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男爵令嬢レイクーリアがんばる  作者: 山吹弓美
一 龍と私とおかしな空気
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39話 戦い終わってあらららら?

「レイクーリア!」

「レイクーリア様!」


 私の名前を呼ぶ声が、2つ。振り向くと、アルセイム様がトレイスを従えて駆け寄ってきてくださった。ああ、ご無事だったみたいで何より、だわ。一応確認はさせて頂くけれど。


「アルセイム様、トレイス。2人とも、大丈夫でしたか?」

「それはもちろんだ。君の強さを、存分に見せてもらったよ」

「まあ」


 にこにこと朗らかな笑顔でお答えくださったアルセイム様に、つい頬が熱くなる。まあまあ、かの魔女を叩き潰してもこんなことにはならなかったのに。

 なんて一瞬考え込みかけたところに、アルセイム様がそっと私の頬に手を当てられた。え、あ、ななな何でございましょうかアルセイム様っ。


「ああ、ちょっと動かないで。傷がついているよ、すぐ治すから」

「は、はい」


 え、顔に傷? まあなんてことかしら、アルセイム様の横に立つ者が顔に傷なんて。これでアルセイム様に何がしかの非難がきたら大変だわ、私としたことが。


「はい、終わり。綺麗に消えたよ」

「ありがとうございます、アルセイム様」


 ほんの少し頬が、先ほどよりも熱くなってすぐにアルセイム様は手を離された。あ、ちょっと残念と思ったけれど、傷の治療をしてくださったのだから文句は言えないわ。ええ。


「いや。母上や俺たちを守ってもらったんだから、このくらいは当然しないとな」

「自分も、アルセイム様の守りを任された者でありながら何のお手伝いもできませんでした。全ては、レイクーリア様のお強さ故のことですが」

「まあ」


 アルセイム様のお言葉は、とてもありがたいものよ。でも、トレイスまでそんな風に言ってくれるとは思わなかったわ。

 まあ、トレイスが動かなければならない状況というのはつまり、アルセイム様にパトラの攻撃が及んでいた時ということになるのだから、それは私が悪いわよ。


「そのようなことをおっしゃるのであれば、そもそも私がアルセイム様やグランデリアのお家を守るのは当然のことですわ。お気になさらないで」


 だって私、エンドリュースの家に生まれた女ですもの。この力を以って敵をぼかすか叩きのめすのが、私のお役目なのですから。

 全ては私の大切な、アルセイム様のためですわ。




 ナジャが結界を解いたところで、お屋敷からクロード様が出ていらっしゃった。ああ良かった、ナジャのおかげでグランデリアのお屋敷には被害がなかったわね。


「片付いたみたいだな。レイクーリア嬢、エンドリュースのお手を煩わせることになって済まなかった。礼を言うよ、ありがとう」

「いいえ、そんな」


 公爵閣下直々に頭を下げられて、ちょっとあたふたしてしまった。私も頭を下げたけれど、無礼はないかしら。困ったわねえ……なんて思っていたら、もっと困りそうな方々がおいでになった。要するにミリア様とカルメア様、なのだけれど。


「これ、カルメア!」

「すごいですわ、レイクーリア様!」

「え」


 ミリア様の猛追を物ともせずツカツカとこちらに歩み寄ってこられたカルメア様は、何故か私の手を取ってこう、キラキラとした笑顔を見せてくださった。


「クロード叔父様やアルセイム様からちょっぴりお話を伺ったことはありましたけれど、実際に拝見すると本当にお強いのですね、わたくし感動いたしました!」

「は、はあ」


 ええ、まあ、伯爵家のご令嬢がエンドリュースの女の戦を見る機会なんて、そうそうないでしょうけれど。

 だいたい貴族の女が戦の最前線に出るなんて、そんなに例があるわけではございません。エンドリュース家はもう、例外中の例外と申し上げてよろしいでしょうからね。

 で、その例外中の例外に感動してくださったカルメア様は、やっとこさ追いついて来られたミリア様の方を振り返って。


「お母様! わたくし、レイクーリア様のような殿方のところに輿入れしたいですわっ!」

「え」

「は」

「おや」


 少々訳のわからないことをおっしゃった。ああ、その後の反応は私、アルセイム様、クロード様となるわね。

 そうして当のミリア様はといえば、しばらくの間口をぱくぱくとなさっておられた。少しばかりお行儀が悪いのだけれど、お気持ちはわかります。


「ななな何を言って……」

「ですから、レイクーリア様のような麗しくて力強い殿方がいらっしゃれば、わたくしはその方のところに参りたいのです! と言いますか、どうしてレイクーリア様が殿方じゃないんでしょうかっ!」


 ぱっと私の手を放されて、すごい勢いでミリア様にまくし立てられるカルメア様。ああもう、母と子の語らいはお二方でやってくださいましね。


「……主様が殿方だったら、こういう性格にはならないだろうって申し上げたほうがいいですかね?」

「放っておきましょう。多分、カルメア様のお耳には届かないと思うわ」

「了解でーす」


 ナジャが呆れながら囁いてきた言葉に、私は苦笑しながら頷いた。そうなのよね、エンドリュースの殿方はお父様もお兄様もそうだけれど、アルセイム様のようなおっとりされた方々ばかりなのよ、先祖代々。

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