舌の上の妙なる橙の調和の素晴らしさよ
ポン酢醤油は素晴らしい。冷しゃぶ、冷奴にそのままかけてもいい。さらには焼いた秋刀魚にかければさっぱり、なにより大根おろしとの相性は最高だ。鍋のつけダレとしても優れている。そう、彼の調味料は春夏秋冬使える万能調味料。さらにはマヨネーズと混ぜてサラダにかけてもうまいなんてオールマイティさ。
ある時。冷凍シューマイをチンして酒の肴にしようと、温めたまでは良かった。さて食べようとしたその時、私は凍りついた。…酢がない…。さっと青ざめる私。シューマイには酢がなければならない。くそ、酢を切らしていることを思い出していたらシューマイチンしなかったのに。もうダメだ。項垂れる私。そんな私に、天啓が降りた。そうだ、私にはあれがある。私の心強い味方。その名もポン酢醤油!私はいそいそと冷蔵庫からポン酢醤油を取り出し、徐にシューマイに振りかけた。うん、やっぱりこれ!しつこ過ぎない酸味、鼻をぬける妙なる芳香。若干脂ギッシュなシューマイのギトギトを癒してくれる。今日もいい仕事をしてくれる。
またある時。起きがけに切り干し大根でさっぱりしたい私は、鍋に湯を沸かしザザッと茹でた。水で戻したりしないのだ。ラクチンラクチン。あとはきゅうりを千切りにして、そして……。そこまで考えて、私は泣きそうになった。何故酢を買って置かなかった私!何故あの時!シューマイを前に人生の迷子に陥ろうとまでしたのに!くそこの私めが!そんな私に、またもや天啓が降りた。そうだ、私にはあれがあるじゃないか。私の心強い味方。その名もポン酢醤油!私はいそいそと冷蔵庫からポン酢醤油を取り出し、水を切った切り干し大根ときゅうりを和えてやった。ムフフ、感謝すると良い、切り干し大根ときゅうりよ。お主らは今から妙なる芳香に包まれ、極上の料理へと進化するのだ。うん、やっぱりこれ!しつこ過ぎない酸味、食材の歯応えを活かす適度な塩気。
ポン酢醤油は素晴らしい。料理に柑橘の酸味を利用しようと考えた先達を尊敬する。それと同じくらい、外国から伝わった調味料を日本の調味料に転換した素晴らしきポン酢醤油を考え出した企業にも尊敬の念を抱く。まったくもって素晴らしい。
彼らがいなかったら、今の私はいない。それくらい、私はポン酢醤油を愛しているのだ。
ポン酢醤油を讃えながら、私は今度こそ酢を買おうと心に誓うのだった。
お金を細かくしにお店に行って、別の物を買い酢を買い忘れた私が思い付いた話。いい加減酢を買えという。でもポン酢醤油で大体代用出来るしいいかともいう。