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虚を食む  作者: vincent.
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「咆哮」

相変わらず黒だかりの森は優雅に唾液を垂れ流す。

粘液で腐敗しても気付かぬままに息絶える。


靴底から伝わる見窄らしい周波数。

嘔吐感に苛まれながらも頑に口許を結んだ。


ひと際大きな嬌声が轟く。

一瞬びくっと肩を竦め、歩を停めた。


「ん? 何だコイツ? やんのか?」


脳波のイカれた茹で蛸が酒気を漂わす。

取り巻きの蟷螂と食用蛙がみっともなく頬を弛ませる。


「何睨んでやがる? 文句があるなら──」


吐き終わるや否や、喉の奥から突き上げる波動が堰切った。

臓物をすべて吐き出してしまう咆哮マグマが噴出する。

そのマグマに茹で蛸と蟷螂と食用蛙はどろどろに灼かれた。


男は変化に気付いていなかった。

否、意識せず完全メタモルフォーゼしていた。


いつの間にか四つ脚で歩いていた。

男は狼に姿を変えていたのだ。


溶解した緑の粘液に背を向けると谷を目指した。

銀狼の待つ谷へ──。


『虚を食め。そして、孤を抱け──』


呪文の意味が紐解け掛かっていた。


「食んでやる。待ってろ──」


メタモルフォーゼした孤狼の眼光には蒼白の悲愴感が宿る。

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