表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚を食む  作者: vincent.
1/4

「銀狼」

眠らない街の下卑た電飾が黒だかりの森の欲望をくすぐる。

雑踏と喧噪──。

固く閉ざされたアスファルトから狂った周波数が伝わる。

真っ赤に錆び付いたナイフの風を満身に浴びながら彷徨う。


雑踏と喧噪の隙間から他を威圧する異質な周波数。

はたと面を上げると白銀の狼。

前脚を一本欠いた銀狼が黒だかりの森に紛れ、息を潜めていた。


周囲を見渡したが、黒だかりの森はこの状況が呑めていない。

黒だかりの森は毒々しい発光体にしか反応を示さない。

ひとり歩を停め、銀狼に視線を固定した。


向こうもこちらに気付いたようだ。

銀色の牙を覗かせ、鈍色の眼光を投げて来た。


「──我が見えるのか?」


銀狼は直接頭蓋に響く周波数を発した。


「お前は──?」


発声せず問う。


「──無礼な。お前にお前呼ばわりされる覚えはない」

「一体、何をしているんだ──?」

「──知れたこと。追っているのだ」

「何を──?」

「──黙れ。お前と同じものに決まっておろうが」


銀狼が何かを察知した。


「──来た。獲物だ。捉らえて糧とせよ」


露骨に肌を露出した女が肢体をくねらせ歩いていた。

怪訝な表情を浮かべたまま立ち尽くす。


「だらしない。退いておれ──」


頭蓋に響いた瞬間、地を這う体勢から宙を舞った。

鋭利な爪が女の躰の自由を縛った。

金属質な女の悲鳴。腹の底に滲みる咆哮。

銀色の牙が喉笛を掻き抉り、白い乳房を薙ぎ貫く。


深紅の海が漆黒のアスファルトに拡がる。

肉を食む音と骨を砕く音とが鼓膜を呪縛する。

為す術もなく呆然と立ち尽くす。


銀狼が眼光を向ける。

うっすらと慈悲の光すら見える。


「──どうした? まるで乳飲み子だな」


何も応えない。否、応えられない。

銀狼が嘲笑うようにひとり悦に浸る。


やがて、すっかり喰らい尽くすと、欠けていた前脚が再生された。

それを柘榴の舌で満足げに舐め取ると、銀狼はその場から消えた。


『虚を食め。そして、孤を抱け──』


去り際に頭蓋の内側に呪文がこびり付く。

雑踏と喧噪とが爛れたシーンを掻き消す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ