そうして通された客間で、お父様とウォルターお兄様がいつものようにほんわかした笑顔で私を迎えてくださった。


「おはよう、レイクーリア」

「おはようございます、お父様、お兄様」

「ああ」


 普通にご挨拶をしてくださるところが、お兄様たる所以ですわね。お父様も穏やかに微笑まれて、本当にお2人は何も変わっていないというか、ええ。


「ナジャもお疲れ様だったね。魔女とかいう話は、クロード殿から聞いたよ」

「ありがとうございますー。機会がありましたら、アナンダお兄様のところにもご挨拶に行ってくださいねえ」

「それはもちろん」


 ナジャはもう、こういう態度でないとナジャではないというか。慣れって恐ろしいものね、と感じるわ。

 ……まあそれよりも。今はナジャたち侍従にお茶を淹れてもらって、ひとまずは家族の会話を楽しむことにしましょう。


「昨夜は話に行けなくて済まなかったね」

「いえ、お気遣いなく。どうせ、あちらこちらのお家の方に取り囲まれていたのでしょう?」

「そうなんだよ。特に、ウォルターへのアピールが強くてねえ」

「お兄様、おモテになりますもんね」

「ははは。アルセイム殿ほどじゃないよ」


 お兄様が笑ったところでもちろんですわ、なんてさすがに言えません。

 いえ、お兄様もそれはそれは素敵な殿方だし、おっとりしたところも女性がたに人気はありますわ。少しばかり男爵家の後継者としては頼りないかしら、と思うところもありますけれど。

 まあ、私はお兄様がおつきあいとかお友達とかいう名目で女性を連れてきたところを見たことが全く、ないので。アルセイム様のように、好意を持たれたご令嬢相手にならばもう少ししっかりしてくださるのかもしれませんが。


「レイクーリアが婚約者としていなければ、あのお嬢さんたちはほぼ彼の方に流れていただろうからねえ」

「あー。こっそり悪口おっしゃってる方も、結構いらっしゃいましたもんねえ」


 ……あの、お父様。ナジャに次ぐレベルで空気読めないとかおっしゃいませんよね? というかナジャ、あなたそれ聞こえていたの? まあ、聞こえてもおかしくないのだけれど。

 私、なんて言われていたのかしら。


「ナジャ。私、やっぱり力馬鹿とか言われてたの?」

「マイルドに訳するとそうなりますー」


 マイルドに、ね。つまり、貴族にあるまじきレベルで悪し様に罵られていた可能性もあるということよね。でも、そんなこと言われても私とアルセイム様の婚約はとうの昔に決まっていたことですし。

 まあ、済んだことは気にしないでおきましょう。それよりも、お兄様の方が気になりますわ。何しろ、エンドリュース家の未来を左右する問題だものね。


「それでお兄様、どうでしたの?」

「どうって言われてもなあ……僕にも、好みというものがあるし」

「エンドリュースの殿方は、お強い女性が好きですもんねえ。主様や奥様みたいな」


 私の問いに、お兄様は少し困ったように眉をひそめられた。ナジャの言う通り、お父様がお母様を選ばれた理由も強かったから、だし。精神が、じゃなくって。


「物理的にね。かと言って、嫁選びで模擬戦とか言うわけにもいかないからねえ」

「普通の貴族の女性は、戦などやりませんからね」


 いや、正直エンドリュースの嫁選びはそれが一番早いんじゃないか、と思わなくもない。お父様もお兄様も、現実を見つめ直されたほうがいいと思うのよ。お母様みたいにいきなり盗賊団ぶっ飛ばすとか、そういう事件でも起きない限りは。


「指揮官に立つことや魔術師として従軍することはなくもないが、メルティアやお前みたいに先頭に立って敵を倒すというのはまずないからね」

「だって、そちらのほうが早いんですもの」


 私の場合、魔術は多分アルセイム様が担当してくださるし。それより何より、メイス振り回して敵兵をぶっ飛ばすほうが確実に早い、と断言できるわ。私には、魔術を使う頭は多分、ないもの。

 それと、もうひとつ。


「主様の場合、防御は私が担当できますから!」


 まあ、そんなわけだ。私にはナジャがついているから、大概の攻撃は通らない。……そう考えると本当に、あの魔女はすごい敵だったと思うわけ。ナジャでは、ああいった攻撃は防げないもの。

 とはいえ、これはこれで。


「それはそれでまずない話じゃないか、龍神様のご令嬢を侍女として使ってるなんて」

「まあ、父上が母上とお会いしたときみたいな神のご加護を望んでるけどね」

「ま、何とかなると思いますよー」


 もう、うちはこういろいろと、変な方向に大変というか強いというか。でもまあ、本当にお兄様にはお似合いの女性が現れると思うわよ。ええ。

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